15:祝勝会
「がはははは! まさか鉄腕ヨッシーがあれほどのものとは思わなかったわ!!」
ゴブレットを片手に陽気に高笑いする、プロスペール辺境伯がそこにはいた。
現在オレたちは魔王軍との戦争の初戦の勝利を祝う、祝勝会の最中であった。
テーブルにはジビエの香りを放つ、野性味あふれる肉料理が並べられ、皆ゴブレット片手に酒をあおっている。
オレの前にはお菓子が山積みされ、オレはそれをやけ食いしていた。
幼女であるオレにはお酒は飲めないので、戦闘で受けたストレスを、甘味で晴らそうとしているのだ。
もちろんお菓子はオレが通販ショップで購入したものだ。
この酒の席には肉ばかりで、唯一の甘味は甘みの少ない果物だけだからね。
「姫~! これすごく美味しいですね!」
そんなオレに付き合って、お菓子を食べあさっているのはパナメラだ。
パナメラもジャイアントや魔人を討ち取り、かなりの功績を上げたようだ。
そのため満面の笑顔で、お菓子を頬張っている。
一部見知らぬ顔がお菓子に手を伸ばしてるが、気にしないことにしている。
今日は無礼講だ。皆でこのお菓子を味わおうではないか。
ちなみにここのお酒は、ワインと気の抜けた温いエールのみなので、甘いお菓子には合わない。
そのためパナメラが飲んでいるのは、オレが通販ショップで購入したフルーティーで甘い苺酒である。
アーノルドとゴンツは向こうで肉を頬張りながら、エールをあおっているようだ。
「おいヨッシー。そのアーティファクトの山は何だ?」
そんな二人を眺めていると、突然ヌッと現れたプロスペール辺境伯がそう尋ねてくる。
「これは全部お菓子です」
「そうですよ辺境伯~。これぜえ~んぶ甘味なんですよ!」
パナメラが酔った感じで、プロスペール辺境伯にそう説明する。
「ヨッシー・・・・。お前知ってしるか? 甘味は高級品なのだぞ?」
プロスペール辺境伯は呆れたように、そのお菓子の山を見た。
「まあまあ辺境伯。これなんかそのお酒に合いますよ」
そう言ってオレは辺境伯に、その辺りにあったポテチを手に取り差し出した。
「何だこれは? アーティファクトの紙に入っているのか? どうやって開ける?」
「こうやってです」
オレはそのポテチを受け取ると、袋の上部を破いて辺境伯に渡した。
「お前・・・・そんな乱雑にアーティファクトの袋を・・・・パリパリ」
そんな小言を言いつつ、プロスペール辺境伯はポテチを口に入れる。
「ほう!? 芋を揚げているのか悪くないな! パリパリして、まるで揚げたてのようだ! おそらくこのアーティファクトの袋が揚げ物のしなりを防いでおるのだろう?」
「ご明察です。よくご存じで・・・・」
何度か揚げ物を食べていないと、その発想は出ないだろう。
この異世界での揚げ物は高級料理だ。
辺境伯ともなると、ちょくちょく揚げ物も口にできるのかもしれない。
「そんなことより辺境伯! 今回一番の功績者は何と言ってもこのヨーレシア男爵ですぞ!」
すると参謀のおじさんが乱入して、きてそんなことを言ってきた。
「そうだな! 皆の者!今回の一番の功労者はヨッシーであるぞ!」
「うあ!」
そう言いつつオレを担ぎ上げて、肩に座らせ、陽気に行進を始めるプロスペール辺境伯。
こらやめろ! お菓子が食えねえだろ!
そんなオレを悔しそうに、睨みつける奴らもいる。
インザクとその取り巻きたちだ。
彼らは開始早々オレの咆哮に腰を抜かし、ろくな活躍が出来なかったという。
一般の兵士ですらすぐに立ち直って、敵を追い立てていたというのに・・・・なんと情けない連中だろうか?
それともあの咆哮は、オレに敵対する相手に対しては、効果抜群なのだろうか?
まあ、あれからオレに絡んでくる気配はないが、こういう連中は何をしでかすかわからない。
警戒を怠るべきではないだろう。
「次はこちらから打って出るぞ!!」
「「おおおおおお!!」」
祝勝会の翌日、今度はこちらから魔族側へ攻め込むと言う話になった。
ちなみに魔族とは、オークやインプ、魔人などの、人型の魔物の総称である。
こちら側にはさして被害は出ていないし、今攻めれば優勢になると考えたのだろう。
ただ辺境伯領の先にある魔族の砦は、魔術の要塞ともいわれ、三魔将とよばれるほどの魔人が率いる、魔術師部隊が守っているという。
そのためかいまだに難攻不落と聞いている。
果たしてそんな砦を、簡単に落とせるものだろうか?
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