第三十二話 新宿戦 其の六
21時40分
「はぁ、はぁ、やっと追いついた。バルバトスさんってば、早すぎます」
「やっと来たね、天華ちゃん。早速だけど手伝ってもらっても良いかな?」
「え、だ、大丈夫なんですか?」
そこには、ボロボロになっているバルバトスと宙に浮いている敵がいた。
「さ、流石に無鉄砲に突撃するなんて無理があったみたいだ。だからさ、天華ちゃん、無理にとは言わないけど一緒に戦おうよ」
「は、はい。勿論です。ですが、私の能力はまだ完全には制御できずに……」
「天華ちゃん、一つ提案がある。それをすれば能力のコントロールができるかもしれない」
「え?どうやって……」
「でも、天華ちゃんにはかなりの負荷がかかってしまうだろう。それでもやるかい?」
「はい!」
その提案の内容を聞く前に天華は反射的に返事をしていた。
「そうか、天華ちゃん、僕と目を合わせて」
「え?は、はい」
「次にゆっくりと目を閉じて」
「はい」
「最後に僕とおでこを合わせて」
「は……い」
バルバトスはゆっくりと優しく口を開く。
「能力発動……『共感』」
あれ?ここはどこだろう……バルバトスさんは?もう目を開けても良いんだろうか?
そう考えて私はゆっくりと目を開いた。
「あれ?皆さん、何でこんなところにいるんですか?今って戦闘中なんじゃ……え?」
「あ、あ、あああ、ああああああああぁ。どうして?どういうこと?何でこんな!」
目を開くと、目の前には地獄があった。
何なんだろう、これは。あそこにいるのは美蘭先生……の身体。あそこにいるのは乃亜さん……の身体。おかしい、皆死んでる?そんなはずはない。大体先生達は新宿まで来ていない……は……ず。
「明さん、ご無事でしたか?生きてたんで……す」
私が能力のコントロールをしないとこうなってしまうかもしれない。これは夢じゃない。いずれ起き得ること。
どうしてだろう。そうやって考えるとずっと胸が熱い。まるで蝋燭に火をつけられた様に。
あ、そうか。
「は、ははっ、やっと分かりました師匠。これが熱なんですね。自分でも笑えてきます。こんな地獄を見せられているのに、今までとは段違いのイメージが湧いてきますよ」
「私の熱は、守ること。能力の原動力が人それぞれあるのなら、それが私の力です」
天華がそう言うと、世界が崩れて元の場所まで戻って来ていた。
「やあ、天華ちゃん。気分はどう?」
「最悪です。それと、最高ですよ」
そう言って天華は手慣れた様に飛んで行き、敵よりも少し上で止まった。
「さあ、天華ちゃん、ここからは君の出番だ。僕は少し休むとするよ。これで良いんだよね?ルシファーさん」
「お前もあそこの口だけ野郎と同じか?自ら進んで倒されにくる。まさに弱者のやることだな。お前もそう思わないか?サポート能力の集団なんだろ?お前ら。それで俺に向かってくるなんて、身の程知らずってやつだよ」
敵の言葉を遮る様に、
「少し黙っててもらえます?あまりにも滑稽で聞いてられなくて。申し訳ないです」
と言った。
「はぁ、最近のクソガキはロクなのがいないね。良いだろう。攻撃型が攻撃型と呼ばれている所以を見せてやるよ」
「ああ、助かりました。攻撃型で良かったです。私の力を最大限に活かせますので」
「は?」
「浄化・光槍」
天華はそう告げた後、相手の方に向かって指を伸ばした。
「浄化だと?ああそうか、俺は煽る相手を間違えたな」
「最後に一つ伝えておきます。あなたは能力の強さに驕りすぎです。熱がありませんでした」
「フン、お互い様だろうに。土壇場で覚醒させやがって」
天華は落ち着いた様子で、
「射出」
と言った。
天華の指先から光が槍の形を模して生成された。光の槍はそのまま目の前の敵に向かって飛んで行った。
『この槍は……能力で見た稲光明の物に瓜二つです。そうでしたか。あなたの覚醒のトリガーは、感情だったんですね』
ノイマンは誰もいない場所で誰にも聞かれずにただ一人、分析していた。




