11:街の探索
「何? 冒険者ギルドに行きたいだと?」
宿泊先の部屋の確認が終わると、オレとコロンは、すぐに冒険者ギルドに行くことにしたのだ。
それはこの街の依頼内容も気になるし、出現する魔物の情報も、知りたかったからである。
あと退屈だったからというのもある。
「この街については話したよな? なるべくなら出歩かない方がいい」
確かに人攫いがいる、物騒な街だと聞いた記憶はある。
「コロンがいれば大丈夫じゃないですか?
それに初めての街なのに、どこにも行かないなんてもったいないですよ」
「は~・・・仕方ない・・・・。じゃあ俺が連れて行ってやろう」
「え!? オベールさんがですか!?」
「なんだ? 俺じゃあ不満か?」
「そういうわけじゃあないですけど・・・」
オベールさんがわざわざついてくるのは過保護すぎる気もするが、それで外に出れるなら、よしとするしかないな。
そんなわけでオレとコロンは、オベールさんと冒険者ギルドに向かうことになった。
「そういえば冒険者ギルドって、歩いてすぐの場所でしたね・・・」
冒険者ギルドは、宿から少し歩いた場所なので、あまり街を探索した気分にはならない。
まあしかたないので、気を取り直して、冒険者ギルドに入るとする。
「なんだ? 子連れか?」
「ここは子連れが来る場所じゃあないぜ帰りな!」
「「だはははは!!」」
三人で冒険者ギルドに入ると、さっそく冒険者全員に絡まれた。
この街にあってこの冒険者ギルドだ。あまりガラが良くはないのかもしれない。
「なんだお前ら? 俺に喧嘩売ろうってのか?」
そんな冒険者たちを、オベールさんが眼光を鋭くして睨みつける。
「げっ! よく見たら希望の盾のオベールじゃあねえか!?」
「す、すまねえ! 少し飲みすぎたみてえだ・・・」
「か・・・勘弁してくれ・・・」
すると突然冒険者たちが、おとなしくなった。
この冒険者ギルドでもオベールさんの知名度は健在のようだ。
いったいオベールさんは何者なのだろうか?
「オベールさんってずいぶん冒険者たちに恐れられていますよね? 何かやらかしたんですか?」
「やらかしてねえ! 人聞きの悪い! こう見えても末端だが、爵位持ちなんだよ・・・」
「え! オベールさんって貴族だったんですか!?」
「まあそういうこった。この国で貴族に逆らってもろくなことにならねえのは、皆わかっているのさ・・・」
どうやらこの国の貴族は、ずいぶんと力を持っているようだ。
「依頼の大半が、盗賊か人攫いの手配書だね?」
依頼書の掲示板を見ると、ほぼすべてが盗賊か、人攫い退治の依頼だ。
さっきの盗賊にも懸賞金はかかっていたのだろうか?
「盗賊ディクル・・・懸賞金銀貨二枚・・・フォベロドンより安いとか酷いね?」
「比べる対象がおかしいだろそれ?」
「コロンはさっきから、難しい顔してどうしたの?」
「腹が減った!」
「ああそう・・・」
コロンは今日も健在である。
「きゃああ!! 人攫いよ!!」
そんなことを考えていると、外から女性の悲鳴が聞こえてきた。
どうやら人攫いが出たようだ。
「ちっ! まったくこんな白昼堂々と・・・」
オベールさんはそう言いつつ、冒険者ギルドの外へ出ていった。
どうやら人攫いを捕まえる気のようだ。
「誰か捕まえて!!」
「人攫いはどちらに行った!?」
「あの横道を逸れて左に・・・・!!」
「ちっ! あの辺りは道が複数入り組んでいて探すには面倒だ!」
オレはそれを聞くとすぐに、スマホでマップ検索を行う。
するとこの周辺の地図は、すでにオレの周囲だけが表示されていて、その圏内に赤い丸と青い丸が重なって、進んでいくのが見えた。
魔物やオレに敵対する相手は、赤い丸で表示されるのだ。
当然盗賊や、人攫いも魔物と同じように、赤で表示される。
つまり青い丸と重なって移動している赤い丸が、人攫いである可能性は高い。
「オベールさん! こっちです!」
オレは靴底にはめてある板を起動すると、浮遊させて、まるで滑るように走り出す。
そして人攫いがいると思われる横道に入る。
「おい! こら! 勝手に動くなヨッシー!」
オレはオベールさんのその言葉を無視して、人攫いがいると思われる地点まで急行する。
滑るように移動していることで、かなり速度は出ているようだ。
あっという間に人攫いらしき男が、子供を抱えている背中が見えてきた。
「観念しろ! 人攫い!」
「ちっ! ガキか!」
すると人攫いは、こちらに向き直るやいなや、何かを詰めたような皮袋を投げつけてきた。
ボムン・・・!
「何だこれ・・・!?」
皮袋は空中でほどけ、粉をまき散らしながら地面に落下した。
「な・・・? 意識が急に・・・?」
まさか毒袋だったのか・・!?
オレはその粉を吸引してしまったようで、急に意識が遠くなってきた。
「へへへ! 幸運だったぜ! もう一人ガキが転がり込んでくるたあなあ!」
人攫いは倒れ行くオレに、下卑た笑みを浮かべながら接近してくる。
その時オレの脳裏には、この街に入った直後にオベールさんが言ったことが、思い起こされていた。
どうやらオレは油断してしまったようだ。
このままだとオレも攫われてしまうだろう。
「鉄の・・・ゴーレム起動・・・」
オレは薄れゆく意識の中、鉄のゴーレムを起動した・・・・
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