第三十五話 新宿戦 其の九
「チッ、おかしいだろ。何だよこれ」
「そんなもんか?β」
ボクはさっきからずっと攻撃している。しているんだぞ?何で、それなのに何で!何であいつは無傷なんだよ。
「……チートすぎだろ、これが最強の能力者かよ」
「仕方ないな、能力は使わないでやるよ。じゃないと勝負にならないからな」
「クッソ」
ここまで煽られたのは初めてだ。いや、一位にボコされた時と似てるか。あの時からボクが何も変わってないとでも言うのか?ふざけるな、いい加減にしろ!まあ、向こうが能力無しなら勝てる。勝てるはずだ。神話種の強さはあくまで能力勝負。フィジカルならボクに勝ち目があるはず!
「はあぁっ!」
あれ、今ボクはちゃんと蹴ったよな。何でビクともしないんだ?壁?
いいや、違う!こいつ、単純な肉体強度でボクを上回ってるんだ。
「なんてやつ」
「こんなもんか、βって言うから少しは期待して大急ぎで仕事を済ませて来たってのに、拍子抜けだな」
「クソがぁ!」
ハッ!クソ喰らえだ。昔と同じ結果でたまるか!プライドなんか捨ててやる。さあ、どう対処する?『運命』!
「炎壁!炸裂しろ!」
はぁ、この技はボク好みじゃない。ボクに無害な奴を全員殺す事になるなんてボクのプライドに反する。
だが、だからこそ使う。じゃないとここで負けたままずっと後悔するとこになる。ボクは昔とは違うんだよ!
「美蘭さん、周囲の炎が不安定になっています。このままでは大爆発を起こすかもしれません」
「チッ、置き土産か。おいノイマン、他の奴らはどこにいる?」
「天華さん達が向こうの方角にいますが、明さん達は行方が分かりません。と言うよりも炎のせいで信号が遮断されているんです」
「あんのバカ弟子が、どこ行った!ノイマン!壁が爆発するまでにあとどのくらいの猶予がある?」
「あと……三十秒」
「クソッ、お前達二人を守るのが限界だ。死ぬんじゃねえぞ、他の奴らも」
「喰らえ!如月美蘭!人間の自覚があるんならこいつで死んどけ!」
その日、新宿は昼の様に明るくなった。
「な、なんで、炎壁に穴ができて、あ、あれは!」
あれは重力女だ。何であいつが、あんなの重力の能力で出来るわけ……ないだろ。
「そうか、ブラックホールか」
だめだ、ここまで掻き消されたら炸裂のしようがない。
「ボクの、負けか」
__________________________
「本当に、使って、良かった、の?」
「良いんだよ。使わないとみんなやられちゃってたからね!アスタロトちゃん」
「ん、そう」
「淡白ですね、今のブラックホールは幻覚の時よりも大きかったですよね」
「な、何ですか、今の」
三人が話していると天華が口を出した。
「あー、今の知らない人から見たらびっくりしちゃうよね。天華ちゃんだよね?ちっちゃくて可愛い〜。頭撫でてもいい?」
「え、あ、どうぞ」
「やめて、バエル、困ってる」
「ごめんって、ちゃんとアスタロトちゃんのことも好きだよー」
「そうじゃ、ない、理解が、悪いバエル」
「ひどーい」
「皆さん、早く戻りますよ。転移しますね」
「はーい、ベルゼブブは真面目なんだから」
「ん、拠点、戻ろ」
__________________________
「ノイマン!戻って来たよ!無事?」
「バエル、よく無事でしたね。他のお二人も」
「天華ちゃん、おかえり、君が行ってる間に凄い人が来たんだよ」
天華はそれを聞いて辺りを見回していたら、
「よく無事だったな天華。能力まで覚醒させて、凄いじゃないか」
天華の後ろから美蘭が頭を撫でながら言った。
「え、あ、美蘭先生?なんで、どうやってここに?」
それを聞かれた美蘭はバツが悪そうに、
「あー、それはだな、綾乃に新宿まで行かせて召喚させたんだ。綾乃は今はどこかで休んでるはずだぞ」
と言った。
「先生、綾乃さんを移動に使うのやめてあげて下さいよ……いつもかわいそうです」
「んー、まあそうなんだが、ウチで雇ってるからセーフ、な?」
「はぁ、それで、どうして来たんですか?」
「ノイマンから聞いたんだよ。お前達とβの奴が戦うってな。それでさっき六位とか言う奴を倒したんだが、拍子抜けだったよ」
「え、倒した?あれだけ強かったのに、ですか?」
「ああ、確かに最後の自爆もどきには焦ったな」
「そ、それだけですか、やっぱり異常ですね」
「お前もこうなるんだよ」
と美蘭は天華に優しく告げた。




