第二十六話 内通者
β襲撃まであと三日
場所不明
「よ!新入り君」
「え、あ!累様」
「ちょっとこっち来てよ」
「は、はい」
「新入り君さ、キミ、内通者ってやつでしょ」
「え……累様?な、何故そのようなことを」
「ボクさぁ、見ちゃったんだよね、キミがこっそり電話してるの。いや、見ちゃったと言うより聞いちゃったの間違いかな」
「え……まさか」
新入りと呼ばれていた男の顔の生気が抜けていく。
「ご丁寧に一週間後に攻めるとか伝えちゃってさー、しかもボクの能力も教えちゃったんでしょ?これは簡単には許せないよねー」
「私は何をされ……ぐぁっ!熱っ!」
「アハっ、ボクの『黒炎』初めて見たでしょ。これが案外便利でね。触った相手の生気を奪っていくんだよね。強いでしょ。まあ、身体的な損傷はないから……ってもう聞こえてないか」
新入り君が一週間後って言っちゃったならそれを裏切らないと、やっぱり面白くないよね。
「ね!そこのキミ。出発の準備をしといて!」
「累様?何故です?予定では一週間後と…」
「良いんだよ。スパイがいるのなら、ちゃんと有効活用しないとね!」
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「能力使用反応?いや、と言うよりこの能力は……そんな、潜入がバレるなんて。すぐにボスに報告しないと」
「ボス!聞こえますか!ボス」
『何だ?ノイマン、俺は今出張中なんだ。天華を任せるって言ったよな?』
「ボス、今どこにいますか?緊急事態です」
『何だ?そんなに焦るなんて』
「セエレの信号が私の『分析』の範囲から消えました。そして一つの信号が送られています。おそらく、潜入がバレた旨の内容かと思われます」
『その信号はセエレからの最後の通信だ。今すぐ解読しろ。そして潜入がバレたってんなら奴らはすぐに攻めてくるはずだ。出来うる限りの戦力を集めろ。急ぎだ』
「は、はい!ボスも早く帰ってきてください。今どこにいるんですか?」
『滋賀だ。ここからノンストップで帰れば十時間以内には戻れる。待ってろ』
そこでルシファーとの通信は途切れた。
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「拠点内にいる全ての能力者は至急、司令室まで集まってください」
俺達が一通り集まってから中央にいる女が口を開いた。
「皆さん、まずはお集まりいただきありがとうございます。報告があります。βにて幹部である累の元に潜入させていたセエレの反応が……消失しました」
そう発言した後、周囲の空気が一気に暗くなった。
「な、なぁアモン、何でこんなに真剣なムードなんだ?」
俺は声を小さくして隣にいたアモンに聞いた。
「ノイマンの能力は『分析』、色々と出来ることはあるけど…あ、いや、ありますけど、その中に味方の生体反応を感知することができる力があります。βに潜入していたセエレさんの反応が無くなったということは、奴らにスパイがバレたということです」
「別に敬語じゃなくても良いぞ?わざわざ直さなくても」
「ん、明、触れないであげて、アモンは今頼られて照れてる、の」
「アスタロトちゃん、聞こえてるんだけど、あまり変なことは言わないでね?」
「ん、良いよ、今はそれどころじゃ無さそうだし」
ノイマンと呼ばれた女が再び口を開いた。というかノイマンって悪魔って呼ばれてるだけで人だろ。やっぱり名付けの基準はよく分かんないな。
「また、セエレからの最後の信号が送られています。ご存知の通りセエレの能力は『通信』です。セエレは能力で最期にメッセージを残したものと思われます。先ほど解読が終わりましたので公開いたします」
そうしてノイマンはスピーカーのような装置で音声を流し始めた。
『「ご丁寧に一週間後に攻めるとか伝えちゃってさー、しかもボクの能力も教えちゃったんでしょ?これは簡単には許せないよねー」
「私は何をされ……ぐぁっ!熱っ!」
「アハっ、ボクの『黒炎』初めて見たでしょ。これが案外便利でね。触った相手の……を奪って……だよ……」』
そこからはノイズのような音が聞こえてくるだけだった。
「ということです……皆さん。もう一週間という猶予は無いかもしれません。ボスがいない今、我々だけで対応しなければなりません。常に戦闘の準備を怠らずにお願いいたします」
ノイマンの報告は重苦しい雰囲気で終わった。
数時間後、新宿に巨大な能力使用反応が検出された。




