13:開戦
「魔王軍が動き出しました!」
あれから数日後、ついに魔王軍の進行が始まった。
こんなこともあろうと、オレの従者三人には、魔剣や魔道具をわたしておいた。
アーノルドには土と風の魔銃を渡した。
彼は投擲などを得意としているので、飛び道具の命中精度が高いのだ。
また移動用に、浮遊バイクを渡しておいた。
これによりアーノルドの戦闘能力は、飛躍的に向上したようだ。
「姫より預かりし魔道具・・・大切に使わせていただきます!」
アーノルドは恭しく騎士の礼をすると、オレにそう告げた。
ゴンツには前に渡した収納可能な大盾はもちろん、ミスリル製の軽い槍を渡してある。
なお彼の移動用には、浮遊移動するための設置型の靴のパーツを貸し出した。
軽いミスリル製の槍はもちろんだが、浮遊移動を可能にしたことで、ゴンツの移動速度は格段に向上し、それが戦闘能力の向上につながったようだ。
「この魔道具たちがあれば、俺も姫に後れをとりませんよ!」
ゴンツは自信ありげに胸を逸らし、オレの前でそう告げた。
パナメラにはレイピア型の、風の魔剣を渡しておいた。
この魔剣は柄頭の部分に装着された魔石に魔力をこめることで、風の刃を飛ばすことが可能だ。
またその魔剣そのものがミスリル製なので、自前のレイピアよりも格段に軽いようだ。
しかも魔術師の杖のような性能もあり、魔剣に魔力を蓄積させることで、自らの魔力を上乗せすることも可能だ。
なおパナメラも希望したので、浮遊移動するための靴のパーツを与えてある。
「この魔剣、王家の聖剣アルゲースに匹敵するんじゃないですか?」
パナメラはオレの渡したレイピアを、まじまじと見ながらそう告げた。
まああの聖剣アルゲースも風の刃を飛ばせるし、同じような機能ついていると言えなくもない。
ただ聖剣アルゲースと違い、その魔剣には、雷撃を放つ機能はついていないがね。
あの性能と同じものを付与できなくはないが、それをしてしまうと後が面倒そうだ。
そんなわけでオレたちの戦闘能力は、抜きんでてしまったために、遊撃部隊として行動するように命令を受けている。
まあ悪く言えばオレたちは、他の部隊との足並みが揃えられないとも言える。
「敵軍は6000! オークとインプの混成部隊です! また大将と見られる魔人の周辺に、ジャイアントが三体目撃されています!」
オークは豚の頭部をもつ怪力の魔物だ。対してインプはやせ型だが魔法が得意と聞いている。
いずれも大群となると、かなり厄介な相手となる。
ジャイアントは五メートルほどの身長で、見た目通りの怪力であるという。
その戦闘能力は、単体であっても非常に高いようだ。
魔人は魔物を使役し、魔法も近接戦闘もこなす、なんでもありの存在だ。
あのコロンほどの戦闘能力があるとすれば、かなり危険な存在になるだろう。
現在オレたちは敵の魔族を迎え撃つために、砦からかなり離れた荒野まで来ている。
その数は兵士が10000で、騎士が500といったところだ。
戦力的には数ではこちらが勝るが、こちらが劣勢のようだ。
それはこちらの戦力の大半を占める兵士の戦力が、オークやインプにかなり劣るからだ。
オークやインプは騎士並みの、戦闘力を有しているそうだ。
「ふむ・・・・。大将の魔人の身長が異常だね」
双眼鏡で確認すると、大将の魔人の身長は、ジャイアントに匹敵するほどだ。
肌は黒々としており、相撲取りのような体系で、頭に一角の角がある。
魔人というよりはまるでオーガのような奴だ。
「それは遠見の筒か? 変わった形をしておるな? それもアーティファクトなのか?」
「まあそんなところです」
「しかし貴様は遊撃部隊なのだ。わざわざ吾輩の側にいなくていいのだぞ?」
オレが現在いるのは、プロスペール辺境伯がいる、部隊の一番中心であり先頭である。
その後方には多くの部隊が、突撃の命令を待ち構えているのだ。
「ここが一番安全そうですので」
「「姫!!」」
従者たち三人はそんなオレに呆れるが、先制攻撃を仕掛けるならこの位置が最適だろう。
「巨大な鉄球発動!!」
ズズズ~ン!!!
「む!? 何だ!?」
オレが巨大な鉄球を発動させると、10メートル先に直径三メートルほどの、巨大な鉄球が落下してくる。
「いけ!!」
ドドドドド~ン!!
オレが命令すると巨大な鉄球は、敵の魔物の群れに向けて勢いよく転がっていった。
「鉄球が敵大将を直撃! 跳ね飛ばしました! 鉄球はなおも魔物たちを跳ね飛ばしながら前進中です!」
あの大将の魔人はよほど力に自信があったのだろうか?
あの巨大な鉄球を受け止めようとして、跳ね飛ばされやがった。
以前オークの集落で発動した大岩なら、破壊された可能性もあるが、あの鉄球はオークジェネラル級に対抗するために造った鉄球だ。簡単には受け止められられないだろう。
あわよくばあの大将の魔人が、あれでお亡くなりになっていてくれればいいのだがな。
その後鉄球をジグザグに移動させ、結構な被害を出した後に回収した。
まあまあな先制攻撃ではなかっただろうか?
「ヨッシー・・・・。今のは何だ?」
「魔法による先制攻撃です。けっこう自信はあったんですが、駄目でしたか?」
「駄目ではないが・・・・。ああいった魔法を使う時は、吾輩に進言してくれ。いきなりあの規模の物を放つと皆が驚く」
「はあ・・・・」
後ろを振り向くと、騎士や兵士の皆さんが唖然とした様子で、突っ立っていた。
なるほど。こういうことですか・・・・。
「敵大将健在! 立ち上がりました!」
「なるほど・・・・。やはりそう簡単にはいかぬか・・・」
大将の魔人を見ると、頭から血を流しダメージを受けているように見える。
敵軍も混乱状態のようだし、攻めるなら今ではないだろうか?
「それじゃあ皆いきますよ!」
「「は!」」
オレたちは遊撃隊なので、その行動も個々の判断にゆだねられているのだ。
オレは現在の状況を好機と見て、突撃を開始したのだ。
「ヨッシーに後れをとるな!! 全軍突撃を開始せよ!!」
「「わああああああ!!」」
そして混乱する魔王軍に向けて、プロスペール辺境伯が全軍に突撃を命じる。
こうしてプロスペール辺境伯軍と、魔王軍との戦いが
お読みくださりありがとうございます。
面白い!
また読みたい!
と感じた方はぜひ・・・・
《ブックマーク》 と
評価★★★★★を
お願いします。
いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。
感想、レビューもお待ちしております。