03:キャンピングカーの旅
「アーノルドさん、運転の具合はどうですか?」
現在オレたちは、キャンピングカーに乗って旅を始めていた。
魔族領の前には懐かしのギーハテケナ領もあるので、立ち寄って行こうと考えている。
この辺りの街道はなだらかなになっていて、その道が延々と続いている。
周囲には草木が生えていて、家一つないようだ。
「姫。我々は従者ですので、よぶ時に敬称はいりません。ただアーノルドと、およびください」
「でもアーノルドさんは年上だし、貴族ですよね?」
オレも気づけば今年で六歳になっていたが、アーノルドさんは二十歳を過ぎていると言っていたし、どうにも年上を呼び捨てにするのは気が引ける。
「確かに私は貴族になりますが、姫のように直接爵位を得ているわけではありません。あとアーノルド、です」
「あ、ああ。アーノルド・・・」
この異世界の上下関係は、オレが思っているより厳しいようだ。
オレは年上の三人を、これから呼び捨てでよばなくてはならないそうだ。
「姫!! このぷるぷるした物は何ですか!?」
どうやらパナメラは、冷蔵庫をあさっているようだ。
「それはゼリーですよ。お昼のおやつにしようかと思いまして・・・」
「へええ!! ゼリーですか初めて見ました!? いったいどんな味がするんでしょうか!?」
どうやらこの国にはゼリーは無いようだ。
それともパナメラが見たことないだけだろうか?
「あと冷蔵庫の中を覗くのはいいですけど、開けっ放しにはしないでください。中が冷えにくくなってしまいますので」
「ほっ! はっ! パナメラ! お前も少しは筋トレでもしろ! 最近たるんでいるぞ!」
車内で筋トレをしているのはゴンツだ。
この人暇さえあれば筋トレしているんだよね。
「私には筋トレは朝だけで十分ですよ。私には高いレベルの身体強化が使えますから」
パナメラは魔力が高く、魔法はもちろん、高い身体強化が使えるようだ。
まだ戦うのを見たことがないので、その高い身体強化とやらが、どれくらいかはわからないが。
「そろそろ野営地ですので、いったん休憩をはさみましょう」
野営地では休憩はもちろん、ちょうど真昼間なので、昼食もとるつもりでいる。
この異世界の人は、昼食の習慣がないようだが、オレはお腹がすくのでこの時間は食べることにしているのだ。
ただ間食と称して、何かを食べたりはするようだ。やはりお昼には、皆お腹が空くようだ。
野営地に到着すると、そこにはオレたち以外には誰もおらず、がらんとした感じになっていた。
「オレが何か作りますので、皆さんは休憩していてください」
「ええ!? 姫がですか!?」
「姫・・・・。そのようなことは従者の我々にお任せください!」
「まあまあ。これはオレの趣味みたいなものだから・・・・」
オレはテーブルと椅子を四脚、スマホの収納から野営地に出すと、車内の台所へ向かう。
この異世界の野営といえば、干し肉かあの堅パンが主流だ。
なぜなら干し肉も堅パンも長持ちするからだ。
食材を補完できる収納の魔道具でもあれば話は別だが、そんなものを持ち歩くのは、富のある者だけだ。
最近は気温も高く汗ばむ毎日だ。そんな時期には、ざるうどんなんてどうだろう。
付け合わせに天ぷらも作るか。
前世ではうどんといえば、天ぷらだったからね。
オレは通販ショップでうどんの乾麺と、うどんのつゆを購入する。
ついでに冷凍天ぷらも各種購入しておく。
こいつは凍ったまま揚げれば良いのでお手軽だ。
「皆さんできましたよ」
「ええ!? もう出来たんですか!?」
「随分と早いですね・・・・」
アーノルドの表情からは、子供が短時間で作ったお遊びの料理に、不安を感じているように見て取れるが、某企業の商品を使った簡単料理ばかりなので、味としては悪くない物ばかりだ。その味で度肝をぬいてくれよう。
オレはテーブルの上に、ざるうどんと天ぷらを並べていく。
「見たことない料理ですが・・・この料理は何ですか?」
「そのパスタはうどんといって、今日は暑いので冷たいざるうどんにしてみました。その揚げ物は天ぷらといいます。うどんはその麺つゆに、天ぷらは塩と麺つゆのお好みでどうぞ」
ちなみに天ぷらには、この国でお馴染みの食材ばかりを選んだ。
エビや鳥肉に、ナスにかぼちゃなどだ。
下手に知らない野菜を混ぜて、毒草を疑われても面倒だからね。
カトラリーは皆にはフォークとナイフを、オレには箸を用意する。
「ほう・・・? つるっとして冷ややかで、暑い日には最適の食べ物ですな」
「本当だ美味しい!! 麺にも弾力があって歯ごたえが抜群ですよ!!」
「サクサク! この天ぷらというやつは最高だ! このサクサクとした歯ごたえがまたたまらん!」
ざるうどんと天ぷらは皆に好評のようだ。
オレもさっそくざるうどんから口に運ぶ。
うどんの麺はもちもちしていて弾力があり、程よい食感だ。
天ぷらは塩でもいいが、こうして麺つゆに付けて食べても美味しい。
「デザートにゼリーもありますので、後でお出ししますよ」
「デザートまであるのですか・・・。昼食なのに随分と豪華ですな・・・・」
「ゼリーってあのぷるぷるしたやつですよね!? 今から食べるのが楽しみです!!」
皆が食べ終わるころ、さっそくゼリーを皆に配膳し始める。
このゼリーはカップの赤いアセロラゼリーだ。
アセロラはこの辺りでもよく見かける果物なのだ。
「不思議な食感! これぷるぷるで甘くて美味しいです!」
「確かにこれは新食感だ・・・・」
「ははは! 姫は良い嫁になれるのではないですか!? 言葉使いがちょっと・・・あれですが・・・・」
オレの言葉使いが、男性的なのは確かに自覚はある。
だが今更女性らしい言葉を使うのも恥ずかしい気がする。
せめて自分のことはわたくしとか言うべきなのだろうか?
まあ料理は通販ショップで買った物なので、オレは単純に茹でて揚げただけなんだけどな。
皆気に入ってくれて良かったが・・・・。
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