33:新たな旅立ち
「わたくしにはコロンの行き先に覚えがあります」
そう口を開いたのは、オレを応接室に呼び出したレーティシア姫だ。
その日コロンの行き先に心当たりがあるという、レーティシア姫の呼び出しを受けて、オレは王宮に向かったのだ。
「何だって!? コロンはいったいどこへ!?」
「それを話す前に、コロンの出生について少し話さなければなりません・・・」
「コロンの出生・・・?」
そういえばオレはコロンの過去について、何も本人から話されたことはなかった。
「コロンは魔王国の・・・・王族なのです」
「コロンが・・・・お姫様・・・」
オレはそれを聞いて、なんとなくだが思い当たることがいくつかあった。
コロンは粗暴で乱暴な部分は多々あったが、食事を食べる時には、乱雑に食べているように見えて、実は作法はきちんと守りながら食事をしていた。
身体強化が特殊で、他のものより明らかに突出していた。
それに何度かオレに、そんな風なことをしゃべりかけて、中断していたことがあったのだ。
「彼女の兄であるロングド・ロロロ・ンロダは、彼女の父であった魔王の命を奪って、自らが次の魔王の座についているのです」
オレはそこまで聞いて、コロンの目的がなんとなくだが想像できた。
コロンは兄王を倒せるだけの武器を手にしたのだ。
それがオレの渡した・・・・光の剣だ・・・・。
つまりコロンの目的は・・・。
「コロンの目的はおそらく、兄への復讐です」
コロンは父親を殺した兄に、復讐するために魔族領へ戻ったのだ。
あの優しいコロンが、そんな血なまぐさい目的に、オレを巻き込むわけはなかったのだ。
オレはその時、コロンに光の剣を渡したことを激しく後悔したが、過ぎてしまったことは仕方がない。
その時オレは、魔族領へ行きコロンを連れ戻そうと、そう心に決めたのだった。
「はあ~・・・。貴女のその顔を見れば、貴女が今どう思っているか手に取るようにわかります・・・・」
レーティシア姫はそのオレの表情から、オレの考えを読み取ったようだ。
「貴女はこの国の貴族です! なので好き勝手することは許されません!」
「しかし・・!!」
「でも・・・止めても聞かないのでしょうね貴女は・・・・なので貴女が魔族領に入るにあたって条件があります」
「条件ですか?」
「それはわたくしが推薦した者たちを、貴女の配下として連れていくことです」
レーティシア姫がそう言うと、応接室に三人の騎士らしき人物が入ってきた。
「パナメラと申します。貴女の身の回りのお世話をいたします」
「ゴンツです! 護衛をさせていただきます」
「アーノルドです。同じく護衛を務めさせていただきます」
三人はオレの前に出てくると、騎士の礼をしながら挨拶をした。
パナメラさんは小柄な女性騎士だ。茶髪を肩まで伸ばした、胸のでかい健康的な女性だ。
ゴンツさんは大柄でがっしりな感じの、筋肉質な体つきだ。気合が入っている。
アーノルドさんはクールな感じで、やせ型の体系だ。
どうやらオレは、魔族領に入るにあたって、三人を従者につける必要があるようだ。
「ヨッシーには魔族領視察の命を与えます!!」
レーティシア姫はオレに命を与えることで、大手を振って魔族領に向かえるようにしてくれたようだ。
「感謝します。レーティシア姫。この御恩は必ず・・・」
「いいえヨッシー。わたくしが貴女から受けた多大な恩を、こんなことで返せたとは思っておりませんよ」
レーティシア姫は、笑顔でオレにそう返してきた。
その後レーティシア姫に深々と頭を下げたオレは、三人を連れて王宮を後にした。
明日は旅の準備やらで、大忙しになりそうだ。
コロン待っていろよ! 必ず迎えにいくからな!
こうしてオレの新たな冒険が、幕を開けたのだった。
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