08:甘味の効果
「なあコロン。この飴って魔力が回復したりしないよな?」
オレは夕食の兎肉を食べた後、ゴロゴロと寛ぎ、スマホの画面を見ばがらコロンに尋ねた。
「ああ。そういえばそんな感じもしたかな? もわっと魔力が少し膨らんだ感じはあったかも?」
コロンはオレのスマホを覗き込みながら言った。
夕食後は片付けが済むと、暗くなるのでスマホを見る以外、やることはないのだろう。
そして飴を食べた後に、明らかにスマホの電池残量に変化があった。
なんと10%も回復していたのだ。
このエネルギー量は、ここから狩り場までガタクリ一号で、2往復するくらいのエネルギー量だ。
まあ一晩寝れば50%回復することはわかっているので、回復させるには寝れば済むことなのだが、これが糖分の効果なのか、この飴の効果なのかが謎だ。
そういえばさっきの兎肉の味付けに、生姜焼きのタレを使ったけど、食後おそらくだが、2%近く回復したのではないかと思われる。
いや・・・スリープ状態にしていたので、はっきりした理由は特定できないが、おそらくこのタレの、糖分が原因なのではないかと予想は出来る。
そうするとオレの購入した甘味が特別なのか、糖分自体に魔力を回復する効果があるのかが気になるところだ。
今度この世界の甘味を口にして、確かめてみる必要もあるかもしれない。
「コロン。甘い木の実って、どこかになっていないのか?」
「あるぞ。明日行ってみるか?」
「いく~」
明日は甘い木の実のなる場所に、行くことが決定した。
「今度はあっちな」
「ほいほい」
翌日はガタクリ一号に乗って、コロンが指し示すままに道を進む。
そして昨日の狩り場からさらに進んだ場所に、その甘い木の実のなる場所はあった。
「これか? うっ! 酸っぱい!!」
オレが口に含んだその木の実は、木苺のような木の実で、とても酸っぱかった。
「適当に採るからだろ? ほら。この紫色のなんて甘いぞ」
「どれどれ?」
その木の実は、確かに少し甘かった。スマホの残量は・・・1%回復した。
ということは、糖分自体に魔力回復効果があると、ほぼ確定したのではないだろうか?
「あ・・・甘く感じない・・・」
コロンはその木の実を食べて、甘く感じなくなっているようだ。
さっきまで飴を舐めていて、その甘味に、慣れたせいと思われるが。
「ところでこんな甘い木の実があるのに、何で毎日ここへは来ないんだ?」
甘い木の実があるなら、コロンは通い詰めるはずだし、オレにも少し分け前はあったはずだ。
コロンはそういう奴だからな。
「えっと・・・」
あれ? もしかして本当に独り占めしたかったからとかじゃないよな?
まあそれは無いだろう。先ほども述べたように、コロンはそういう奴じゃない。
もしそうなら、初めからオレをここへは案内しなかっただろう。
「脅かしたくなかったから言わなかったけど、この木の実はビッグボアもあさりに来るんだ」
ビッグボア? 大きな猪か何かかな?
「しっ! 静かに・・!」
カサカサ・・・
コロンがそいうや否や、フラグのようにそいつは現れた。
そいつは体高2メートル近くになろう、巨大な猪だった。
ビッグボアは、フゴフゴと鼻を鳴らしつつ、周囲を警戒するように、あちこち臭いを嗅ぎ取る。
オレたちはその様子を、草むらに隠れて見守る。
「ふご!?」
「気付かれた!!」
その直後、ビッグボアは頭をブルブルと震わせ、地面をかき始めたのだ。
「緊急発進!! 最速でいくよ!!」
ブオォォン!!
その直後オレたちは、即座にガタクリ一号に乗り込み、その場から最速で逃走した。
「うひょ~!! 速い!! あのビッグボアに圧勝だな!!」
ビッグボアは凄い速度で走っているようだが、このガタクリ一号の最速には追い付けないようで、どんどん遠ざかっていった。
「うあっ!! あっという間に電池残量60%きった!!」
先ほどまで70%はあったので、この短時間で10%は消費したことになる。
ここでは甘い木の実を食べるのも命がけだ。
あんな化け物が、あの場所を縄張りにしているなんて・・・。
ぴちゅん!! パス・・・
「畜生!! また外した!!」
そしてそのせいか、その日のコロンの狩りの調子はいまいちだった。
まあ今日は帰りに巨大なキノコを見付けたし、このキノコはコロンからも毒はなく、美味しいというお墨付きをいただいている。
今夜はこれと山菜を合わせた鍋でもしますかね?
「コロン。あのビッグボアとかいう奴は、コロンの水魔法じゃ倒せないのか?」
洞窟に帰り、夕食を済ますと、オレたちはその日遭遇したビッグボアの話で盛り上がった。
「う~ん・・・何発か当てれば倒せるかもしれないけど・・・その前にあの突進であの世行きだな」
確かにあの大きさだ。たとえコロンでも、一発で即死までとはいかなくても、大怪我くらいはするだろう。
だがあの猪の突進は、急に止まれないと聞いたことがある。
ならそこに勝ち筋があるのではないだろうか?
そんな感じで悩みながら、その日オレは眠りについた。
そして翌日、唐突にスマホに、仕事の報酬であるポイントが振り込まれていたのであった。
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