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10:宣戦布告

「いやあ・・・懐かしい」



 クアリーの街から東に行くと、懐かしの洞窟が見えてきた。

 気づけばこの異世界の森にいて、この洞窟にたどり着いたのが、まるでつい最近のように思い出される。



「ここでちょっと降ります」


「何か用事でも?」


「この場所には思い入れがあるんです」



 キャンピングカーを降りたオレは、懐かしの洞窟に歩み寄る。


 洞窟の入り口はオレの造った木造の壁で閉ざされ、扉にはオレしか開けられられないように、スマホのアプリにより仕掛けがしてあるのだ。


 壁の上の方は空気の入れ替えのために開け放たれており、そこから野鳥が出入りしているようだ。



「昔のままだな・・・・」



 洞窟の中に入ると、地面には焚火の跡がそのまま残されていた。

 洞窟の奥には鳥の巣がつくられ、ひな鳥がピーチクと泣いていた。



「オレ・・・気づいたらこの近辺の森にいて、しばらくここで暮らしていたんですよ」


「苦労したんですね・・・・」



 オレが懐かしそうに言うと、パナメラに抱き寄せられ慰められてしまった。

 まあ苦労はしたが、あの時はあの時で楽しかったんだけどね。


 しばらく懐かしむと、オレたちは再びキャンピングカーを走らせる。






 パカラッ! パカラッ!


「は!」「やあ!」


 

 するとキャンピングカーで走行中、けたたましくヒズメの音を立てながら、三頭の馬が接近してくる。

 馬には騎士が跨り、なにやら物々しい雰囲気だ。


 三人はそのまま止まると思ったが、急ぐようで、ビビりながらもキャンピングカーの横を素通りして、そのままクアリー方面に走り去っていった。



「何かあったのでしょうか?」


「あの様子ですと何かの有事でないかと思われます・・・」



 有事と聞くと不安な気持ちになってくる。

 この先のプロスペール辺境伯領で、何かあったのだろうか?


 それからしばらくキャンピングカーを走らせていると、街が見えてきた。



「姫・・・デガベレヤの街が見えてきましたよ」



 どうやらあれはプロスペール辺境伯領の、入り口となるデガベレヤの街のようだ。

 見ると太陽は西に大きく傾き、空は夕焼け色となっていた。



「今日はもう遅いし、あの街の宿に泊まりましょう」


「そこの怪しい物体とまれ!!」



 キャンピングカーで街に近づくと、数人の衛兵が出てきて、周囲を囲まれてしまった。

 いったいなんだというのだろうか?



「こちらはヨーレシア・ド・ホワイトナイツ男爵の乗り物である! お前たち無礼であろう!」



 するとアーノルドが大きな声で、その衛兵たちに抗議する。



「申し訳ありませんが辺境伯より、たとえ貴族であっても改めよと厳命されております! それに本当に貴族であるなら証明をお見せください!」



 この警備の物々しさ・・・・。やはりこの先のプロスペール辺境伯で何かあったと見るべきだろう。



「オレがヨーレシア・ド・ホワイトナイツ男爵です。この胸のバッジが男爵の証です」



 オレは爵位式の時に授与された男爵のバッジを見せる。



「こんな子供が男爵だと! ますます怪しいぞ!」



 すると衛兵は余計に警戒を深めてしまったようだ。



「ではこれでどうです? 王家からの命令書です」



 この命令書はレーティシア姫に渡されたもので、何かあった時に見せるように言われているのだ。



「こ、これは間違いなく王家の紋章!?」


「男爵は王家より、魔族領への秘密裏の調査を依頼されてここにおります」


「な・・・なるほど・・・。確かにそのお姿であれば、魔族も疑いは持たないでしょう」



 どうやらオレのこの姿は、隠密のためだと思われたようだ。



「騒がしいな。なんの騒ぎだ?」



 すると貴族らしき男が、こちらに向かって歩いてきた。



「はっ! 怪しげな乗り物を発見いたしましたので、調査をしておりました!」


「ほう? 貴殿はホワイトナイツ男爵か? 噂では聞いていたが本当に幼い少女だったとはな」


 

 男はまじまじとオレを見下ろしながらそう言った。

 どうやらオレの胸のバッジで、オレをホワイトナイツ男爵と判断したようだ。



「姫の前で無礼ですよ。名を名乗られよ」


「これは失礼いたしました。某はこの街の代官の補佐をしておりますアロイス・ド・カクポルツ男爵と申します」


「オレはヨーレシア・ド・ホワイトナイツ男爵です。この物々しい警備は何事ですか?」


「そうですな・・・・。まだ耳にしておられないのも無理はありません・・・・」



 耳にしていない? もしかして先ほどすれ違った騎馬と関係があるのだろうか?



「先ほど魔王国がこのルエパラ王国に宣戦布告いたしました」



 どうやら事態は只ならぬ方向に向かっていたようだ。


 警備が厳しかった理由は、すでに国内に冒険者として入っている、魔族をスパイと勘繰っての行動だった。

 魔族は魔法も使えるために、一人でも街に入りテロ行為でも起こすと、街中がパニックに陥る可能性もあるのだ。



「改めましたが問題はないようですので、今夜は街でゆっくりとお過ごしください。ただ以前であれば魔族領へ渡ることも出来たでしょうが、有事となった今では、例え王族の命令があろうとそれは難しいと思ってください。では失礼いたします」



 そう言い終わるとカクポルツ男爵は、衛兵を引き連れて引き返していった。


 だがなぜコロンが魔族領に行ったこのタイミングで、魔王国はルエパラ王国に宣戦布告したのだろうか?

 オレはコロンがこの宣戦布告に、何らかの関係がある気がしてならなかった。



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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