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01:ガルバギーリャ魔王国

  現在魔族の国ガルバギーリャ魔王国には、ロングド・ロロロ・ンダという青年が魔王として君臨していた。

 彼の頭には牛のような角が二本生え、長い黒髪をたらし、漆黒の鎧に身を包んでいた。

 彼は鋭い眼光で、一人玉座に腰かけていた。



「来たか・・・妹よ」



 そしてその先にある広く暗い通路から、ぬらりと現れたのは、同じく二本の牛のような角をはやした、黒い軽装に身を包んだ少女だった。


 少女は自らを慕う精鋭を集め、兄を倒すためにこの魔王城にやって来た。

 魔王もそれを知ってか、わざわざ少女と一騎打ちになる状況をつくり上げ、王座で待ち受けていたのだ。



「兄よ。父と我が盟友の仇を討ち果たしに来た」



 そう言うと少女は、手に持った黒い槍を魔王に向けた。



「随分と良い顔になったではないか・・・・」



 魔王は王座から立ち上がると、同じく少女に黒く禍々しい槍を向ける。

 そして魔王と少女は槍を構え、向かい合う。



「見事俺を倒すことが出来れば次の魔王はお前だ。俺が父の命を奪いそうしたようにな・・・」


「そんなものには興味がない・・・・」



 ガキン!! ガカキーン!!



 そしてお互いの重厚な槍の一撃が、数度交差する。



「は!」「ふう~ん!!」


 パキュ~!!



 何手目かにお互いの距離が接近すると、互い槍の間合いを抜ける。

 すると魔王は腰のダガーを抜き、少女に襲い掛かった。



 スラッ!!


「ぬ!?」



 だが少女にそのダガーの刃は届くことなく、ダガーの刃はぽきりと落ちるのだ。

 その時少女が握りしめていたのは、光り輝く剣だった。


 程なくして魔王は地にゆっくりと伏せた。



「見事だ・・・・がふ!」



 光り輝く剣は、魔王をも斬り裂いていたのだ。


 その勝負は瞬く間に決したが、二人には延々にも感じるほど、長い時を感じていたことだろう。 



「兄よ・・・何か言い残すことはあるか?」



 少女は地に臥せる魔王に近づくとそう尋ねた。



「逃げよ・・・妹よ・・・」



 魔王が最後に発した言葉はそれだった。



「?」



 少女はその時、兄が何を言っているのかわからなかった。

 この謁見の間の入り口には、現在少女の従者でも抜きんでて実力のある者が、数名で見張りをしており、敵が来ればそれを伝えるはずだ。


 それにこの国で最強の兄を屠った少女が、今更何を恐れ、逃げ出すことがあるのだろうか?


 だがほどなくしてその意味を理解する。

 そして優しかったあの兄が、豹変した意味を悟った。



「お前は!?」


『我らが魔族の意思を受け継ぐがいい!! ぬはははははは・・・・!!』



 少女の意識はその時黒い渦に包まれていき、邪悪な高笑いだけが、彼女の頭の中で木霊する。



「ヨッシー・・・・すまん・・・・」



 彼女はそう言い残すと、ゆっくりと目を閉じた。

 そして彼女の意識はそれ以来、途絶えたのだった。





 遡ること二ヶ月前、ガルバギーリャ魔王国の遥か南にあるルエパラ王国では、ヨッシーという妙な名前の少女が、姉も同然の仲間を失い打ちひしがれていた。



『探すな旅に出る。コロンより』



 ヨッシーが宿泊する部屋のテーブルの上には、ただそう書いた手紙だけが残されていた。

 それは粗暴な彼女らしい書置きだった。


 ヨッシーとその少女は、一年も満たない短い間だが苦楽を共にし、一緒に冒険をしてきたのだ。



「コロン・・・・。なんで黙って行っちまうんだよ・・・・」



 その少女の名はコロンと言った。


 コロンはヨッシーが爵位を受け、男爵になるのを見届けると、一人どこか旅立ってしまったのだ。



「ただ闇雲に探してもコロンは見つからないでしょう。貴女には大きな恩があります。彼女の捜索はわたくしたちに任せてください」



 そんなヨッシーに友人であるレーティシア姫は、そう提案してきたのだ。

 ヨッシーはコロンの捜索を泣く泣く、国とレーティシア姫に任せることにした。


 彼女の言う通り、ヨッシーが闇雲に探し回ったところで、どうにもならないと思ったからだ。


 ヨッシーはしばらく塞ぎこんだが、ほどなく立ち直った。

 いつまでもそんなことをしていても、無駄だと悟ったからだ。


 それからのヨッシーは冒険者の依頼に、王族の警護と、忙しい毎日を送っていた。

 そして暇さえあれば図書館に通った。

 それはコロンに再び出会った時に、その知識で彼女の力になるためでもある。


 そんな忙しい日々の中ついにコロンの居場所が判明した。



「彼女はガルバギーリャ魔王国へ向かったようです。おそらくその目的は父である魔王を殺した、兄への復讐です」



 コロンはガルバギーリャ魔王国の王族で、父親を殺して王位を奪った兄を倒すために、故郷へ帰ったというのだ。

 彼女はヨッシーを復讐というどろどろとした目的に、かかわらせたくはなかったのだ。

 


「オレ・・・・ガルバギーリャ魔王国へ向かいます!」


「そう言うと思ったわ。でもそれには条件を付けさせてちょうだい・・・」



 ヨッシーはガルバギーリャ魔王国へ向かう見返りに、従者を三人つけることを約束させられた。

 それはヨッシーという友に、なるべく安全な旅をさせるための、レーティシア姫の配慮であった。


 こうして三人の従者を得たヨッシーは、ガルバギーリャ魔王国へ向かうことになったのだ。



お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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