第十話 依頼
天華の能力を抑えても羽までは消えなかったのでこれから人前では天華の能力は『翼』だと偽ることにした。
あと変わったことといえば天華と乃亜がいつもバチバチしていることくらいか。もっと仲良くすればいいのに。
「なあ乃亜、最近何か足りないものがあると思わないか?」
「え、何?」
「俺達の今後に関わる大切なことだ」
「!……分かったわ。明がそこまでいうなら私も認めてあげる。それで、何が言いたいの?」
「なんか機嫌良いなお前」
「………それで?大切なことってなに?」
「俺達は今後強敵との戦いが増えると思う。だから武器を作りたいんだ」
何故だろう。乃亜から冷たい視線を感じる。
「それで、作れるか?」
「……良いわよ。やってあげる」
「ありがとう乃亜。お前くらいしか頼れなくてな」
「そう…ね」
また乃亜の顔に色が戻ったな。よく分からんやつ。
「どんなのが良いの?」
「俺は銃が良いな。弾丸も特殊加工で光を発する感じが良いな」
「難しいこと言うわね」
「でも出来るだろ?」
「はあ、発動『創造』」
乃亜の能力は久しぶりに見るな。
補助型能力『創造』体力の続く限り万物を生み出すことができる。だったかな?
「出来そうか?」
「銃の方はね、弾丸の方はちょっと時間かかるかも」
「そりゃ普通じゃあり得ない構造だしな、気長に待つよ」
「そうしてもらえると助かる」
数日後、俺達は先生に呼ばれていた。
「何か用か?先生」
「お前達に頼みがある。私が国から依頼されてる任をいくつか代わりに引き受けてもらいたい」
「内容は何なんだ?」
「日本各地の旧都荒らしの討伐だ。ただ、私にくる依頼ということは相当手強い相手ということだ」
「頼みってことは断ったらどうなる?」
「私が忙しくなり、お前達に提供される料理は調味料が使われなくなる」
あまりにも鬼畜な脅しである。
「分かった。引き受けよう」
「よく言ったな!まずは最初の出張依頼だ。旧日本の最北端、北海道へ行ってこい!」
俺は引き受けたことを果てしなく後悔した。
七瀬天華のもう一つの能力『天使』
世界に五つしかない神話種の万能型能力。身体的特徴として背中に羽が生え、使いこなせれば飛行も可能。浄化が使えるようになり、浄化を受ければ攻撃型能力は弱体化し、出力が落ちる。また、光で弓矢を作り出し武器として使うことも出来る。