第四十二話 一駅の出会い
「お母さーーーん、入学式来週だよね!」
少女はドタドタと階段を駆け下りながら叫んでいた。
「もう凛ったら。その確認何度目?はしゃぎすぎよ」
「だって、今日から私も憧れの都市群デビューなんだよ?それに能力高校にも受かったしー」
「あんまり浮かれてると足元を掬われるわよ?」
「分かってる。安心して」
凛と呼ばれた少女はニカッと笑って母親に向かってピースをした。
「乗る電車は分かってるのよね?それなら早く準備しなさい。今日なんでしょ?出発は」
「うん、分かってるよ」
「寂しくなるわね」
「そこまで遠いわけじゃないからちょくちょく帰ってくる!だから心配しないで!」
「はぁ、最後まで慌ただしい子ね。いってらっしゃい」
「うん!色々と準備手伝ってくれてありがとー」
少女は慌てながら荷物を持って満面の笑みで言った。
「いってきまーす」
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「えっと、次は……」
自信満々に家を飛び出して来ちゃったけど、都会ってこんなに電車多いの?次に乗るのどれだっけ。
ドンッ
慌ただしくしている凛が一人の男とぶつかって男の荷物の中身をひっくり返してしまった。
「す、すみません。本当に、えっと、前が見えてなくて」
「ああ、大丈夫か?ごめんな、こっちこそ不注意だったよ」
え、かっこよ。当たられてそんなこと言えるなんて器広いなぁ、見習いたい。っていや!
「あの、手伝います」
「そうか?ありがとうな」
すると、凛の目に一枚の紙が目に入った。
「関西能力専門学校……って!あなたも今年から入学するんですか?」
「えっと、まあ、そうなるね」
「そうなんですか?私、月島凛って言います。私も今年から一年生です。よろしくお願いします」
「そうか。俺は、稲野光。よろしく」
「光さん、えっと、その、クラス一緒だと良いですね!」あ、やば、ミスったかも、いきなりこれ言われたらキモいかな。
「ああ、そうだな。それと、君の探してる電車はここじゃなくて向こうのホームね」
「え、あっ!ホントだ!すみません。ありがとうございます」
うわー、早速同級生と出会うなんてもはや運命じゃん!上手く話せてたかな。コミュ障出てなかったかな。ちょっと助けてもらったし、また会えたら良いなー。
「ほ、本当にここですか?」
「ええ、ここが美蘭様がご用意した家になります」
お母さんの友達に有名人がいるから住む場所については心配ないって言われたけどさ、一体どんな富豪なわけ?こんな家、高校生が一人で住む場所じゃないって。
「あ、ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」
そうだ!確かお母さんに向こうに着いたら電話してって言われてたんだった。
「ねえ、お母さん!何この家。こんなの私一人で使って良いの?」
『あれ、伝えてなかったっけ?凛一人じゃないわよ?美蘭ちゃんのところの子が新しく住むけど、広い家だからお前の娘も一緒にどう?って誘われちゃってね、家賃無しで良いって言われちゃったから断れなくって』
この母親は本当に困る。私は会話苦手なのにいきなりシェアハウス?無理無理無理。それが原因で地元の高校じゃなくて都市群にまで来たのに……まあ、会ってみれば友達になれるかもだし。
と、とりあえず、会ってみよう。一度友達になっちゃえば私はそこそこ話せる自信がある!せめて女の子。お願いします!神様。
呼び鈴を鳴らしてみると、
「はーい、空いてるから入って来てー」
と言う声が聞こえて来た。
「よし!覚悟は決めた!」
私はドアを開けて恐る恐る奥に進んで行く。
「あ、ここに住むって君だったんだ。えっと、確か月島凛だったっけ?」
あ、終わったかも。
「明さん、知り合いですか?あ、光さんでしたっけ」
「さっき駅で会ったんだ、天華。色々と慌ただしいやつだとは思ってたけど、まさか同じ家に住むことになるとはな」
神様、確かにまた会いたいって思ったけど、ここで会うのは違うじゃん。
「俺は、稲野光。改めてよろしくな、凛」
「え、あ、はいっ!」
マジでこれからどうしよ。




