28:ダンジョンの外へ
「皆! ここに昇降機があるそ!」
それぞれに希望のアーティファクト又はギフト・アーティファクトを得た皆は、再びこの金属の部屋の捜索をしていた。
するとオベールさんが隠し部屋を見つけたようで、その先に昇降機が発見されたのだ。
「こいつぁあ、上に向かう昇降機のようですぜ」
「あの高さなら、出口の可能性が高いな・・・・」
どうやらこの昇降機は、ダンジョンの外へ出るためのもののようだ。
「わたくしとしては・・・スレイプニールとこの聖剣を得た今、一刻も早くこのことをバートム伯爵に報告し、王位継承を宣言したいところではあります・・・」
確かにオレたちが活動拠点にしていたあの街に、例の評判の悪い王子が来ていると聞くし、その後の話も気になるところだ。
「しかしスレイプニールはかなりの重量だ。この昇降機で運べるかは正直わからないぞ・・・」
スレイプニールの体重は何キロくらいだろうか?
普通の馬が人間6~7人分くらいと聞くし、スレイプニールならその二倍くらいはありそうだ。
収納の魔道具には生き物は入らないので、それに入れて運ぶのは無理そうだ。
「普通に動いていますね・・・・」
だがそこはダンジョンの謎技術。
たとえ全員乗り込もうが、普通に上がっていくのがすごいところだ。
まあこのダンジョンに関しては、オレが気になることは他にもあった。
スレイプニールが戦闘後オレにいきなり懐いたことや、それに懐かしさを感じたこと・・・。
まるでオレがこの場所に来ることが、わかっていたかのように置かれていた、USBメモリーとケーブル・・・。
もしかしたらオレに関する秘密が、このダンジョンには、色々と隠されているのかもしれない。
いつか再びこのエミソヤのダンジョンに訪れて、調査する必要があるかもしれない。
「誰か出て来たぞ!!」
「どこかのパーティーか!?」
オレたちが昇降機で頂上にたどり着くと、すぐ先に扉があり、その扉をくぐると大勢の人々が集まっており、騒ぎとなっていたのだ。
「なんだこの騒ぎは・・・?」
「おう! オベールじゃねえか!」
するとさっそくオベールさんの知り合いらしき冒険者が、声をかけてきた。
「ダンジョンの周辺に、新たな建物が出現したんだ! 騒ぎにならないはずはないだろう!」
事情を聴いたところ、オレたちが昇降機で昇る際に、ダンジョンの周辺に建物が出現したようなのだ。
オレたちはどうやら、その建物の中から出てきたようだ。
昇降機が昇り切るまでに一時間くらいはかかっていたので、その際にこの異変が目撃され、ここらに集まっていた冒険者に知らされたのだろう。
「で? お宝は何だった? まさかそのスレイプニールか!?」
レーティシア姫が乗り付けている、その巨大なスレイプニールは、嫌でも目立ってしまう。
「コロン。誰もこちらに近づかないように威圧を頼む」
「おう?」
コロンはオベールさんにそう指示を出され、半信半疑で威圧を発動する。
その目は赤く光り、圧倒的な気配が立ち込める。
「ひいい! なんだか寒気がするぜ!」
「見ろ! 魔族だ!」
するとコロンが注目を集めた。
だがコロンを恐れた人々は、オレたちから距離をおいて離れていく。
「ヨッシー。アイアンゴーレムになっていてくれ」
「うむ?」
「この人だかりを利用して、姫の暗殺を企むやからがいるかもしれん」
考えてみればレーティシア姫は、聖剣とスレイプニールを手に入れたことで、王位継承に王手をかけているのだ。
この人だかりの中に例の王子の手の者がいれば、暗殺を企む可能性は高い。
オベールさんはオレに鉄のゴーレムになって、壁となり、その抑止力になってほしいのだろう。
「わかった! 鉄のゴーレム起動!」
オレは鉄のゴーレムを、すぐさま起動した。
「うお!? 鉄腕ヨッシーが正体を現したぞ!」
「噂以上の化け物だ!!」「なんて女だ!!」
オレの正体はこれじゃねえ!
失礼な冒険者の声が、オレの耳に次々と届く。
「このまま踏みつぶされたくなけりゃあ道を開けろ!」
オベールさんが周囲の人々に、そう声を荒げて脅しをかける。
「ひいい! 全員道をあけろ!」
「化け物どもの行進だ!!」
するとまるでモーゼの海割のごとく、人々が道を開けていく。
「いまだ! このまま突き進むぞ!」
オレたちは急いで、その人だかりの中にできた道を突き進んだ。
こうしてオレたちは、無事に街への帰路につくことができたのだ。
「オベール! オベール!」
「今度はなんだ!?」
一難去ってまた一難・・・・。
街へ到着すると、オベールさんのもとに、馬に乗った騎士が駆け付けてきたのだ。
「ギーハテケナ領が、第一王子とパーシヴァル伯爵の率いる軍勢に攻め込まれた!!」
どうやら例の馬鹿王子は、街への視察どころか、パーシヴァル伯爵とともに軍勢を率いて、ギーハテケナ領に攻め込んでいたようだ。
すでになりふり構っていられないとでも、思っているのだろうか?
まさかそんな暴挙に出るとは、誰も思いもよらなかっただろう。
そうなるとトムおじさんやフランちゃんの安否が気になる。
無事でいてほしいと、願うばかりだ。
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