07:ガタクリ1号
「じゃあワタシは狩りに行ってくる」
小さな木の実をいくつか食べたら、コロンはさっそく狩りに向かった。
そしてオレは木の実を食べた後に、スマホの次なる実験に移る。
オレは前世でよくパソコンを使い、ゲームを作っていた。
作るゲームは主に3Dのゲームで、アクションが多かったかな?
まあ今はそれはいい。この不思議なスマホをどうにか使えば、魔法のように物体を浮遊させたりできないかと、考えたのだ。
「ん? 何だ? 新しい制作用スクリプトエディターかな?」
するとスマホの機能に、見慣れない制作用スクリプトエディターを発見した。
ちなみに制作用スクリプトエディターとは、プログラミング言語を入力して、ゲームを作ったりするツールだ。
「とりあえずタップと・・・」
すると不思議な感じの制作用スクリプトエディターが開いた。
「まずコマンドヘルプを開いて、命令なんかの言語を見ていくかな・・・」
制作用スクリプトエディターの言語は、今まで見て来た言語とそう変わらなかったので、習得は簡単だった。
言語を習得したオレは、まず昨日作った『実験木』で、色々と実験してみることにした。
『メインループ・・・
;黒いパーツは触れると1が入り、再び触れると0が入る。
if 黒いパーツ = 1{
PosForward "実験木.mq",10 ; 前進命令
}
if 地面からの距離 < 300{
PosFloat "実験木.mq",10 ; 浮遊命令
}
・・・』
とりあえずこんな感じに入力してと・・・実行!!
「おお! 凄い!! 木のブロックが浮いた!!」
すると『実験木』の名を持つ木のブロックは、ゆっくりと浮遊して、条件で設定した高さで止まった。ちなみに300は30センチメートルだそうだ。
「よし!! 発進だ!!」
オレは次に、木のブロックの横に設置した、黒いパーツを叩く。すると木のブロックは、亀のようにノロノロと移動を開始した。
「おお! 実験は成功だ!!」
オレはこの方法で、浮遊自動車が造れないかと考えたのだ。
勿論素材は格安の『材木:ヒノキ』だがね。
『石材:花崗岩』や『金属:鋼鉄』は、ポイントを多く食うのだ。
そしてオレは、浮遊自動車の制作に没頭し、気付けば夕方となっていたのだ。
「お~い! 帰ったぞ・・・て何だそれは!?」
洞窟に帰宅したコロンが、オレの乗りまわす木製浮遊自動車を見て、驚愕の声を上げる。
オレはポイント1400を使い、木製浮遊自動車を粗方完成させていたのだ。
残りポイント:36367
「魔道具? そのスマホで出したのか?」
コロンは木製浮遊自動車を、ペタペタと触りながら聞いてくる。
「ああ。スマホの電池残量を消費するみたいだから、今日はもう動かせないんだけどね」
木製浮遊自動車はスマホの電池残量、もしくはポイントをエネルギーにして動かせるようなのだ。
今回は電池残量をエネルギーにしてみた。
「ちぇ・・・つまんねーな」
せっかく見つけた玩具が、もう動かせないと聞いて、コロンがつまらなそうに舌打ちする。
「じゃあ明日はこいつに乗って一緒に狩りに行く? こいつのエネルギー消費の具合も見たいし、速さとかも確かめたいから」
この狭い洞窟内では、いまいちエネルギーの消費効率や、利便性についてもわかりづらい、やはり外で長距離を走らせてみた方がいいだろう。
「お! いいね!! それじゃあ明日はそいつに乗って狩りに行くぜ!」
あとこの木製浮遊自動車には『ガタクリ1号』と名付けた。
いつまでも木製浮遊自動車では、言いにくいし、堅苦しい感じがするからね。
ちなみに『ガタクリ1号』の名は、日本初のガソリン車にちなんだ名前だ。
翌朝オレたちは、早速木製浮遊自動車『ガタクリ1号』に乗って、狩りに出た。
「うひょ~! こいつは楽ちんだ!」
コロンはせっかく用意した助手席には乗らず、荷台に立って乗るのがお気に入りのようだ。
今もオレの座先に後ろから掴まり、髪を風になびかせながら、上機嫌ではしゃいでいる。
「それじゃあもっと速度上げるよ!」
「おう!! 待ってました!!」
エネルギーの消費量は、速度が増すほど増えていくようだ。
エネルギー効率的に長く乗るためには、人が走るくらいの速度が丁度いいようだ。
「悪いがそいつはここまでにしてくれるか? 目立つと鳥や兎に逃げられちまうからな」
狩り場に入ると、コロンはガタクリ1号を隠すように指示してきた。
なるほど・・・ガタクリ1号は移動には便利だが、確かに目立つな。
「痛て!」
「どうした?」
「何かで足の裏を怪我したみたい・・・」
オレはそこからコロンの狩りに同行したが、この幼女の体は体力面は勿論、あまり足の裏の皮も厚くはないようだ。
あっという間にへとへとになり、足の裏も怪我をしてしまった。
「何かの枝を踏んだな? そこら中に散らばっているからな」
見ると周囲には、折れた小枝が散乱していた。
どうやらその小枝で足を怪我したようだ。
「コロンは平気なの?」
「ワタシはほれ。これを巻いているからな」
コロンの足には黒い布が巻き付けてあるのだ。
その布はどうやら靴の代わりのようだ。
「仕方ない・・・靴と絆創膏と・・・消毒薬を買っておくか・・・」
オレは絆創膏178円と、消毒薬242円と、幼児用スニーカー60円を購入した。
この靴安すぎないか? まあ安くて悪いことはないが・・・
消毒薬をして絆創膏を張り、足の裏を手当すると、黒いマジックテープ式の幼児用スニーカーを履いた。
「うん! 少し大きいが悪くない!」
残りポイント:35887
「ヨッシーのギフト・アーティファクトはそんな物まで出るのか? 相変わらず便利だな?」
そして再び狩りを再開する。
「はあ・・はあ・・」
足の裏はもう平気だが、コロンの移動速度は速い、ついていくのがやっとだ。
仕方なく疲れをとるための必需品、飴を通販サイトで検索。
ん? 見たことない飴発見。特価今だけ150円だって。買ってみるか?
残りポイント:35737
購入してみるとそれは、不思議な雰囲気の袋に入った苺色の飴だった。
「ヨッシー最近ポイント使いすぎ」
するとコロンから注意が飛んできた。
ポイントの使いすぎは、確かに良くないのだろう。
このポイントが無くなると、最悪死に至る危険性もあるらしいのだ。
でも疲れた時のオレにとって、飴は必需品だ。前世でもそうだった。
「まあまあ。これも必需品だから」
ガサガサ・・・
袋から飴を取り出すと、その飴は小袋に入っていた。オレはその小袋を開けると、苺色の飴を出して口の中に放り込む。
「甘い!!」
その飴は思った通り苺味だ。しかも久々の甘味のためか、かなり甘く感じる。
「ん!!」
するとコロンも手を差し出してきた。くれということだろう。
オレが飴を差し出すと、コロンは早速小袋を破り、その中の飴を口に放り込んだ。
「お~~!! めちゃ甘い!! 美味いぞ!! 力がみなぎる!!」
コロンは力こぶを作りつつ、そう主張する。
確かに甘いものを食べて、少し元気になった気はするが、コロンは相変わらず大袈裟だ。
ぴちゅん!!
「よっしゃ!! 命中!!」
そしてテンションが上がったコロンの水の矢は、一撃で遠くの兎を仕留めたのだ。
「おお~!! すげ~!!」
そしてオレも水の矢を見れて大満足だった。
水の矢を放出する前の、水の魔力の収束は、迫力があってとても見ごたえがあった。
残りポイント:35737
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