09:雷魔法
ガタガタガタ・・・・
あれから三日が経った・・・。
オレたちはお世話になったテゼルー村を後し、再び馬車に乗って、目的のエミソヤのダンジョンを目指していた。
ゴロゴロ・・・・
その日は遠くで雷の音が鳴り響き、何時雨がふらんかという天気だ。
御者のベルトラン以外は全員やることもなく、寝入っているようなので、ちょうど今は誰も見ていない。
オレは暇なのでスマホでその雷を撮ろうと、シャッターチャンスを窺がっていた。
「お! 今のいけたかも!?」
「ヨッシーはさっきから何をしているんだい?」
そんな様子が気になったのか、レティーくんがコロンに尋ねている。
どうやらレティーくんとコロンは、まだ起きていたようだ。
オレは慌てて鞄に、スマホをしまい込んだ。
「子供の一人遊びだろ? 放っといてあげてくれ・・・」
コロンは壁にもたれかかり、片目を開け、寝そべりながらそう言った。
確かに暇すぎて、油断してこんな場所で、スマホを晒していたオレは愚かかもしれない。
だがもっと別の誤魔化し方はないだろうか?
反省したオレは、今度はスマホを鞄の中に隠しながら操作して、写した雷のパーティクル化を図る。
なおパーティクル化とは、火や水などの自然現象を、スマホのプログラムで発生出来るようにする仕組みだ。
ビリビリ!!
「あ・・・できた・・・」
どうやら雷のパーティクル化に成功したようだ。
オレの指先には、確かに派手な電気が発生していたのだ。
「え・・・ちょっとそれ・・・」
するとレティーくんが目を丸くして、その様子を見ていたのだ。
それはあたかもオレが、雷魔法を使っているように見えただろう。
ゲームの設定などで、雷魔法が選ばれし者しか使えない、特別な魔法という展開はよくある。
雷魔法は、ちょっと目立ちすぎただろうか?
コロンが片目を開けて、しばらく怖い顔でそれを見つめていたが、ため息をついたかと思うと、再び寝入ってしまった。
「えっと・・・レティーくん・・・今の秘密にしてくれると助かるんだけど・・・」
オレはそのコロンの態度から何かやばさを感じ、今見たことをレティーくんに秘密にしてもらえないか頼んでみる。
「ああ・・・トムおじさんから、君のことは色々と聞いているからね・・・。皆秘密にしてくれると思うよ・・・」
「えっと・・・皆?」
オレが改めて周囲を見回すと、希望の盾のパーティー全員が、実は狸寝入りを決め込んでいたことに気づく。
オレが視線を移すと、こいつら全員肩を少し動かしてピクッとなるのだ。
それほどまでに彼らは、オレの雷魔法に動揺していたのだろうか?
「あの~・・・。雷魔法は、何かやばいんでしょうか?」
オレは恐る恐る全員にそう声をかける。
「あ~・・・。今から俺が言うことは聞き流してくれ・・・」
するとオベールさんが突然起きだして、そんなことを言ってきた。
「昔一人の勇者が、邪神からこの世界を救った話は有名だ・・・・」
そしてオベールさんは昔話を語りだした。
もちろんオレにとってそんな話は初耳だ。
「その勇者のみが使えた魔法がある・・・・」
まさかそれが・・・雷魔法!?
オベールさんはオレの方をちらりと見て、オレがその魔法名を察したのを感じたのか、その先を言うことはなかった。
「ちなみにこの国の初代国王はその勇者だ。その意味がわかるよな?」
そしてそう言葉を付け足してきたのだ。
その言葉に対してオレが無言でうなずくと、オベールさんは再び目を閉じて、オレと逆の方を向いてしまった。
どうやら軽々しく雷魔法は、使わない方がいいようだ。
もし王族と勘違いなどされれば、単身でいる幼女など、ろくな目に遭わないだろう。
王族は色々と恨みも買っているだろうし、この異世界にも過激な王制反対派もいるだろうからね。
そんな奴らに狙われるのはごめんだ。
だがオレは雷を操る研究だけは、こっそりとしていこうと思っている。
このいつ襲われるか知れないぶっそうな異世界で、身を護るための手札はいくらでもあった方がいいからね。
その日の夕食は野営地でビーフシチューを食べた。
鞄の中にあった残りのルーと、あり合わせの具材を使ったので、ポイントの消費はゼロだ。
ビーフシチューは皆にとても好評だった。
そして残り電池残量を、2000ポイント変換してその日は眠りについた。
翌日にはジュデロゾの街に、到着する予定だ。
その先にあるエミソヤの街に、目的のエミソヤのダンジョンはあるそうなので、少なくとも到着までにあと5日はかかるんじゃないだろうか?
残りポイント:54726
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