第五話 天使
さて、それじゃあ女の子に話を聞いてみるとするか。というかずっと女の子呼びだと長いな。
「お前、名前は?」
「あ、あの、えっと、な、七瀬天華」
「そうか、天華、お前はなんで旧都なんかにいたんだ?」
「捨てられたんです。研究所に……」
研究所、あまり良くない場所のようだな。
待てよ?研究所って、まさか能力の?
「その、研究所って何をやってたんだ?」
「能力の結晶について……だったと思う。もうあんまり覚えてなくて、ごめんなさい」
能力の結晶……その単語を聞いた瞬間に拠点にいる4人全員が固まった。
「まさか……過去から何も学んでいないのか?」
「……過去?」
「いや、何でもない。それで、何でお前は捨てられたんだ?」
「もう実験は完了したからって……それで私は何とか研究所から逃げて来たんです」
これはまた、最悪だな
「実験って何をされた?大丈夫なのか?」
「私がされたのは一人の心臓にいくつも結晶を埋め込む?みたいなのでした。私は実験により二つ目の能力を手に入れたんです」
「二つの能力だと?そんなことが可能なのか?」
俺はあまりにも現実味の無い実験内容に思わず驚いてしまった。
「できるわけないじゃない! 能力は一人一つ、それは三十年前から決まっていたことよ?」
乃亜が口を挟んできた。確かに異常なことには間違いない。これまで様々な能力者に会ったがニつ持ちは初めて見る。
俺達の知らない場所で何か闇が進行しているのだろうか。
「私の能力は『滑走』そして…………
………『天使』です」
簡潔に済まそう。
能力にはいくつかの種類がある。
能力は大まかに三種類に分けられている。
俺の『光』のような攻撃型。自身や他者のサポート向きの補助型。龍の『移動』のような万能型。
そして、神が授けた最も純粋で神に近いと言われているのが、神話種だ。
神話種は世界に五種類しかなく、どれも持つだけで異次元な力が身につくと言う。
かく言う『天使』の能力も五つある神話種の中の一つであり、最強の万能型能力だ。
神川龍の能力『移動』
龍が思い描いた移動方法が全て自由に使えるようになるというものだ。想像さえできれば空中歩行だろうがワープだろうができるようになる。
ただ、ワープ能力だけは自分が行ったことのある場所にしか行けないという制限がついている。