17:ダンジョンでの戦い
「コロン! トレントの伸びる枝に気を付けろ!」
「おう!」
トレントは凶悪な顔面がついた木の魔物だ。
動きは遅いが移動が可能で、木の枝を触手のように伸ばして、突き刺して攻撃してくる。
またキノコの魔物である、マッシュルームマンをボコボコと生やして、冒険者にけしかけてくるのだ。
そのトレントが三体も出現し、現在苦戦を強いられている。
現在オレたちはエミソヤのダンジョンの、三階層目まで到達した。
ここからは頻繁にトレントが出現するのだ。
「うおっと!」
ガキ~ン!
トレントの伸ばした枝が、オレの透明のドームに阻まれる。
当たらないとわかっていても、直前まで迫ってくる、尖った枝を見ると驚いてしまう。
今回のオレの役目は、魔術師の護衛だ。
青く透明な鉄のドーム内に、ライザさんとレティーくんを入れて、トレントの枝から守るのがオレの役目なのだ。
この青く透明なドームは数日前にオレが、ダンジョン対策にと、3Dモデル製作ツール、メタセコで製作したものだ。
魔術師は魔法使用時には動けなくなり、無防備にるため、こうした防護壁を思いついたのだ。
それにこの防壁があれば、反射神経のないオレでも、魔物の攻撃から身を守れることが出来る。
その青く透明なドームは、サンクリスタルの光を受けて発光し、まるでどこぞのアニメで見たバリアのようにも見える。
このドームには魔術師であるライザさんが、魔法を放つために、攻撃用の窓があけてあるのだ。
「エアーカッター!!」
ライザさんはそこから杖を出して、得意の風魔法でトレントを攻撃している。
ちなみに後ろには入り口があり、レティーくんの治療を受ける場合は、そこから入れるようになっている。
なお忘れられがちなメンバー、斥候のカンタンさんは、この戦いには参加していない。
どこか潜んで周囲の様子を窺がい、新手の接近を知らせるのが彼の役目のようだ。
「あの伸びる枝とマッシュルームで上手く近づけない!」
「ちっ! きりがない!」
現在コロンとオベールさん、イスマエルさんでトレントに攻撃を加えようと接近中だが、トレントの伸びる枝と、うじゃうじゃわいてくるマッシュルームマンの攻撃で、上手く近づけないようだ。
ライザさんも風魔法で攻撃はしているが、トレントには魔法が効きにくく、あまりダメージにはなっていないようだ。
「ライザさんレティーくん! ドームを少し前進させます! オレも攻撃に加わります!」
このドームはオレの座標をもとに、設置されているので、オレが移動するとついてくるのだ。
「何をする気ヨッシー!?」
「ガラスの剣を使います!」
ガラスの剣とは、オレが今回のために用意した透明な鉄の剣だ。
その剣には青く透明な画像が張り付けてあり、見た目がガラスのように見えるのだ。
ガラスの剣は分類でいえば、バスタードソードに近いだろうか?
長さ1.5メートルで幅がやたらと広いのが特徴だ。
ドームの外に出現し、オレの右手の動きに合わせて、浮遊移動する剣だ。
「まずはこの周囲のマッシュルームマンを薙ぎ払います!」
「このドームの前ではべルトランが戦闘中よ! 巻き込まないように注意して!」
現在ドームの前ではベルトランが、ドームに接近してくるマッシュルームマンと奮闘中だ。
ガラスの剣を横一文字に薙ぎ払えば、ベルトランごと真っ二つにしてしまう可能性もある。
なのでオレはガラスの剣を、ベルトランの右側に出現させると、少し前進させ、そこから一気に右腕を横に振りかぶった。
「いけ!!」
するとベルトランの前方をガラスの剣が、バタバタとマッシュルームマンを跳ね飛ばしながら横切った。
「うお!」
そのガラスの剣にベルトランが驚く。
その一撃で、この周囲のマッシュルームマンは、ほぼ全て倒せたようだ。
狩り残した数体のマッシュルームマンは、ベルトランが倒していく。
「ベルトラン! ドームを前進させるから前に出て!」
「わかった!!」
オレは現在トレントを三体相手にして、コロンたちが奮闘している場所に向けて前進する。
なお今回は移動手段として、靴に装着できるタイプの浮遊パーツを装着してみた。
ガタクリ一号や、靴底に出す浮遊板などの移動手段もあるが、色々とダンジョンの移動には不都合があったのだ。
ガタクリ一号は大きさから、スマホの消費電池量が激しい。
また靴底に出す浮遊板の場合、消費電池量は少ないが、上手く靴底にひっかけて使わないと、抜け落ちる場合があったのだ。
この浮遊パーツは靴のかかとの辺りに装着するものだが、今のところ問題なく、滑るような浮遊低空移動を可能にしている。
そしてガラスの剣の射程位置まで近づくと、次の攻撃を開始する。
「ドリルソード!!」
ビュイィィィィ~!!
ドリルソードはガラスの剣を、ドリルのように回転させながら、前方に飛ばす攻撃だ。
「うお! ヨッシーの魔法か!?」
「トレントを貫いたぞ!!」
見事オレのガラスの剣は、回転しながらトレントを貫いた。
ガラスの剣に貫かれたトレントは、絶命して行動を停止する。
「ワタシも負けてられねえええええ!!」
バキン!!
すると今度はコロンの、渾身の一撃がトレントを貫く。
これで二体目のトレントを倒すことができた。
「俺たちも負けてられねえぜ!」
「おう!!」
続けて三体目のトレントに、オベールさんとイスマエルさんが突撃し、枝を躱しながら、何度も同じ個所を交互に斬りつける。
すると三体目のトレントも、攻撃に耐え切れず絶命し、行動を停止した。
こうして三体全てのトレントを、倒すことが出来た。
「ヨッシーのその透明の剣は良いな。素材は何だ?」
「この剣の素材は鉄です」
現在オレたちは、トレントから得られた素材を収集中だ。
その最中にオレのガラスの剣の話となったのだ。
ちなみにガラスの剣は、現在オレの右手に握られている。
だがこんな重量のある大剣を、幼女の腕力ではとても持つことが出来ない。
なのでスマホのアプリで命令を作り、オレの右手に柄をくっつけて、浮遊して移動するようにしている。
もちろん剣の姿勢も、オレの手の動きで変わる。
現在は皆、剣やナイフを使い、素材をはがしながら作業しているので、オレも格好つけて剣を握ってみた。幼女であるオレに任される仕事はなく、ただ立っているだけではあるが・・・・。
カンカン!
「鉄がなんでこんなに透明になっているんだ?」
オベールさんはガラスの剣を叩きながら、そう質問してきた。
「魔法でなんとか・・・・」
オレは魔法という便利な言葉で、その場をやり過ごそうとする。
「それって何属性魔法なのかしら?」
するとライザさんがジト目でオレを見ながら、そんな意地悪な質問をしてきた。
「オレ・・・幼女なのでゾクセイとかよくわかりません・・・」
「ふ~ん・・・」
ここは幼さを理由に誤魔化してみる。
するとライザさんは何やら納得いかない表情で、オレを見ながら作業に戻った。
「これから向かう五階層には、ワールドトレントとよばれる、巨大なトレントが出現する。
こいつはここらの主といわれていて、まず倒すことはできない。だが先に進むためにはそこを通り抜ける必要があるんだ」
現在オレたちは五階層まで降りてきている。
目的のスレイプニールは、どうやら十階層にいるようだ。
十階層へ行くためには五階層にいるといわれる、ワールドトレントのいる地点を通過する必要があるのだ。
「皆! もうすぐワールドトレントのねぐらに到着するぞ! 気を引き締めろ!」
「「おう!」」「「はい!」」
こうしてオレたちは、このダンジョンの主である、ワールドトレントのいる場所に向かって、進んでいくのであった。
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