第十九話 究極の遊び
重力の能力を使う青髪の少女は俺の側に降り立った。
「それで、あなたは、誰?」
「誰だと思う?」
「ん、不審者?でも、なんか違う、かも?」
不思議ちゃんみたいな雰囲気なのに思ったより辛辣だな。
「不審者じゃないぞ、ルシファーから何か聞いてないのか?」
「ボスはお客さんのことなんて話してくれない」
強い奴って何で色々と雑な奴が多いんだろう。
「俺の名前は明、如月美蘭のとこから送られてきて今はここに住まわせてもらってる。まあ詳しいことはお前のボスに聞いてくれ」
「明は怪しい、人?」
「そんなわけないだろ」
「じゃあ信じてあげる」
チョロいな。こんなんじゃいつか危ない目に遭うぞ。
「お前の名前は?」
「本名はない。名前は、アスタロト」
「お前も悪魔の名前なのか。それと、お前は何歳なんだ?見た感じ小学生くらいか?」
「いや、十六歳、見た目はよく分からない、ボスは能力の使いすぎだって」
「お前の能力って重力なんだろ?それでそんなことになるか?」
「ボスは小さい頃から能力を使いすぎると、成長に良くないって」
俺も能力を得たのは七歳くらいだったんだけど。今日まで身長がそんなに伸びなかったのって能力のせいなのか?それならかなり絶望なんだが。というか俺とアスタロトってそんなに歳変わらないのかよ。
「なあ、アスタロトは何してたんだ?」
「ん、特に……何か遊ぶ?」
「おう、満足するまで付き合ってやる」
「じゃあ、組み手!」
え、なんで?最近の十六歳ってそんなに血に飢えてるの?
「明、なんか嫌そう、満足するまでって言ったでしょ」
「あ、ああ、全然良いぞ」
「やった」
アスタロトはニコッと笑って
「じゃあ行くよ、明」
と言い、再び天井を歩き出したのだった。
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「ついて来い!天使!」
ルシファーはそのまま荒野となっている東京をずかずかと進んでいく。
「し、師匠!私はまず何をするんでしょうか」
「天華だったか?お前は自分の能力のことをどう考えてる」
「能力…『天使』のことですか?それなら五つの神話種の中の一つで浄化能力が使えて……」
「あー、聞き方を変えよう。お前は自分の能力のこと、好きか?」
「好き?『天使』は生まれつきあったので好きと言うわけでは」
「……天華、お前の問題点は自分の能力の知覚が出来てないことだ。というよりも『天使』を使って戦うイメージができてねえ」
「イメージ…ですか?」
「強い奴はな、自分の能力を自分が持ち得る唯一無二の武器として捉えてる。俺もな。だが、お前の場合は違う。生まれつき、必然的に自分に備わっている物。別に使わなくても問題ない物。つまり、強くなる必要が無かった」
「で、でもそれは」
「あーそうだ。そう簡単には変えられる物じゃない。感覚の話だからな。これは死地に立たないと分からない感覚だ。」
「ならばどうすれば…」
「安心しろ。お前を旧都荒らしにぶつけたりはしない。美蘭がキレるだろうしな。だから俺なりのやり方でお前に自分の能力ってのを知覚してもらう」
「…というよりも短期間で強制的に育ってもらう」
ルシファーは一拍置いてから大声で、
「俺と鬼ごっこをしてもらう」
と言った。