第十三話 機転
クソッ、いきなり腕を取られるとは、予想外だ。俺のカンが鈍ってたか?いや、能力だ。予想だと空間転移か何か。このまま戦うとなると不利か。
「俺の五体を奪った罪はデカいぞ?和解は一回ぶっ飛ばしてからだからな!」
「是非!あなた…いや、大罪の方々の実力は前々から知りたかったんですよ」
あいつは単純に戦いを楽しんでいる。戦闘狂というやつだ。俺だって全力で相手したい。
とはいえ、片腕だと近接戦闘は不利。銃の弾の残りも少ない。中々にきつい戦いだ。
「暗、お前は前に出るな」
「はあ?どうして、今の兄さん一人でこんなやつ倒せるのかよ」
「俺の予想が正しければ、あいつの能力は空間転移だ。空間ごと別の場所に行くならお前の防衛じゃ意味がない」
「でも」
「能力は相性の世界だ。どんなに強い能力でも負ける時は負ける。生きてるうちに学んどけよ」
「分かった。後ろで二人を守ってるよ」
「頼んだぞ」
一対一に持ち込みはした。だがどうする?今の俺の状況じゃあ長期戦をするのは無理だ。
三分以内にケリをつける。
まずはあいつの能力を探る。俺の指先から細く高速のレーザーが飛んでいく。しかし奴に着弾することはなかった。
「クッソ」
この一瞬で判断したのか?なんて動体視力に判断力だ。
「そんなものですか?『光』の能力者」
「クッ!まだまだここからさ!」
だがどうすれば良いんだ。あの異常な俊敏さに対応するには……
いや、なんで奴を出し抜くことばかり考えているんだ。
さっきの戦いで戦闘経験が違うって言ったのは俺だろうが。相手が搦手の能力ならこっちだって攻撃型の強さを活かせ!
バンッ!
「堪能しろよ戦闘狂!光槍!」
俺は上空に銃を打った。弾が発光し、天から光の槍が降り注いだ。
「何というとてつもない物量攻撃、美しい」
さあ、ここからが見せ場だぞ。物量で奴をテレポートさせたら、テレポートのインターバルの間に奴を見つけて倒す。
「いた!あそこか!出力最大、能力発動!」
「クッ、流石ですね、この短時間で私の能力のスキをつくなんて!」
俺の最大出力のレーザーは奴に着弾した。
「グハッ!これが大罪と一般能力の格の違いってやつですかね」
戦闘後に、奴が満身創痍の身体を引きずりながらやってきた。
「よう戦闘狂、腹一杯になったか?」
「これが四大罪人。満腹、いや、それ以上です」
「あー痛って、お前俺の腕どうしてくれるんだよ」
「申し訳ありません。ですがこうしなければ戦いにならなかったでしょう?」
「お前な…確か俺達の護衛とかなんとか言ってなかったから?」
「そうでした。では今一度自己紹介を」
「私は神話種『悪魔』が生み出した組織、悪魔組にて幹部をしております。『転移』のベルゼブブと申します」
「何?神話種『悪魔』が組織だと?初耳だぞ」
「我々は基本世界の裏側で秘密裏に活動していますから」
「あと……あのさ、ベルゼブブってハエじゃないっけ」
「悪魔組は大体がスラム出身の若者で構成されていて名前のある者はほとんどいないのです。なのでボスが我等に悪魔の名前をつけてくださったのです。ボスに文句はありません」
「お前のことは何となく分かったよ。でも何で俺達の護衛なんかの指示が出たんだ?」
「ボスは現在最強の能力者である如月美蘭と手を組み、噂の神話種狩りを一掃しようと考えています。そのためおそらく信頼を得るためでしょうね。安直な考え、ボスの思いつきそうなことです」
悪魔組……ボスがそんなで本当に大丈夫なのか?