20:再戦
「魔族側に動きがありました!!」
どうやら膠着状態が破られ、魔族がついに、行動を開始したようだ。
ちなみに魔族とは、オークや魔人などの、人型の魔物の総称である。
「魔族側がさらなる援軍と合流!! その後この砦に向けて進行中です!!」
「援軍だと? どれくらいの規模だ?」
「今のところ小隊規模とのことですが、援軍の中に魔王と見られる魔人が確認されています!!」
「何!? 魔王だと!? ヨッシーの存在を危惧して、自ら戦場に出てきたというのか・・・・」
どうやらオレというなんちゃって勇者的存在が、魔王を呼び寄せてしまったようだ。
ラノベや小説でも魔王と勇者はともに相いれない存在ながら、お互いに引き合う存在でもある。
魔王がこちらへ出張ってきたのも、必然的なことなのかもしれない。
報告を受けたオレたちは、さっそく魔王軍を迎え撃つために戦場へ向かった。
ドン! ドド~ン!! メラメラ・・・
「「ぎゃあああ!!」」
「魔法による攻撃だ!! 弓矢で応戦せよ!!」
ドカ~ン!!
砦の外に出ると、ちょうど魔族側の魔法による攻撃が、始まったころだった。
砦のあちこちが吹き飛び、火災が起こり、こちら側は阿鼻叫喚の状態だ。
「てええええ!!」
ピュ! ピュピュピュピュ!
ようやくこちらの弓矢による反撃が、始まったようだ。
だがよく見ると矢は何かに阻まれ、魔族側には届いていないように見える。
「あれは風の防壁です! 矢が風の防壁で阻まれています!」
レーティシア姫がその矢の様子を見て、風の防壁による妨害と判断する。
どうやら魔族側は、弓矢による攻撃は対策済みのようだ。
「ヨッシー!! 頼めるか!?」
「やってみます!」
すぐさまプロスペール辺境伯が、オレにそう声をかけてきた。
矢が駄目なら、オレの巨大な鉄球をということなのだろう。
鉄球を転がす前に、まずは敵の軍勢の様子を眺める。
鉄球による攻撃が、一番効果的な位置を探るのだ。
中央手前には漆黒の鎧に身を包んで、牛のような角を生やした魔人がいる。
こいつが魔王にちがいない。
魔王はまるで悪魔のような、禍々しい角を生やした、漆黒の大馬に跨っている。
ああいうのは巨大な鉄球でも、受け止めそうな気がするので、まず狙うならもろそうなところからがいいだろう。
部隊は魔人とオークの混成部隊のようだ。
オークが戦士のように前に出て守り、魔人が魔法を唱えて攻撃しているのだろう。
「姫! あちらの部隊を見てください! 他とは異なる詠唱のポーズです!」
パナメラが指し示す方を見ると、明らかに詠唱のポーズが異なる部隊が、軍勢の左右後方にいた。
手を前に付きだしているのが、攻撃の魔術なら、あの手を上にかざすようなポーズは、防御術の魔術の、ポーズなのかもしれない。
だとしたらあれが風の防壁を出している、部隊なのだろう。
「鉄球二つでいきます!!」
ドド~ン!!
それではとオレは、左右の魔術師の部隊を、二つの鉄球で同時に狙う。
「行け!!」
ゴロゴロゴロ・・・・!!
巨大な鉄球は左右に分かれながら、カーブを描くように目標の部隊に迫る。
それに気付いた目標の部隊は、詠唱を止めて逃げようとするが、慌てて隊列を崩し、転んだり仲間同士ぶつかったりして、上手く逃げられないようだ。
「オークの奥にいる、術者の魔人を狙え! てええええ!!」
ピュピュピュピュ!
その時丁度矢が放たれ、次々と魔人やオークに命中しているようだ。
今回は風の防壁が発動しないようだ。
やはり左右の詠唱ポーズが異なる部隊が、風の防壁を発動していたのだろう。
矢の多くが左右にいる風の防壁の部隊に降り注ぎ、仕留めていく。
あれではもう風の防壁は使えないだろう。
「やりましたね姫! 良い牽制になりましたよ!」
どうやらあの二つの鉄球は、良い牽制になったようだ。
目標の風の防壁の部隊は、ほぼ壊滅しているし、もはや狙う必要もなさそうだ。
だがあの巨大な鉄球を、牽制だけで終わらせるには惜しい気がする。
「えい!」
オレが両手を交差させると、二つの鉄球は急激に横に方向を変え、今度は魔王に向けて転がっていく。
目標を風の防壁の部隊から、魔王に変更したのだ。
巨大な鉄球は、進路にいる魔人やオークを、跳ね飛ばしながら魔王に迫る。
だが魔王は動じることなく、動く気配もない。
シャキーン! ズズ~ン!!
やがて巨大な鉄球が左右から魔王に迫ると、赤い光が一閃する。
そのまま鉄球は横に割れて、それ以上転がらなくなり、動かなくなってしまった。
「なんでしょうかあれは!?」
「剣のようにも見えます!」
「剣だとしても技術や腕力だけでは、ああは斬れないぞ!」
「姫!! もしかしたら魔剣の類ではないでしょうか!?」
あれが魔剣とするならば、オレはあの類の魔剣に、見覚えがあった。
「光の剣か?」
光の剣ならばあらゆる物を切り裂くし、あんな感じに光が出るはずだ。
なら魔王は光の剣の、所有者ということになる。
光の剣は巨大な鉄球を、真っ二つにするほどの切れ味だ。
果たしてオレの黒金のゴーレムで、あの光の剣が防げるだろうか?
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