08:フロランスの心情
「ねえ~! ヨッシーはもうずっとこのお屋敷にいてくれるの?」
和やかな食事の最中、フランちゃんから急にそんな質問が飛び出した。
「いえ・・・。オレは人探しのために魔族領を目指していますので・・・・」
オレはコロンを探すために旅に出たのだ。
この街へよった理由は、あくまでお世話になった人たちへ挨拶をするためだ。
「えええ! それじゃあフランもあの白いのに乗ってヨッシーと旅に出る!」
するとフランちゃんが、そんなとんでもないことを言い出した。
「フロランスよさないか! お前はまだ旅に出られるような年齢ではない!」
「なんで!? ヨッシーだってフランより小さいじゃん!」
そう言われると何も言い返せないオレ・・・・。
いつになったらオレの背は伸び始めるのか?
「ヨッシーには優秀な部下が三人もいる。それにヨッシー自身も、あの見た目で魔物を拳で殴り倒せるほど強いんだ。お前にそれが出来るのか?」
「ええ!? 拳で!?」
「まじかヨッシー・・・」
「姫・・・」
すると皆がオレにドン引きしだす。
いやいや。トムおじさんそれはいくらなんでも話を盛りすぎです。
確かにアイアンアームの拳で、魔物は殴り倒しますけど・・・・。
「できない・・・・。でも・・・フラン・・・いつかヨッシーみたいに強くなって・・・一緒に旅にでるもん! ふえええええん!!」
フランちゃんはそう言い終わると、泣き出してしまった。
「やれやれ・・・・。そんなことで泣いていては、いつまでたってもヨッシーみたいにはなれないぞ?」
「うん! どりょくしゅる!」
そう優しくトムおじさんに諭され、途端に泣き止むフランちゃん。
オレみたいなってどんなだよ? チンチクリンだぞオレ・・・・。
そんなオレの心情を悟ってか、くすくすと笑い出す人たちがちらほら。
なんて失礼な奴らだろうか?
とくに従者のパナメラさんとか、笑っちゃいけないはずなのに・・・・。
そう思いつつパナメラさんを一睨みしておく。
「あははははは!! やめてくださいよ姫!! お腹がいたいです!! これ以上笑わさないでください!!」
すると大うけしてしまった。
オレは貴女を笑わせた覚えはないのだがな・・・。
「あはははは! ヨッシー面白い!」
でもそのおかげでつられてフランちゃんが笑い、機嫌が直ったのは良かった。
でも少し複雑な気分・・・。
「だはははは! ヨッシーうける!」
お前は自重しろバリー!!
その後はオレの造った冷蔵の魔道具の商談の話となり、再びジョアンヌ夫人に睨まれたりしたが、晩餐会はつつがなく終了した。
そして翌日は料理教室を開くことになり、スマホで検索しながらてんてこ舞いする。
餃子は作ったことがあったが、他は初めてで困惑した。
スマホとにらめっこしながら翌日に備え、当日はカンペを見ながら料理をした。
異世界に来てから培った料理技術で、なんとか誤魔化せたが、味は冷凍中華ほどのクォリティーにはならなかった。
「ま・・・。魔法なしのオレなんてこんなものですよ」
料理は魔法で造ったことにして「その技術は秘匿だ!」とか言っておけば、皆それ以上は追及してこなかった。
また中華料理に使う、ごま油やタケノコなどの、この近辺にない食材が課題となったので、頑張って再現してもらいたいものだ。
そんなことがあって出発は一日のびたが、なんとか出発の日をむかえることができた。
「ヨッシーにもらった人形! まだ大事にしてる!」
出発の朝にはフランちゃんがいつかプレゼントした、ぬいぐるみを抱きながら見送りをしてくれた。
フランちゃんはなんとかオレの目の前で、泣かないように努力しているようだ。
見送りにはお屋敷の面々はもちろん、ブラハムさん一家も駆けつけてくれた。
「コロンを見つけたらまた必ず屋敷におじゃましますよ」
「あい! まってるから!」
「ヨッシーが戻るころには例の料理も出来上がっているかもな?」
例の料理とはオレの伝えた中華料理のことだろう。
オレがレシピを伝えた料理研究の方々には、頑張ってもらいたいものだ。
オレは皆それぞれと挨拶を交わすと、従者三人とともにキャンピングカーに乗り込んだ。
そして皆が見送る中、再び目的地へ向けてキャンピングカーを走らせるのだった。
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