第十二話 接敵
「うわ、荒れてるなぁ」
「そりゃあもう、かれこれ十年は放置されてるしね」
俺達は須藤の案内で旧都荒らしが蔓延ってる場所の近くまで来ていた。
「それにしても、何でこんな所に旧都荒らし共が集まってるんだ?」
「この北の大地は10年前からかなり豊富な資源が見つかるようになりました。北海道には小さな能力研究所があり、災害の際に小規模の爆発が発生したんです。それが原因かもしれません」
「須藤、あの爆発で資源が増えたってのか?そんなことがあり得るのか?」
爆心地である東京は今もまだ植物すら生えてないのだが、時間が経てばあそこも緑化するのだろうか?
「あ、あの、私は何をすれば…」
「天華、お前は俺と暗の戦闘を見てるだけで良い。お前に戦闘はまだ早いだろう」
「そ、そうですか」
「よし、戦闘開始だ」
「おーい雑魚共!街なんか漁ってないで俺達にかかってこい!」
周囲の目が一気に俺たち二人に向いた。
「須藤、天華、お前達は下がってろよ。巻き込まれるぞ」
「はっはい!」
相手の数は五十を超える。だが、所詮は全員ゴロツキだ。街から追われて旧都荒らしでしか生きていけなくなった奴らの集まりだ。
「こっちは昔から罪人やってるんでな!戦闘経験が違うんだよ!」
俺はこのために腰にかけていた銃を取り出して、敵集団の中央目掛けて発砲した。俺の打った弾は敵達の足元に着弾し、ものすごい光を放ち出した。
「いくぞ…光槍」
現場には血の海ができていた。弾から四方八方に放たれていた光が全方位に降り注ぐ光の槍に作り替えられていた。
「ねぇ兄さん。あれ、もしかして殺してないよね」
「た、多分な」
「またそういうことをする…全責任は兄さん一人で負うんだぞ?」
「い、今からでもあいつらの治療しに行こうか、暗」
「はぁ、というかこれ僕必要だった?」
そんなことを話している時に突然、
「お二人共!誰かいます!あそこのビルの上!」
須藤のそんな声が聞こえた瞬間、その人影は俺達二人の後ろまで移動していた。
「ぐっ、誰だ!お前は!」
「悪魔組の幹部、暗殺のベルゼブブと言います」
「悪魔組だと?それにその名前…日本人か?お前」
「私のことなどどうでも良いのです。大罪の方々」
「……誰から聞いた。ここに来てから俺は正体を明かしてねえぞ」
「如月美蘭の弟子で先程の戦闘。見るものが見れば一発で分かりますよ」
「チッ」
「俺達に何の用だ」
「上は私にあなた方の護衛になれと言ってるんですが、正直言ってあなた方と戦ってみたいのが本音です。あなた方と戦いたいと思うのは普通でしょう?」
「俺達に真正面から勝てると思ってんのか?」
「いえ、なので小細工くらいはさせてもらいますよ」
「ぐあっ!」
奴が再びビルの上を転移した時、俺に激痛が走った。俺の右腕が無くなっていた。