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07:皆で中華料理


「久しぶりだなヨッシー!」


「こらバリー! 言ったはずだ! 彼女はもう貴族なんだ!」


 ゴチッ!


「いってえ!」



 バリーが父親のブラハムさんに、小突かれた頭をさする。


 ラベナイの街に到着したオレたちは、トムおじさんの屋敷に泊まることになったのだ。

 トムおじさんは気を使ってか、オレが世話になったブラハム一家を、屋敷に招いてくれたのだ。

 今日はこれから彼らを含めての、晩餐会となるのだ。

 晩餐会の料理はオレが通販ショップで購入した、中華料理セットだ。

 冷凍だがこれがまたどれも、クォリティーの高い一品なのだ。



「お久しぶりです。ヨーレシア・ド・ホワイトナイツです」


「ぶっ!」



 オレが貴族の挨拶をすると、バリーのやつが噴き出しやがった。

 まあこの挨拶が似合わないのは認めるがな・・・・。

 だがオレも従者の手前、挨拶はきちんとしないと立場がない。



「息子が失礼いたしました。ヨーレシアさまにはご機嫌麗しく・・・」


「お久しぶりでございますヨーレシアさま」



 そして久々のブラハムさんとローレッタさんも、堅苦しい挨拶で返してくる。

 彼らにはオレが街にきた当初には、随分と世話になったものだ。

 コロンとともに洞窟を出て、初めて街に出たあの頃を思い出す。


 確か初めて入った街は、クアリーの街だったな。

 あそこは現在もとパーシヴァル領の騎士団長だった、バルテルミ子爵が治めているようだ。

 第一王子派だった元領主は、その後数々の悪事が暴かれ、処刑されたと聞いている。



「わああ! 見たことない料理ばかりだよ!」


「これはまた美しい料理の数々ですね」


「すげえ美味そう!!」



 料理が運ばれてくると、その料理の数々に皆興味津々だ。

 点心や肉団子などにはベリンダおばさんが気を使って、葉野菜などを敷いてくれている。

 この方が確かに見栄えは良い。


 今回はおかずの種類が多いので、各自が取り皿に欲しい料理を取り分けて食べるスタイルとなった。


 各自に前もって配膳されるのは、中華スープのみだ。



「これはエールですか? 貴族の晩餐会には不向きだと思うのですが・・・」


「ははは! これがまた美味いんだ! 試しに飲んでみるといい! んくんくんく・・・! かあああ! 美味い!」


 

 貴族の晩餐会と言えば、この国ではワインが主流だ。

 たいしてエールは温い上に気が抜けていて、あまり美味しくないので、豪華な晩餐会には敬遠(けいえん)されるのだ。



「んく・・・? んくんくんく!! おおお!! 本当です!! これは冷えていて美味いですね!!」


「だろ!? 私も驚いたんだ!!」



 今回はのエールではなく、オレが用意した某有名メーカーのビールだけどね。

 ちなみにビールを冷やしたのは、オレの造った冷蔵の魔道具だ。まあぶっちゃけ冷蔵庫だ。



「甘いお酒もありますので、よろしければどうぞ」


「まあ甘いお酒ですって! いただくわ!」


「わたくしもお願いします・・・」



 大人の女性陣は甘いお酒に興味を惹かれたようだ。

 今回の甘いお酒には梅酒を用意した。



「まあ珍しい。この時期に氷なんて・・・・」


 カランカラン・・・



 梅酒にはアルコールが多いので氷を入れてある。

 ちなみに今は暑い時期なので、この国で氷は珍しいようだ。

 オレは通販ショップでいつでも購入できるがね。



「まあ! 甘酸っぱくてそれでいて上品で、とても美味しいわ!」


「甘いのお母さま!? フランにもちょうだい!」


「フロランスお嬢様にはお酒は早いですよ! こちらに他の甘い飲み物がございますので」



 子供にはコーラとオレンジジュースを用意してみた。

 フランちゃんは傍に控えるリュシーさんに、オレンジジュースを注いでもらったようだ。



「うん! 甘くて美味しい!」



 フランちゃんはご満悦な様子でそう言った。


 そして皆それぞれ、気になった料理を使用人にたのみ取り分けてもらう。



「がつがつ! この白くて丸くてふわふわなの中に肉が詰まっていて美味い!」


「バリー。お行儀が悪いわよ。もっと落ちついて食べなさい」


「このピンクの丸いのもすごく甘くて美味しいよ!」



 バリーは肉まんを、フランちゃんはあんまんを食べているようだ。

 この肉まんとあんまんは小ぶりだが、本格的な味付けで美味いのだ。

 どうやらある中華の名店が手掛けているようだ。



「この小さいのにはスープが入っているのね。とても美味しいけれど、もれ出たスープが少しもったいないわね」


 

 ローレッタさんは小籠包を食べているようだ。

 小籠包には食べ方などあっただろうか?

 スマホで検索すると、レンゲに入れた小籠包を箸でやぶき、まずスープを少しずつ飲み、それから小籠包を食べると書いてあった。



「失念していました。その小籠包を食べるにはレンゲという道具が必要なんです」


「それはいったいどのような道具なのですか?」



 オレは通販ショップでいくつかのレンゲを購入すると、皆に見えないように膝の上に通販ショップの箱を出した。

 慣れてくるとこの箱の出現位置も、コントロールが可能なのだ。


 そこからさり気なくレンゲを出して皆に見せる。



「これがレンゲです。こうしてレンゲの中に小籠包を入れて、まず衣を破きます・・・」



 オレは小籠包の食べ方を、皆に実演して見せる。



「なかなか面白い食べ方だな」


「全員にこのレンゲを配りますので、試してみてください」



 オレは執事にレンゲを渡すと、皆にレンゲを配ってもらった。



「なるほど。こうすれば中の熱いスープで火傷もしませんし、スープも無駄なく食べられます」



 今度はローレッタさんもスープをこぼさず小籠包が食べられたようだ。



「やはりこの見慣れない料理の数々を考案されたのはヨーレシアさまでしたのね」



 ローレッタさんは悪戯が成功したような笑顔でそう言った。

 小籠包でのふりは、まさかそれを見破るための伏線だったのだろうか?


 だとしたら相変わらずローレッタさんは、切れ者だと言わざるを得ない。



「ああ。言い忘れていたがこれらの料理を提供してくれたのはそこにいるヨッシーなんだ」



 そして今更のように公言するトムおじさん。

 少し笑って見えるが気のせいだろうか?



「まあ。やっぱりそうでしたのね。ヨーレシアさまはわたくしたちの護衛の際にも、見たこともないような美味しい料理を披露してくださいましたもの」



 そういえば昔、ブラハムさん一家を護衛しながら、この街を目指したことがあった。

 その際にはオレが野営の料理を作っていたのを思い出す。



「そういえば姫は今回の旅でも、ザルウドンなる見たこともないような料理を振舞ってくださいました」


「あれは美味しかったですね!」


「お前はあちこちで目新しい料理を振舞っているのだな・・・」



 なぜかトムおじさんは、呆れたような目でオレを見ながらそう言った。

 まあオレが食べたいものを一人で食べるより、皆で食べた方が美味しいから出しているだけだがね。



「ところでこれらの珍しい料理ですが、広める気はございませんか?」



 ブラハムさんが、商人のスイッチが入ったようで、オレにそんなことを尋ねてきた。

 ブラハムさんはオレに料理屋でもやらせるつもりだろうか?



「わああい! ヨッシーお店屋さんするの!?」


「いや。そういうのはオレはやりませんよ」



 なぜか大喜びでフランちゃんがそう言ってくるので否定しておく。



「料理のレシピは教えてもいいですが、オレはお店とか出す気はないですよ」



 料理は食べるのも作るのも嫌いではないが、これで商売をしたいとは思わない。

 オレはブラハムさんにはっきりとそう伝えた。



「おいヨッシー。それは狡いぞ。それなら私にも一枚かませてくれ」


「今は楽しい食事の時間ですよ貴方。商売の話は後にしてくださいませ」



 トムおじさんの奥さんのジョアンヌ夫人は、食事中に商談の話が出たのが気に食わないのか、トムおじさんとブラハムさんを笑顔で睨みつける。

 そしてなぜかオレも睨みつけてきた。

 オレは商談の話などしていないというのに・・・・解せぬ。


 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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