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24:不思議な扉


「ごめんなさい! 一頭は仕留め損ねたわ!」



 見ると二頭のうちの一頭は、レーティシア姫の振るう聖剣アルゲースの飛ぶ斬撃を受けて倒れていた。

 だがもう一頭がその攻撃を避けて、鉄のゴーレムの脇腹に突撃していたのだ。



「ブモモモモモ~!!」



 それを隙と見たスレイプニールが、再び鉄のゴーレムへと突撃を開始する。



「させるか!!」


 ガキン!!


「ブモヒ~!!」



 だがコロンの槍の一撃が、カウンターのようにスレイプニールの顔面に決まる。



「ヒヒヒヒヒ!」


「おりゃあああ!!」



 オレは脇腹に頭をつけていたバトルホースの首を腕で固めると、そのまま持ち上げ、スレイプニールに向けて投げつけた。



 ドカン!!


「ブモ~ヒヒヒヒ!!」


 

 二頭はそのままもつれ合い転倒する。



「よし!! このまま畳みかける!!」



 オレはそれを好機と見て、スレイプニールに駆け寄る。



「待ってヨッシー!」



 するとレーティシア姫が、急に静止を呼びかけてくる。



「どうかしましたか姫?」


「スレイプニールからの戦意が、消えているわ・・・」



 何? 戦意だって?


 オレには戦意がどうとかよくわからないが、確かにスレイプニールからは先ほどまでのとげとげしさとかは、感じられないような気もする。



「アイアンゴーレムを降りて、確認してきます」



 そう言ってレーティシア姫は、鉄のゴーレムから降りてしまう。



「ちょっと! 危なくないですか!?」



 倒れているとはいえあの巨大なスレイプニールの怪力だ。

 ちょっと足で小突かれただけでも、けっこうなダメージを受けてしまうだろう。

 それにスレイプニールの傍らには、オレが先ほど投げ飛ばしたバトルホースもいるのだ。



「コロン・・・。護衛をお願いできますか」


「おう。いいぜ」



 するとオレの心配を悟ったのか、レーティシア姫はコロンを伴ってスレイプニールに近寄っていく。


 オレも鉄のゴーレムで、遅れてその後ろに続く。


 レーティシア姫はスレイプニールの側によると屈みこみ、徐にスレイプニールの頬に手を伸ばす。

 そしてその手がスレイプニールの頬に触れた。



「大丈夫のようです」


「ふう・・・・」



 オレはいつの間にか緊張で、気が張り詰めていたようだ。

 レーティシア姫の手がスレイプニールの頬に触れた瞬間、全身の力が抜けてしまう。


 スレイプニールも、その傍らに倒れているバトルホースも、すでに戦意はないようで、澄んだ目でこちらを見ている。



「このままスレイプニールに、回復魔法をかけてみますね・・・」



 レーティシア姫がスレイプニールに回復魔法をかけると、レーティシア姫の右手と、スレイプニールの額に何かの文様が浮かび上がった。



「その文様は・・・?」


「王家の文様です。どうやらスレイプニールのテイムに成功したようです」



 なんとあっけない幕引きだろうか?


 スレイプニールはあっけなくレーティシア姫に、テイムされてしまったのだ。

 これでオレたちの最終目的は、果たされてしまったのだ。



「ヨッシーも近くに来てください」


「えええ~?」


「もう怖くありませんよ?」



 オレはレーティシア姫に言われるがままに、鉄のゴーレムに乗って、スレイプニールの近づいていく。



「ブモヒヒ…」


「うげ!」


「あら・・・この子・・・」



 オレがスレイプニールに近寄ると、スレイプニールは立ち上がり、オレに鼻をつけてきたのだ。

 オレはその行為に初めは驚いたが、何か無性に懐かしさを感じた。


 オレは前世でも現世でも、馬に触れたことなど無いのだ。

 馬に触れたのはこれが初めてだと言っても過言でない。


 ならばなぜこんなに、懐かしい気持ちになるのか?



「おおい! ヨッシー!」



 見るとオベールさんと他のメンバーが、こちらに駆け寄るところだった。



「残りのバトルホースはどうしたんですか!?」


「何が起こったか知らないが、いっせいに草むらに逃走していったぞ」



 見るとバトルホースは草むらに向けて走り、どこか遠くへ逃げ去るところだった。



「お前こそどうしてスレイプニールと、そんなに仲良くいちゃついているんだ?」



 見るとスレイプニールは、オレが伸ばした手を甘噛みしていたのだ。



「あ~! よだれまみれじゃないか!」



 見るとオレの手は、よだれでべとべとだ。


 先ほどまで殺し合いをしていたのに、どうして今はこんなにオレに懐いているのだろうか?

 まあ考えたところで、何かわかるわけでもないが・・・・。



「オベールの旦那! 向こうに扉を発見したぞ!」



 そんなことをしていると、斥候のカンタンさんが扉を見つけたらしく、こちらに手を振りながら声をかけてきた。



「なんだその扉は?」


「ずいぶんと不思議な扉ですね・・・」



 声のする方へ行くと、その扉はあり、平原のど真ん中に不自然に立てられていたのだ。

 その扉を斥候のカンタンさんとイスマエルさんが二人で確認していた。



「駄目だ・・・。この扉には鍵穴がないから、あっしのピッキングが使えねえ」


「魔力的な何かは感じるが、どう解除していいかわからないな・・・」


「扉の裏には何も無いんですか・・・・? うお!? なんだこれ!?」



 オレが扉の後ろに回り込むと、驚くべきことにそこには何も無かったのだ。

 つまりその扉はから正面しか、見えない扉なのだ。



「ブモ~ヒヒヒヒ!!」


「どうしたのお前・・・?」


 カチ・・・!


「鍵が開いた・・・」



 いつの間にか扉の前にやって来ていた、スレイプニールが一鳴きすると、なんとその扉の鍵が開いたのだ。



「中は鉄の部屋のようだ。危険はないな・・・」



 斥候のカンタンさんが安全確認を終えると、全員がその扉をくぐっていく。

 オレも鉄のゴーレムを解除して、皆の後に続いた。



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

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