21:魔王との遭遇
「やれ・・・突撃開始だ!!」
「「グオオオオオオオ!!」」
魔王がそう命じると、魔族の軍勢は一斉に辺境伯軍へと突撃していく。
「てえええ!!」
ピュピュピュピュ!
辺境伯軍は弓矢での攻撃を継続するが、今度はオークの大盾部隊の介入により、その効果は薄いようだ。
「温存している魔術部隊を介入させますか?」
「いや・・・あの様子では魔術での攻撃も大した効果はあるまい・・・」
広範囲攻撃魔法やオレの電撃であれば、あの大盾にも通用するだろうが、今回は魔術師に広範囲攻撃魔法の使い手がいないようなので、オレが前に出るしかあるまい・・・・。
「ヨッシー・・・・。ここはわたくしが」
オレが前に出ようとすると、スレイプニールのアラストルに跨る、レーティシア姫が前に出てきた。
「雷撃剣であの大盾のオーク共を薙ぎ払います!」
レーティシア姫は聖剣アルゲースを抜き放ち、天に掲げるとそう宣言した。
前もって雷の魔剣で聖剣アルゲースの雷を充填していたようで、その聖剣アルゲースは光り輝き、帯電していた。
「いきます!! 雷撃剣!!」
ゴロゴロ!! ピッシャアアアン!!
レーティシア姫が聖剣アルゲースを薙ぎ払うと、魔王軍に向けて雷撃が扇状に放たれる。
聖剣アルゲースから放たれた雷撃が、辺りを眩しく照らしていく。
だがその雷撃が収まると、オレたちは想像もしない光景を目の当たりにする。
なんと魔王軍は誰一人として、倒れてはいなかったのだ。
「な!?」
「あの雷撃が効いておらんのか?」
見ると空中に帯電している、一本の棒が浮遊していた。
どうやら雷撃剣による雷は、全てあの棒に逸らされてしまったようだ。
あれは避雷針のようなものだろうか?
「ふはははははは!! 無駄だ! 勇者の魔法はとうの昔に対策済みである!」
魔王はこちらをあざけるように、高笑いをしていた。
そして余裕な感じに、そう言い放ったのだ。
オレが以前砦で雷撃を使ったことは早計だっただろうか?
それで魔王は雷撃に対策を?
いや魔王の口ぶりから、そうでないように思える。
この雷撃への対策は、もっと昔に編みだしていたものだろう。
するとあの避雷針は、歴代の魔王から引き継いだ技であろうか?
だがオレには気になることがもう一つあった。
魔王の声は想像以上に幼く、オレには聞き覚えがあったのだ。
まさかあの声の主は・・・・いやそんなはずは・・・・。
「黒金のゴーレム起動!!」
オレは黒金のゴーレムを身にまとうと、それを確認するために魔王軍へと単独で突撃した。
「待てヨッシー!!」
「姫! お一人では危険です!」
静止の声を無視して、オレは一心不乱に魔王のもとを目指す。
敵は大勢いて危険だが、オレは一刻も早く魔王の正体を確認したかったのだ。
「止まれ!!」
すると魔王は魔王軍の前進を止め、一人前に出てきたのだ。
「久しいな・・・ヨッシー!」
そして魔王はオレに、そう言ったのだ。
「やっぱりお前は・・・・コロンか!?」
オレは魔王と相対すると、そう魔王に尋ねた。
魔王は漆黒のフルフェイスをかぶり、目は赤く光を放っている。
周囲にに圧倒的な気配を放ち、その気配に押しつぶされそうな気さえしてくる。
「そう名乗っていたころもあったな・・・・」
魔王はフルフェイスに手をかけると、ゆっくりと頭から外し始めた。
そしてフルフェイスの下からは、見覚えのある懐かしい顔が現れる。
「我が名はコロナ・ロロロ・ンロダ!! 当代の魔王であ~る!!」
それは邪悪に歪んだ笑顔を浮かべる、あのコロンだったのだ。
コロンはいったい、どうしたっていうんだ!?
オレはそのコロンの雰囲気の様変わりに、ショックを受けざるを得なかった。
オレと冒険していたコロンは、芝居だったとでもいうのだろうか?
それとも目の前の少女は、コロンの双子の姉妹なのだろうか?
「お前はコロンじゃないのか?」
オレは魔王にそう問わずには、いられなかった。
「ふはははは! 我は間違いなく貴様と冒険をともにした仲間・・・コロンだよ! だがあれは残念ながら本名ではない!」
コロンが本名ではない? いったいどういうことだ?
「王族である我が、他国で本名を名乗り冒険者などやっていられると思うのか? それにあの時は兄に命を狙われていたからな」
なるほど。コロンは偽名で・・・本名はコロナだったわけだ。
まあコロンとコロナ・・・・コロンらしい安直な偽名の付け方だとは思うが、オレにはまだしっくりこないことがあった。
「コロン・・・いやコロナ・・・。その喋り方はなんだ? それにその雰囲気・・・・まるで別人のようだぞ?」
「なかなか鋭いではないかヨッシー! だが貴様の方こそ正体を隠しておるのではないか女神よ?」
女神だと? いったい何を言っているんだこいつは?
「おしゃべりはここまでにしようではないかヨッシー・・・・」
そう言いつつ馬を降りると、魔王はオレにその禍々しい槍を向けてきた。
「どうだろう? ここは我と・・・・一騎打ちで決着をつけぬかヨッシー?」
そしてそう提案してきたのだ。
オレはその提案を受けて思案し、その間、両軍に沈黙が生まれる。
しばらくして、オレは魔王を一睨みすると、答えを出した。
「いいだろう! その提案を受け入れよう!」
「ふはははははは!! そうでなくてはなヨッシー!!」
こうしてオレは魔王と、一騎打ちをすることになったのだ。
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