27:新たな機能
「えっと・・・オベールさんは、ギフト・アーティファクトでない魔剣が欲しいんですよね?」
「ああ。俺はその魔剣を、子孫にも託したいからな・・・・」
ギフト・アーティファクトは使用者本人についていくものだ。
それは決して離れることはないし、盗まれることもないが、子孫に託したりはできない。
オレたちがエミソヤのダンジョンで見つけた財宝は、USBメモリーとUSB変換ケーブルだったのだ。
さっそく仲間の許可を得たオレは、その二つをスマホにつなげ、新たなデータを手に入れたのだ。
そのデータとはギフト・アーティファクト又は、アーティファクトを、作りだす能力だったのだ。
またオレは5億ポイントもの、莫大なポイントを手に入れることが出来た。
しかしオレ一人が巨万の富を得たような、この状況はよろしくない。
5億ポイントについては、さすがに争いになりそうなので、口をつぐんだが、希望する仲間に、ギフト・アーティファクト又は、アーティファクトを作ることにしたのだ。
まずはオベールさんの希望に合いそうな魔剣を、サンプルデータから探すために上から見ていく。
収納ポーチ・・・・。
こんなものまであるんだ。
オレのスマホには物体をファイル化する機能はあるが、色々と面倒な制約もあり、使い勝手が悪いのだ。
だからぜひともこの収納ポーチは欲しいところだ・・・・。
アイテム収納アプリ・・・・?
だがそのすぐ下にアイテム収納アプリを、作るためのサンプルデータがあった。
つまりオレはこれからこのスマホを、収納アイテムとしても使えるのだ。
なら収納ポーチはいらないな・・・・。
おっといけない。今はオベールさんの魔剣だ。
まず先ほどオレが使った、ライトセイバーもとい光の剣から見ていく。
特徴を見ると、コンパクトで持ち運びに便利で、あらゆるものを切り裂くとなっている。
だがこいつは使用するのに、かなりの魔力が必要なようだ。
オベールさん自身、魔戦士ではあるようだが、魔力は高くないと言っていたのでこれは却下だ。
その下にあるのが雷の剣だ。
こいつは剣から放電する、スタンガンのような武器のようだ。
魔力消費も少ないので、つばぜり合いとかに持ち込めば、相手を感電させたりできるのではないだろうか?
「う~ん・・・。そういう卑怯なのはちょっとな・・・・」
どうやらこの魔剣では、オベールさんはお気に召さないようだ。
「ならその剣を、わたくしに頂けますか?」
どうやらレーティシア姫は、一人で雷撃剣を放つための、雷のチャージを、この剣で行うつもりのようだ。
「どこかに王家の紋章とか付けますか?」
「それじゃあ柄の部分にお願いします」
まずはレーティシア姫に渡す魔剣が決まった。
次に記されているのが・・・・ミスリルの剣?
魔剣でもなんでもない。ただミスリルで作っただけの剣だ。
魔力を流すと丈夫になり、切れ味も増すとかなんとか・・・。
「ミスリルか・・・・喉から手が出るほど欲しいが・・・・魔剣でないのがちょっとな・・・・」
その下は・・・アダマンタイトの剣。
これもただアダマンタイトを使っただけの剣だ。
アダマンタイトは非常に丈夫で、耐熱性に優れ、魔法にも強い素材だ。
「アダマンタイトか・・・・!! 欲しい! でもそれもな・・・・」
なんて我がままなんだろうか?
でも魔剣でないし、これはオベールさん的にはなしなのか?
「じゃあこういうのはどうです? ミスリル製の投げても手元に帰ってくる魔剣とか・・・」
まあオレがスクリプト製作アプリでプログラムを作り、ミスリルの剣に付与してアーティファクト化しただけの剣だがな。これぞ自作の魔剣だ。
ちなみにアダマンタイトは、魔剣の製作には向かない。
それはアダマンタイトの、魔力伝導率が壊滅的だからだ。
その魔法耐性ゆえの欠点なのだが、その重量さえなんとか耐えれば、最高の防具となるだろう。
「うお!! 欲しいが・・・欲しいが・・・あと一つ足りない気が・・・」
「それじゃあ火の玉とかも剣から飛ばします?」
「よし! 買った!」
いや・・・・別に売らねえよ。
結局オベールさんは、火の玉が飛ぶ、投げても手元に帰ってくる、ミスリルの剣になった。
魔剣の名前は後で自分で考えるそうだ。
「ライザさんは、この銃とかどうですか?」
「ジュウ?」
オレがライザさんに勧めたのは、見えない風の弾丸を、魔力と引き換えに飛ばす拳銃だ。
ミスリル製で、杖としても使える優れものだそうだ。
「すご~い! なら私はそれにするよ!」
二つ返事で受け取ってくれた。
「イスマエルさんはどうします? オベールさんとは違う魔剣にしますか?」
「いや。オレはオベールと同じものにしてくれ。一点物の魔剣には付加価値が付くんだ。魔剣に付加価値がつきすぎると実用性に乏しくなる」
なるほど。高価な剣になればなるほど、傷をつけたくなくなるからね。
イスマエルさんは観賞用ではなく、実用性のある魔剣が欲しいんだね。
「じゃあ坊ちゃんも同じ剣にしますか?」
オレはベルトランにも確認する。
「あ、ああ。俺もその魔剣でいい。ただもう少し・・・伯爵家に相応しいデザインにならないかな?」
つまり貴族専用の見た目も重視した、剣にしてほしいということだろうか?
「なら剣のブレイドの部分を、ガラスみたいな見た目にしましょうか?」
メタセコであれば、3D制作したモデルを、ガラスのような見た目にすることも可能だ。
モデルに透明な画像を張り付けてもいいし、モデルの不透明度を調整するのもいいだろう。
「そんなことが出来るのならば、わたくしの雷の魔剣もそうしてください!」
まあ。王族のレーティシア姫の剣が、伯爵家のベルトランの剣に見劣りするのは、避けたいんだろうね。
「カンタンさんは高価なものを持つのが嫌なんですよね?」
皆と違いカンタンさんは、酒と料理を要求してきたくらいだし、高価な物を持ち歩くのが怖いのかもしれない。
「そうだな・・・。なくすのも嫌だし、高価な品物は狙われやすいからな。金もあまり持ち歩くと狙われるから、手に入ってもすぐに使っちまうな・・・・」
カンタンさんはいったいどんな世界で生きて来たのか?
斥候というくらいだから、やはり思考が盗賊よりなのだろうか?
「なら収納のバックのギフト・アーティファクトなんてどうです?」
ギフト・アーティファクトなら盗まれる心配もなく、便利な道具が使えるはずだ。
「あっしには魔力がほとんどねえのさ。だから収納の魔道具を持っても、使えないのが現状だ」
この異世界の収納の魔道具は、使うのに魔力が必要なようだ。
「なら魔石を使って開けるタイプの収納バッグなんてどうです?」
この収納バッグは、魔方陣の部分に魔石を当てることで、開けることが可能な特殊なタイプだ。
これなら魔力に関係なく使えるし、魔物を倒して得た魔石で開けられるから、冒険者にはおあつらえ向けのアイテムだ。
「そんなのがあるのか? それじゃあ、あっしはそれに・・・・」
「おい! そんな魔道具もあるのか!?」
「うおおお! その魔道具も欲しい!」
そんな収納バッグの存在を知ると、皆再び悩みだした。
まあけっきょく両方渡すことにしたがね・・・・。
「コロンはもう決まっているんだよね?」
「ああ・・・。ワタシはもう決めている」
コロンは皆が悩む中、迷いなく例のギフト・アーティファクトを選択した。
「ワタシには・・・光の剣をくれ・・・・」
コロンが光の剣を選択するのはわかっていた。
だがなぜ今コロンがそんな思いつめた顔をしているのか、その時のオレにはわからなかった。
お読みくださりありがとうございます。
面白い!
また読みたい!
と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。
いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。
感想、レビューもお待ちしております。




