第四話 始まり
羽の生えた女の子。どうすれば良い?話しかけるべきか?だが………。
そんなことを悩んでいた瞬間、足元に落ちていた石を蹴ってしまい、音で一瞬だけ振り返った女の子と目が合った。
救いを求めるような、もしくは泣きそうな青い瞳だ。あまりにも澄んでいて美しい色だった。女の子は俺に気づいた瞬間に羽を広げて猛スピードで走り去った。クソッ、あんな目で見られたら見捨てることはできない。何か本能を刺激してくるような、まさに訳アリってやつだろう。
「光の俺から逃げれるとは思うなよ!」
あ、これだと悪役のセリフだな。まあ良し……かな。
「ひっ」
女の子が少し声を漏らした。震えながら走っている。何が怖いのだろう。俺の事か?
俺は女の子に追いついて手を握った。
「おい、お前大丈夫か?ここは旧日本だぞ?なんでこんな危険な場所に……」
「は、離してください!すみません!殺さないでください!許してください!」
この子からは相当なトラウマを感じるな。過去に一体何があったのだろうか。
「落ち着け!俺はお前を殺したりなんかしない!一体何があったんだ?なんでお前は旧日本なんかにいるんだ」
「け、研究所の追手じゃないんですか?私のことを許してくださるんですか?」
「研究所?一体何があったんだ?」
俺は女の子が落ち着くまで待ち、そして龍に連絡を入れてから女の子が休めるところを探した。
「そろそろ話してくれるか?お前に何があったのかを」
「……あなたは、なぜ見ず知らずの私のことをそこまで気にかけてくださるのですか?関われば余計な陰謀に巻き込まれるかもしれませんよ」
俺達四人には昔決めたことがあった。たとえ冤罪だろうと事故だろうと自分たちが認められるには英雄のように素晴らしいことをしないといけない。だからヒーローごっこだろうが偽善だろうが善行をし続けるんだと。
それに、
「うーん、救いを求める目をしてたから、かな?それにしても陰謀なんてまた難しい言葉を……」
俺がそう言った途端に女の子の目に涙が浮かんで俺を抱きしめてきた。
「お、おい、どうした?」
「す、すみません、涙が……つい……うっ」
たったこれだけで泣くって……これまで一体どれだけの扱いに仕打ちをを受けて来たのか。今の俺には何も分からない。
これが救いになるのならば、しばらくこのままでいさせてあげよう。
しばらく経ってから龍がやってきた。
「遅いぞー、連絡してからもう三十分は経ってるんだけど」
「場所も伝えずに来いとだけ言うバカには言われたくないな」
龍は俺を見ながら苦笑いをした。全身汗だくな所を見ると、どうやら三十分全力疾走でようやく俺を見つけたと言った感じだろうか。ご苦労な事だ。
「こいつ連れて帰るから、拠点まで頼む」
「……お前の急な行動は今に始まったことじゃないから文句は無いがな、にしてもお前ってそんな小さい子が好きなタイプだったっけ?」
「いやっ、これは断じてそう言うわけではないぞ?俺は紳士なんだよ」
「そうかい」
俺はあくまでもこの子に何かがあると思って助けたのである。その行動に余計な感情は含まれていない。断じて。
俺は雑談をしながら龍の手を握る。
そして龍がつぶやく
「能力発動『移動』拠点まで」
俺達三人は次の瞬間出発前の拠点まで帰ってきていた。
稲光明の能力『光』
明るい空間ならば自由自在に光を操ることが出来るようになる。また、太陽光を凝縮しレーザーとして打ったり、早く走れるようになるといった光という名前に相応しい様々な効果がある。