26:USBメモリーの中身
「皆まず・・・いったん落ち着いて・・・」
「いやお前が落ち着けよ」
皆にそう声をかけたら、コロンからそうつっこまれてしまった。
オレは現在ダンジョンで見つけたUSBメモリーから、5億ものポイントを付与され戦慄していたのだ。
ちなみにそのUSBメモリーもUSB変換ケーブルも、いつの間にか消えてなくなっていた。
「何が何なのかさっぱりわからん。まずは落ち着いて説明してみてくれ」
オレはオベールさんにそう言われて、再び深呼吸をする。
まずは皆にUSBメモリーの中身について、どう説明するか考えるべきだろう。
一番の収穫は5億ポイントだが、言及されればそれは、トラブルになりかねないので、口には出さないでおく。
それ以外でオレが説明できるのは、アーティファクトや、ギフト・アーティファクトを、作れるようになったことだろうか。
そのためには改めて付与されたデータや、新たな機能を確認する必要がある。
新たに得たパーティクルや魔方陣も、メタセコの素材も、全てはこのためにあるようなものだ。
ならばサンプル素材データの中から、アーティファクトや、ギフト・アーティファクトを出して皆に見せるのはどうだろうか?
「えっと・・・まずは皆これを見てくれますか?」
「おま・・・それ!」
それを見て一番に驚いたのはコロンだった。
なぜならそれは、以前オレがコロンに託し、コロンの手から消滅したライトセイバーだったからだ。
サンプルデータの中には、数々のアーティファクトや、ギフト・アーティファクトのデータが入っており、ポイントを使うことでそのどれもが実体可能なのだ。
ブオ~ン! ブオン!
オレはライトセイバーを、皆に見せつけるように振り回した。
「光の剣だな? そんなギフト・アーティファクトまで持っていたのか?」
「いえこれは、今しがた作ったんですよ?」
「作った・・・だと?」
オベールさんはオレのその言葉に、怪訝な顔をする。
ただこのライトセイバーを作るのに、3百万ポイントほどかかったがな。
5億ポイントもあったのだから、これくらい作っても構わないと思ったのだ。
「もしかしてヨッシー・・・・。ギフト・アーティファクトを作り出せるようになったのですか?」
そして勘のいいレーティシア姫が、オレの言わんとしていたことに気づいたようだ。
「正確にはアーティファクトも、ですがね・・・・」
「「はあああああ~!?」」
そのオレの言葉に、全員が揃って疑問と驚きの声を上げる。
「なので先ほどのお宝を譲っていいただいた見返りに、皆さんに、ギフト・アーティファクト又は、アーティファクトを作って差し上げようと思います」
そして続けざまに放たれたオレの言葉に、全員が固まってしまう。
「まてヨッシー。その能力は危険すぎる・・・・」
「なんでですか?」
「そんな能力があれば、アーティファクトを持った軍隊だって造れるんだぞ? そんな能力が知られれば、ヨッシーを巡って、世界中で戦争が起きかねない」
確かにオレが兵器を造って複製して、軍隊に渡せばそれも可能だろう。
まあそれには莫大な、予算が必要になるだろうが・・・・。
だがそのために、戦争が起こるのは嫌だ。
「皆このことは必ず秘密に・・・・」
「ああ当然だ! 皆今ヨッシーが言ったことは忘れるんだ!」
「あ、ああ・・・そうだな」
「下手すれば何処かの国に捕まって、拷問でもされかねないな」
「そうですわね。ヨッシーの平穏のためにも、このことは黙っているべきでしょうね・・・」
「あっしも面倒ごとは嫌ですぜ!」
皆どうやらオレが今言った内容は、忘れてくれるようだ。
だがそれではお宝を譲ってもらったオレが、なんだかもやもやする・・・・。
「でも皆ギフト・アーティファクトやアーティファクトは欲しいよな!?」
「・・・・・」
「ああ・・・もちろんそれは・・・」
「アーティファクトの魔剣はロマンだぜ!」
「私も特殊な杖が欲しいね!」
「俺もアーティファクトが欲しい!」
「わたくしももう一つくらいアーティファクトを・・・」
「あっしは酒と料理がもらえればそれで・・・・」
オベールさんが皆に問いかけると、皆いっせいに本音を言い始めた。
一人高望みが出来ない人もいるが、全員ギフト・アーティファクトやアーティファクトは欲しいようだ。
「ならそのギフト・アーティファクトやアーティファクトは、この扉の向こうで手に入れた! そういうことにしようぜ!」
なるほど。ダンジョンでギフト・アーティファクトや、アーティファクトを手に入れるという話はよく聞く話だ。
オレたちがこのダンジョンを出て、そう言ったアイテムを持っていたとしても、誰もオレが作ったとは思わないだろう。
「なら決まりだ! 俺に魔剣を授けてくれ!」
即行だねオベールさん。もしかして一番アーティファクトが欲しかったのは、この人なのかもしれない。
こうしてオレは、コロンと希望の盾の、一名を覗いたメンバー全員に、ギフト・アーティファクトか、アーティファクトを作ることになったのだ。
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