思い出
生まれたばかりの僕を写した最初の写真を1枚目として、沢山の写真が幾冊ものアルバムに収められている。
その中の僕が小学生のころ買って貰ったカメラで、僕が僕自身を撮った写真が収められてるアルバムはけして人には見せない。
両親を含めた家族にも親友と言える幼馴染にも見せない、僕だけのアルバム。
何故なら僕の隣には何時も女の子が一緒に写っているから。
家族や友人と共に撮られてる写真や僕以外の誰かが撮った写真には女の子は写っていない、僕のアルバムに貼られた写真だけに女の子は写っている。
中学生の頃付き合っていた女の子を家に招いた時、隠していたアルバムを見つけた彼女にこう言われた。
「幼馴染かどうか知らないけど、私という恋人がいるのだから、私以外の女が写っている写真は捨ててよね!」
高校生の頃付き合っていた彼女にも、大学生の頃付き合っていた彼女にも同じように写真を捨てろと言われる。
だから僕は彼女たちと縁を切った。
今も社会人になってから付き合いだした彼女に隠してあったアルバムが見つけられ引っ張り出される。
興味津々といった表情でアルバムの中の写真を見ていた彼女が聞いて来た。
「写真に写っている女の子って真の従姉妹?」
「え?」
「だって兄姉は、歳の離れたお兄さんとお姉さんしかいないってこの前教えてくれたから、妹さんじゃ無いでしょ。
でも顔の輪郭や目元が真そっくりだから、従姉妹かなって思って」
「写真捨てろって言わないの?」
「え、何で?」
「今まで付き合ってきた女の子全員に、自分以外の女の写真は捨てろって言われたから」
「酷い事言われたのね。
私は別に構わない。
だって写真って思い出を記録した物でしょ。
だからアルバムの中の写真は、真の大事な物だと思うからそんな酷いこと言わないわ」
僕は彼女の顔を暫く眺め、彼女にだったら秘密を教えても良いかなと思いその事を彼女に語る。
「今まで誰にも、両親にも兄姉にも親友にも教えていない秘密を聞いてくれる?」
「私が聞いても良いの?」
「ウン……。
実は僕の隣に写っている女の子は妹なんだ」
「え、妹さん?」
「僕には双子の妹がいたんだけど、母さんのお腹の中で妹は死んじゃたんだ。
だから僕1人が産まれたって事になっているんだけど、肉体は無く両親にも産婦人科医にも誰にも気が付かれなかっただけで、妹もその時一緒に産まれたんだ。
認識できるのは僕だけだけどね」
「も、もしかして……こ、此処にいるの?」
「君の隣で一緒にアルバムを覗いているよ」
「え、どっち側に?」
「左側」
「名前は?」
「琴」
彼女は自分の左側を見て、彼女には見えていない妹に向けて挨拶した。
「こんにちは、琴さん」
僕以外の人に声をかけられた琴は、驚愕の表情で固まり彼女を凝視する。
僕は彼女と結婚した。
彼女は僕と同じように毎日琴にも声をかけてくれる、とは言っても僕と違い琴の声を聞く事は出来ないから「おはよう」とか「ただいま」など挨拶だけだけどね。
琴は今、布団に寝かされている僕と彼女の生まれて2カ月になる息子をあやしている。
物心が付く前の子供って霊を見る事が出来るって聞いた事があるけど、それって本当の事みたいだ。
だって、琴の変顔を見て息子がキャキャって笑っているから。
僕はそんな2人にカメラを向けシャッターを切った。