02:出発の準備
現在オレはコロンが向かったと思われる、ガルバギーリャ魔王国へ行くための準備を進めている。
ガルバギーリャ魔王国へ行く名目は、主に視察ということになっている。
まあレーティシア姫が用意してくれた名目なんだけどね。
貴族になったオレは、何の理由もなく自由にあちこちいけないらしいのだ。
ちなみに男爵となったオレには、ヨーレシア・ド・ホワイトナイツと言う名前が与えられた。
ホワイトナイツは王族の守護者と称される者に与えられる名前で、他にもブラックナイツやレッドナイツがあるらしい。
そんなわけでオレには、従者がつくことになった。
「姫。何か御用でしょうか?」
まず紹介しよう。彼はオレの従者でアーノルド・ド・マンサールという騎士だ。
斥候のような役回りを担当しているそうだ。
やせ型で黒髪の青年だ。
「俺でよければ相談にのりますよ!」
彼はゴンツ・ド・ソルボン。ムキムキの筋肉騎士だ。
見た目通りの接近戦闘バリバリの戦士タイプで巨漢だ。
ぼさぼさの茶髪で、いつも筋肉トレーニングをしているイメージがある。
「わたくしにお任せください!」
彼女はパナメラ・ド・シャブリエ。オレの世話役を任せられているそうだ。
彼女には着替えとかさせられそうで、少し気が引ける。
肩まである茶髪が特徴で、とにかく胸がでかい。
魔法が得意で、剣術や格闘技もそこそここなす、エリートであると聞いている。
今回彼らに相談したのは、ガルバギーリャ魔王国に行くための乗り物についてだ。
ガルバギーリャ魔王国には国境へ行くだけでも、馬車で二週間はかかるそうだ。
そこからさらに、コロンがいると思われる魔王国の魔都へ向かうのに、さらに一週間はかかると聞いている。
馬車なら合計で三週間かかることになる。
だが今回はスマホのアプリで造った、キャンピングカーを使うことにしているので、もっと早く目的地に到着するはずだ。
このキャンピングカーは浮遊移動する乗り物で、時速は60キロほど出る。
内装はくつろげる部屋になっていて、トイレは勿論、台所や電子レンジ、冷蔵庫も完備されている。
そんなわけで今回の移動手段に、キャンピングカーを提案してみたのだ。
「キャンピングカー? それは何でしょう?」
「特殊な魔物かなにかに引かせるのでしょうか?」
どうやら彼らにキャンピングカーについて説明しても、容易には伝わらないようだ。
そこで騎士団の訓練場の一角を借り受けて、そこでキャンピングカーを試乗することにした。
「うわ! 何ですかこれ!?」
「引く馬がいないようですが・・・」
「白い!!」
いや・・・・確かに白いキャンピングカーだけど・・・・。白いは驚くところか?
バビュ~ン!!
さっそく運転席に乗り込んで、運転してみる。
「「おおおおお!!」」
するといつの間にか集まっていた野次馬が歓声を上げる。
見ると騎士ばかりなので、練習そっちのけで見に来たのだろう。
「この乗り物がすごいことはわかりましたが、まさか姫自ら運転なさるおつもりですか?」
「え? そのつもりですけど」
オレは従者になったという三人を乗せて、このキャンピングカーを運転して、目的地へ向かうつもりでいたのだ。
「姫! そのようなことは従者の仕事でございます! その乗り物の御者は我々にお任せください!」
馬車じゃないから御者ではないんだけどね・・・・。まあいいか・・・・。
「それじゃあ運転を教えますから、一人ずつ練習してみます?」
「「はい! 喜んで!」」
君ら運転したいだけじゃないよね?
「それじゃあオレは助手席から運転方法を教えますから、運転してみてください。その前に運転席を大人サイズにと・・・・」
ガコン! ガコン!
運転席はオレが乗る時は子供サイズだが、大人が乗る場合にはスイッチ一つで運転席が変化する仕様だ。
「「おおおおお!!」」
「なんか変形したぞ!」
「すごいな!」
それだけで野次馬が歓声を上げる。
うん・・・なんかやりづらい・・・・。
「それじゃあまずは誰からいきます?」
「わたくしめが・・・・」
最初はやせ形のアーノルドさんがいくようだ。
アーノルドさんが緊張の面持ちで運転席へ移動すると、残りの二人がなぜか後部に設置された部屋に乗り込んでいく。
「うわあすごいです! 魔道具が沢山!」
「中はまるで貴族の部屋のようですね!」
まあ貴族の部屋にしては狭いけどね。
「アーノルドさんまずは足元についているアクセルを踏んでください」
「ア・・・アクセル!?」
「アクセルが右側で左のがブレーキです」
「は・・・はいこちら側ですね?」
「最初はゆっくりお願いします」
徐々に車外の風景が移動し、キャンピングカーが走り出すのがわかる。
「うそ! これ動いてるの!?」
「まったくわからなかったぞ!!」
後部の部屋にいる二人は、今頃走っていることに気づいたようだ。
このキャンピングカーは浮遊移動しているので、移動時の振動が全くつたわらない。
なので走っていると意識するには、外を確認しなければならない。
まあさすがに急ブレーキをかければわかるけどね。
「それにしても姫は珍しい乗り物をお持ちですね。このような乗り物見たことも聞いたこともありませんぞ。こちらはいったいどちらで入手を?」
「エ・・・エミソヤのダンジョンで・・・・」
オレは目を横に逸らしながらそう答えた。
オレがこのような魔道具を造れることは、内緒にするようにと言われているのだ。
とりあえず聞かれたらエミソヤのダンジョンと答えるようにしている。
「な、なるほど・・・。姫はAランク冒険者でしたな・・・」
そう言いつつ胡散臭そうな目で見られたが、言えないものは仕方がない。
ちなみにオレもコロンもレーティシア姫を助け、不当に幽閉されていた国王を救い出した功績で、Aランク冒険者になっていた。
冒険者組合も何らかの形で、今回の功績に便乗したかったためか、あっさりとオレたちの二段階もの昇級が決まったのだ。
「はははは!! 楽しい!! これどこまでスピード出るんですか!?」
「こらパナメラ!! もっとスピードをおさえろ!!」
こうして三人で運転を練習した結果、パナメラさんが運転時に豹変し、スピード狂になることがわかった。
こういう人ってよくいるんだよね・・・・。
彼女にはなるべく、運転は遠慮していただくことにしよう・・・・。
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