18:ワールドトレント
「でかい・・・!」
オレは思わずそう呟いた。
五階層にある広大なホールに差し掛かると、そこには山のように巨大なトレントがいたのだ。
エミソヤのダンジョンを探索中のオレたちは、六階層に進むために巨大なワールドトレントの立ちはだかる場所へとやってきたのだ。
ワールドトレントはその巨体ゆえか移動はしないようだが、この広いホールの隅々まで届くような、伸びる巨大な枝をもっているのだ。
そしてワールドトレントの周囲には複数のトレントや、マッシュルームマン、さらにはダンジョンビーもいて、そこを通り抜けるのは困難に思えた。
だが今回オレたちには、そこを通り抜ける手段があったのだ。
それがオレの造った青く透明なドームだ。
そのドームはオレを中心として移動する、座標設置型のシールドだ。
そのドームにオレとコロンと、希望の盾のパーティーメンバーを全員入れて、移動するのだ。
八人も入るとそのドームは少し満員ぎみとなるが、なんとか全員入ることができた。
ちなみに今回のドームには、窓や入り口はつけていない。
あるのはごく小さな空気穴のみだ。
それは今回はトレントやマッシュルームマンに、ドームを囲まれる可能性があるからだ。
そうなると窓や入り口から、トレントの枝やマッシュルームマンが侵入する可能性は高くなる。
なので今回攻撃手段があるとすれば、ドームの外でも振り回せる、オレのガラスの剣だけとなる。
ドームはトレントやマッシュルームマンの攻撃は問題なく弾くが、さすがに巨大なワールドトレントの枝をくらうと、一瞬揺れて動きを止める。
バキ~ン!!
「ぐあ!!」「うあ!」
ワールドトレントの強烈な一撃に、ドームが衝撃を受け、何人かが悲鳴を上げる。
それがオレたちの恐怖をさらに掻き立てるが、なんとか六階層へ続く階段のある部屋へたどり着けそうだ。
だがここで問題が発生した。
なんと階段のある部屋へとたどり着く前の道が、上り坂になっていたのだ。
ドームはその上り坂につっかえて、移動しなくなっていたのだ。
「仕方ない! ここからはこのバリアを解いて、各々あの部屋の入り口まで走るぞ! ヨッシーは念のためにアイアンゴーレムになっておけ!」
「それじゃあ先にドームを消します!」
このドームの高さは、オレの鉄のゴーレムほどの高さはない。
ここで鉄のゴーレムになれば、天井で頭をぶつけてしまうだろう。
「まて! バリアを消すタイミングは俺が出す!
いいか皆! 俺が三秒で合図する! 俺がゼロと言った瞬間に、ヨッシーはバリアを解除してくれ! 皆はバリアが解除されると同時に、あの部屋の入り口に走れ!」
オベールさんはオレがドームを消そうとすると、そう言ってオレの行動を制してきた。
「3・・・2・・・1・・・・・」
そしてカウントを開始したのだ。
「ゼロ!!」
オレはそのオベールさんの合図とともに、ドームを解除した。
それと同時に、今までドームを囲んでいたトレントやマッシュルームマンが、一斉にオレたちに殺到する。
「鉄のゴーレム起動!!」
オレは即座に鉄のゴーレムを起動し、坂の上にある部屋の入り口の位置を見据える。
「あっ!!」
ドッ!!
だがオレの左後ろで、悲鳴のような声が聞こえたと思うと、転倒しているレティーくんの姿が目に入った。
「レティー!!」
すでに入り口まで到達していたオベールさんが、声を荒げてその様子を見ている。
「大丈夫です! オレが連れて行きます!」
オレはレティーくんを摘まみ上げると、そのまま抱えて、鉄のゴーレムを浮遊させた。
「ヨッシー! 無事か!?」
ガン!
そのゴーレムの肩に飛び乗りながら、コロンが尋ねてきた。
重いとスマホの電池消費量が増えるので、降りてほしいのだが・・・。
「ふん!!」
ガシ!!
コロンはどうやらオレの不安定な肩の上で、槍を振るって、トレントの枝を防いでくれているようだ。
そのまま浮遊しながら、なんとか部屋の入り口に入り、部屋の中に入ることができた。
「見えない壁発動!!」
オレは全員がいることを確認すると、部屋の入り口の前に、見えない壁を設置した。
これでトレントの枝も、マッシュルームマンも侵入してはこられないだろう。
「ありがとう・・・助かったよヨッシー・・・」
オレはレティーくんを地面に降ろすと、鉄のゴーレムを解除した。
ピコリン!
そしてそのタイミングで、なぜか鳴りだすオレのスマホ。
「ん? 何の音だ?」
「すみません。オレの魔道具が誤作動しちゃって・・・」
その音を聞いて困惑するオベールさんに、魔道具の誤作動で誤魔化しておく。
「オベールさん! この先に安全地帯を見つけやした!」
どうやら斥候のカンタンさんが、ダンジョンにある安全地帯を発見したようだ。
「皆! そこでしばらく休憩しよう! ヨッシーはご苦労だったな!」
バシ!
「あう!」
そう言うとオベールさんは、オレの背中を叩き、安全地帯へと足を運ぶ。
地味に痛いのでやめていただきたいのだが・・・。
オレも靴に設置した浮遊パーツで、スケートのように滑るように歩きその後を追う。
「なになに? 次はなんだ?」
無事に安全地帯に到着すると、オレはそう独り言を呟きながら、先ほど来たスマホのメールを確認する。
『限定一本! 聖剣アルゲース 7500円 今こそ伝説を手に入れろ!』
メールの内容を見ると、そんな内容の文章が出てきた。
これ・・・非力なオレが手に入れて、いったいどうしろというのだろうか?
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