25:財宝
扉をくぐると不思議なことに、斥候のカンタンさんが言っていいたように、そこはどこか近代的な鉄の部屋のようだった。
無事にスレイプニールのテイム作戦を成功させたオレたちは、不思議な扉を平原のど真ん中で見つけ、その扉をくぐってきたのだ。
「見ろ! 何か台座の上にあるぞ!」
見ると台座の上にはガラスケースがあり、その中に何か小さなものがあった。
「USBメモリーとUSB変換ケーブル?」
「これを知っているのかヨッシー?」
見るとそれはオレが前世で目にしたことがある、USBメモリーとUSB変換ケーブルだったのだ。
USBメモリーはUSB変換ケーブルでスマホに繋ぐことで、中のデータを取り出せるのだ。
「たぶんこれは、オレの能力に関する物だよ・・・・」
まるでオレがここへ来ることが、予期されていたようにここに置いてあった二つの機器に、オレは戦慄を覚えた。
「皆気づかないふりをしてくれていますけど、オレの能力については理解していますよね?」
「おお! しっているぞ!」
「ああ・・・粗方理解している・・・」
オレの能力はギフト・アーティファクトであるこのスマホで、通販ショップで買い物をしたり、魔道具のような物を作り出すことだ。
おそらく目の前のUSBメモリーには、オレのスマホに付与する新たなデータが、入っていると思われる。
「ならこのお宝だけど・・・オレが使ってもいいかな?」
オレがそう皆に確認する理由は、こういったアイテムが、使ったとたんに消えてしまう可能性があったからだ。
この異世界の巻物などの能力系のアーティファクトは、使うと消えてしまうのが通例なのだ。
「そうだな・・・・。そんなわけのわからないアイテムよりも、ヨッシーの出すアーティファクトの方が、価値があることは確かだな・・・・」
「ワタシもそんな物よりは、ヨッシーの出すお菓子の方がいいぞ!」
皆が言うように、USBメモリーもUSB変換ケーブルも、この異世界ではガラクタ認定されかねないアイテムだ。
ならオレがこの二つの機器をもらい、皆に欲しい物を出して上げた方が、まだ喜ばれるだろう。
「ヨッシーにはこの聖剣アルゲースを頂いています。わたくしはその二つのアイテムをヨッシーに渡しても構いません」
「そうだな・・・。私も何か美味しい菓子でもくれれば考えてもいいよ」
「ライザさん! それは狡いです!」
「じゃあ俺には酒だ!」
「あっしも酒で手を打つぜ!」
「俺は肉料理で手を打つぞ・・・」
「わかりました。酒にお菓子に、料理ですね? 皆さん今更後悔しても知りませんよ?」
オレにはなぜかわかるのだ。このUSBメモリーには、何かとんでもない機能が入っていることが・・・・。
オレはUSBメモリーを手に取ると、まずUSB変換ケーブルに繋げた。
そしてUSB変換ケーブルを、オレのスマホに繋いだのだ・・・・。
『USBメモリーから、新たなデータが検出されました。インストールしますか?』
「もちろん『はい』だ!」
オレは『はい』の文字をタップした。
『新たな機能として、アーティファクトやギフト・アーティファクトの製作が可能になりました。
なおサンプルデータを添付していますので、そちらを参考に、メタセコとスクリプトエディターで製作してみてください』
全てのデータのインストールが終わると、そんな文字が出てきた。
アーティファクトやギフト・アーティファクトの製作だって?
通販ショップで買える製品とは、また違うのかな?
後でまた確認してみよう。
『それに伴いミスリルとアダマンタイトの素材データがメタセコに追加されます』
ミスリルとアダマンタイト・・・・。
ついにオレは伝説の金属を、素材として使えるようになるらしい。
『またパーティクルデータに、破壊の光、回復の光、空気、空間が追加されます』
破壊の光はなんとなくわかる。
これはライトセイバーなどの攻撃的な光を放出するパーティクルだ。
回復の光はもしかして、レーティシア姫のような回復効果をもったパーティクルだろうか?
空気は風などの見えない衝撃を操るものか?
空間はなんだろう? 空間自体見えないし、理解できない物なので想像もできない。
『またいくつかの魔方陣の画像データが付与されます』
魔方陣データ? 召喚とか、魔法を使うために必要なデータとか?
『最後に500000000ポイントを付与します・・・・』
ご?
オレはそのゼロの数が間違えじゃないか今一度数え直す。
そしてその数字が、間違いじゃないことを理解した・・・・。
「ご・・・!!!」
5億ポイントだってえええええ!!!
そう言いかけてオレは、とっさに両手で口を塞いだ。
どう考えてもトラブルになりかねない桁の多さだ。
へたしたら殺し合いにでもなりかねない。
狡いとは思うが、この5億ポイントに関しては、口外しない方がいいだろう。
「ど・・・どうしたヨッシー!? いったい何があった!?」
「意味が分からないぞ! 落ち着けヨッシー!」
オレはいったん深呼吸をして、気を落ち着けることにした。
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