10:ジュデロゾの街
「おい! そこの馬車止まれ!」
オレたちが馬車で街道を進んでいると、数人の男たちが馬車の行く手を阻んだ。
男たちは武器を持ち、顔を覆面で隠している。
「後ろも囲まれたな・・・」
「数は12人ってとこか? 盗賊のようだな」
どうやらオレたちの馬車は、盗賊と遭遇してしまったようだ。
現在オレとコロンは、冒険者パーティー希望の盾とともに、目的のエミソヤのダンジョンの途中にある、ジュデロゾの街を目指していたのだ。
盗賊に遭遇するのは、異世界にきてからというもの、オレにとっては初めての経験となる。
盗賊の人数は、前に8人、後ろに4人といったところだろうか?
そのうち弓矢を装備しているのが前に1人、後ろに2人だ。
敵の中に魔術師はいないように見える。
「おとなしく金目の物を差し出すなら、怪我をせずに済むぜ?」
盗賊の一人が、剣をちらつかせ、下卑た笑みを浮かべながらそう脅しをかけてくる。
それを聞いたコロンや希望の盾のメンバーも、馬車の中で武器を出し、何時でも戦えるように準備を整える。
オレもいつでもアイアンアームを起動できるように準備しておく。
「待て・・・まず俺とイスマエルが出る・・・」
全員にそう指示を出したオベールさんが、馬車の御者席からイスマエルさんとともに、さっそうと盗賊たちの前へ出ていく。
「そうかい? でも俺達はおとなしく盗賊の言いなりになる気はないぞ?」
そして盗賊たちに、剣を向けながらそう言い放ったのだ。
「げっ! 希望の盾のオベール!」
「希望の盾だと!?」
オベールさんの顔を見た途端に、盗賊たちの顔色が変わった。
どうやらオベールさんとそのパーティー希望の盾は、盗賊の間でも知られているようだ。
「俺の顔を知っているということは、お前たち・・・冒険者くずれだな?」
「ちっ! 分が悪い! ここは引くぞ!」
そう盗賊の一人が呼びかけると、盗賊たちは方々に散って、逃走していった。
なんというあっけない幕引きだろうか?
「やれやれ・・・どこにでもいるな。ああいう連中は・・・」
そう言いつつオベールさんは、剣を鞘に納める。
オベールさんはこの結果を知っていて、オレたちに待つように言ったのだろう。
馬車を出た途端にコロン辺りが、いきなり盗賊に攻撃でも仕掛けていれば、乱戦になっただろうからね。
そうなれば誰かが怪我をしてもおかしくはなかった。
「あれは冒険者家業に嫌気がさして盗賊におちた連中だろう。ダンジョン付近には、とくにああいった手合いが多い・・・」
この異世界の冒険者事情は世知辛い。
冒険者は誰でもなれるが、冒険者の中で成功を収めるのはほんの一握りだ。
そしてその冒険者の大半が、戦いの中で命を落とすのだ。
そんな未来を憂えて、盗賊などの犯罪者に身をやつす者も少なくない。
ダンジョンとはそんな冒険者が、集まる場所でもあるのだ。
そのダンジョンへ通じる街の一つが、ジュデロゾの街だ。
オレたちの馬車は、昼頃にはそのジュデロゾの街に到着した。
ジュデロゾの街を見てオレが感じた印象が、西部劇の街の風景だ。
木造の建物が立ち並び、入ってすぐ右側に冒険者ギルドも見える。
それ以外の建物のほとんどが宿を経営しており、まさに宿場町といった様相だ。
盗賊のような出で立ちで、目つきの悪い連中もちらほらと見かけるので、あまりがらの良い街とはいいがたい。
「宿はこの街で一番いい宿をとってある。
先にその宿に向かい、馬と馬車を預ける。その後は各自自由に行動してもいい。だがヨッシーは攫われないように注意しろ? この街には子供を狙った人攫いも、多く存在するからな?」
ぶっそうな街だと思ったが、考えてみたら今まで住んでいた街にも、人攫いくらいはいると聞いていた記憶がある。
オレには一人で戦う力もあるし、そんなに警戒すべきことだろうか?
だがオベールさんの言うことだから、何かあるのかもしれないと、心に留め置く程度にはしておこう。
「小汚い宿?」
一番いい宿と聞いていたので、どんなに良い宿かと思ったが、そこはまるで酒場のような、小汚い宿だった。
宿の一階は文字通り酒場となっていて、昼間にもかかわらず、酒を飲んでいる連中もいるようだ。
「部屋は二階の一番奥の三部屋だ。ベッドは一部屋に四つずつだ。好きなように使ってくれ」
どうやらオベールさんは、部屋を三部屋とったようだ。
オレとコロンと希望の盾のメンバーで8人いるので、二部屋でもよかった気はする。
でも男女の比率を考えると、男3、女3、男2とかいう配分になるのだろうか?
「レティーは魔法に秘密があってな、他人には見せられないそうだ。だからレティーだけは一人部屋にさせてもらった」
なるほど。回復魔法の他人に見せられない秘密って、どんなのだろうか?
もしかしてレティーくんも、オレと同じギフト・アーティファクトの所有者なのだろうか?
それとも回復魔法には、儀式の下準備でもあるのだろうか?
まあ考えても仕方ないし、ここは納得しておく他ないのだろう。
「それじゃあコロンとヨッシーは私と同じ部屋ね!」
「よろしくな!」
「よろしくお願いします」
オレとコロンはやはり、女性ということもあって、ライザさんと同じ部屋になるようだ。
まあオレだけ中身がおっさんだがね。
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