第二話 世界
さて、突然だが少し過去の話でもしよう。
この世界と俺たちの過去についてだ。
この世界は三十年前、ある一体の「神」という存在と出くわした。そいつに関しては名前も正体も一切不明。そもそも作り話なのではないかとも言われている。だが、専門家は実在はまず間違いないと言っている。
その理由というのが「能力」だ。
この世界には選ばれた人のみが持つ神が与えた人智を超えた力、能力というものがある。どんな能力が誰に身につくか、それは完全に運任せ。能力を得たものは能力者となり、自由にその力を行使することができる。
まあ能力についてはこんなところだろう。
人工的に能力を作り出そうとしたのが二十年前になる。
各国の科学者はこぞって研究を始め、能力者と無能力者の唯一の違いを発見した。能力者には心臓付近に小さな結晶があることに気づいたのだ。
科学者は研究のために結晶を集め始め、やがて政府が賛同し能力者狩りが始まった。当時、能力者は日々数を減らし、科学者は無能力者に対して結晶の移植を始めようとした。
だが、ここで一つ大きな問題が発生した。研究所に保管されていた結晶が全て結合し一つの巨大な石になったのだ。
この事件は世界各地で起きた。能力を研究していた全ての場所で全く同じことが起きたのだ。不穏さからその地区を研究ごと放棄した国もあれば、より一層結晶の研究を進めた国もあった。
かく言う日本は研究を促進していた。
そして十年前、悲劇が起きる。きっかけは、東京にある能力研究所に四人の子供が入り込んだということから始まった。
運悪くその四人組は実験中の当時不安定だった巨大な結晶に触れてしまった。その瞬間、世界は以前とは別物になった。世界各国にあった巨大な結晶が全て共鳴してとてつもない規模の爆発を起こしたのだ。国によって規模は違うが、日本は関東全体の生活域が消し飛んだ。更地となってしまったのだ。日本は爆発によりほとんどが壊滅した東日本を旧日本、西日本を新日本として体制を整えた。
爆心地にいながら生き残ったのは四人の子供だけだった。
そもそも何故子供がそんな実験施設に入り込めたのか。何故子供が結晶に触れることになったのか。不慮の事故ではあったのだ。だが、それを証明できる者はいなかった。全員が爆発により散っていったためである。
事故による責任を負わないために、各国は結託しその四人を事故の犯人に仕立て「四大罪人」と呼んだ。
俺達は子供の頃から四大罪人だ。俺たちは一生をかけ、世界に認めてもらえる英雄を目指して生きてきた。
今までも、これからも。