06:晩餐会の料理
「せっかくヨッシーがこの街に帰ったんだ。今日はブラハム家もよんで晩餐会といこう」
その日オレたちはトムおじさんの屋敷に泊まることになり、談話室で色々と話が盛り上がっているところだ。
現在は今日の夕食の話になり、そこから晩餐会の話となった。
「いいですね。それじゃあお世話になった皆さんに感謝もかねて、晩餐会の料理はオレが用意しますよ」
「お前がか? あの力を使うのはほどほどにしておけよ・・・・」
「今はポイントにも余裕があるんですよ」
トムおじさんの言う力とは、オレのスマホのポイントのことだろう。
このポイントは通販ショップでの買い物や、アプリを使って何か造るのに必要となる。
最近魔石をポイントに変換する方法がわかり、魔物狩りなどで得ていた魔石で、ポイントもかなり潤ってきているのだ。
それにエミソタのダンジョンで得た、大量のポイントもまだ残っているしね。
ちなみに魔石はスマホの3D制作アプリ、メタセコでも作ることは出来るが、魔石を作るにはけっこうポイントを消費する上に、ポイントに変えても結果はプラスマイナスゼロになるので、得策ではない。気軽にエネルギーを得る手段ではあるがね。
「お付きの方々、お部屋にご案内します」
「フロランスお嬢さまはこれから礼儀作法のお勉強ですよ」
「ええやだ! ヨッシーと遊びたい!」
「それはお勉強が済んだ後です!」
他の三人は各自の部屋に案内され、フランちゃんはこれから礼儀作法の勉強のようだ。
オレは晩餐会の料理を提案するために、トムおじさんと厨房を目指す。
「久しぶりだねヨッシー。今日も晩飯をたかりにきたのかい?」
厨房に入ると、料理担当の使用人、ベリンダおばさんが声を掛けてきた。
まあ屋敷に招かれたときはいつもただ飯をご馳走になっていたし、たかりと言われても否定できないが・・・・。
「人聞きが悪いですよベリンダおばさん。それに今日はオレが料理を用意するんですよ」
オレは得意げに胸を逸らせながらそう言った。
「生意気になって! あんたお貴族さまになったんだって!?」
パシ!
「いて!」
そんなオレの背中を、ベリンダおばさんが叩いてくる。
「止めてくださいよ! オレの背中はデリケートなんです!」
「ははは! よせよせ。今ではヨッシーも男爵さまだぞ」
「はいはい・・・。で? 何を作る気だい? あんたの料理が美味いのは各所で耳にしているけど・・・。正直本当にあんたみたいな小さな子供が料理を作れるとは、あたしは思えないんだけどね」
どうやらベリンダおばさんは、オレの料理の噂は聞いているようだが、オレの料理の実力については信じていないようだ。
まあ確かにオレは出来合いの物や、ソースを通販ショップで購入して、解凍や簡単な料理をするだけで、正直料理が得意とは言えない。
「まあオレの料理は魔法の料理で色々特殊ですからね・・・」
「ほう!? じゃあその魔法の料理とやらを、ぜひ見せてもらおうじゃないかい!?」
オレはさっそく通販ショップにアクセスして、料理を検索する。
今回はこの国では、珍しい料理がいいだろう。
なら今回はあれにしよう・・・・
オレは中華料理7種セットと、10種セットを購入した。
とりあえず本番にはこの2つが、もう10セットは必要だろうか?
合計10万ポイントほど消費するが、今のオレには大したポイントではない。
中華料理7種セットの方は、肉まん、あんまん、エビニラ焼まん、ギョウザ、小籠包、シュウマイ、エビシュウマイを含む、点心料理のセットだ。
中華料理10種セットは、肉団子の甘酢あんかけ、中華丼の具、中華スープ、麻婆春雨、鶏の唐揚げ、ナスの味噌炒め、かに玉、カニ身あんかけ、サンラータン、鶏つくねの旨煮あんかけなど主に点心以外のセットだ。
どれも冷凍だが10分も湯煎すれば完成する、簡単料理だ。
電子レンジがあれば使いたいところだが、今回はベリンダおばさんにもわかりやすい湯煎がいいだろう。
ドサ!
「ひえ!? 何だい!?」
オレが商品を購入すると、通販ショップの箱が降って来て、その音にベリンダおばさんが怯えたような声を出す。
このおばさん威勢はいいが、本質はビビリなのだ。
「ほう? ヨッシーはそうやって欲しいものを呼び出していたのだな?」
おや? トムおじさんにはオレの力について、話してはいたと思ったが、使うのを見せるのは初めてだっただろうか?
「とりあえず箱を開けますね」
オレは箱を開けると、中から中華セットを取り出していく。
「何だい!? これ全部凍っているのかい!?」
「ええ。その方が長持ちするんですよ」
「でもこんなにカチカチで、どうやってもとに戻すんだい?」
「ちょっとの間湯煎すれば、どれも美味しく食べられますよ」
この異世界には面倒なことに、時間を示す言葉が乏しい。
小半刻である30分が最小単位なのだ。
なので時間の感覚についてはとてもアバウトと言える。
ちょっとの間は10~15分くらいと考えられる。
「ええ!? そんなに短くていいのかい!?」
オレはそう言いつつもすでに火がついている、厨房の竈の上に鍋を置いて、ドボドボと水を入れていく。
この水はもちろんスマホのアプリで造った仕掛けで出している。
この水はある条件を満たすと、オレの指から出てくる仕様になっているのだ。
それははたから見ると、オレが魔法を使い、指から水を出しているかのように見えるだろう。
「あんた本当に魔術師さまだったんだね・・・」
ベリンダおばさんは、怪訝な顔をしながらそう言った。
そして砂時計で時間を測りながら、順番に湯煎していく。
もちろんこの砂時計はオレが以前通販ショップで購入したものだ。
この辺りには砂時計は売っていないからね。
「できました。食べてみましょう」
一度にいくつか解凍し、出来たものを皿に移して並べていく。
それぞれが熱々で、美味しそうな匂いを漂わせている。
「う~ん!! これ大変美味しいですよ旦那さま!!」
さっそく肉まんを味見したベリンダおばさんが、うなりながらそう答えた。
「むぐむぐ・・・確かに美味いな。これならブラハムのやつも驚くだろう」
「あんた本当に料理が上手だったんだね!」
オレがその料理を作ったわけではないが、ベリンダおばさんはそう解釈したようだ。
中華料理を作った料理人の皆さんには申し訳ないが、どう説明すべきか悩むので、黙ってうなずいておくことにする。むぐむぐ・・・肉まん美味しい!!
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