04:野営の翌朝
その日は久々に、夜の見張りをすることになった。
オレは寒さをしのぐために、鉄のゴーレムを出して、その中で毛布にくるまった。
その中は温かく、段々と眠気がさしてくる。
ふと右側に目をやるとコロンは慣れたもので、木にもたれかかったままで、お気に入りの鉄の槍を抱えていた。
オレたちの見張りの順番は最後なので、まだ暗いうちの早朝になる。
しばらくすると徐々に夜が明けて、辺り一面が朝焼け色に変わっていく。
そのうちに鳥が鳴きだして、次々と野営のメンバーが目を覚まし、夜を明かした馬車から出てくる。
「おはよう!」
「ああ・・おはよ・・」「ようコロン・・・」
コロンが皆に挨拶をするが、皆反応がいまいちだ。
昨夜のことがあってか、コロンに対する皆の態度が少し冷たいのだろう。
食べ物の恨みは怖いというし、ここはこの空気を少しでも良くするためにも、何かする必要があるかもしれない。
昨日炊いたご飯は、残り少ないので譲れないが、朝食の後に何か用意してもいいかもしれない。
オレはもしゃもしゃと残りご飯で作ったおにぎりに、小さな口でかぶり付きながら色々と思案した。
現在オレとコロンは、領地に視察にやってくると思われる王族から身を隠すため、冒険者パーティー希望の盾とともに、エミソヤのダンジョンを目指している。
今いる場所はその途中で、一晩寝るために立ちよった野営地だ。
「よし! これにしよう!」
オレは思いつくとすぐに家の中に入り、あるものを通販ショップで購入した。
駄菓子詰め合わせ1000円。
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駄菓子なら安いし、この異世界では甘味などのお菓子は高級品なので、多少喜ばれるだろう。
「なんだそのお菓子のアーティファクトの山は!?」
家に入ってきたコロンに、駄菓子がさっそく見つかってしまう。
「これはこれからお世話になる、希望の盾の人たちにあげる贈答用の物だよ。コロンにはほら、これ上げるから・・・」
オレはコロンにコーラグミを渡すと、良さそうな駄菓子を数個出して、あとは鞄にしまいこんだ。
「これはなんだヨッシー?」
「魚の干し肉です。これからお世話になるのでお裾分けです」
オレはまずリーダーのオベールさんに、かば焼きくんを渡した。
かば焼きくんは干した薄い魚肉に、かば焼きのタレを付けた物だ。
オベールさんは甘いのが嫌いなようなので、渡すならこれがいいだろう。
「ライザさんはこれをどうぞ」
「なんだいこれは? アーティファクトのようだけど?」
「お菓子です。その袋を破いて中を出してください。袋は後で回収しますので・・・」
あの目立ちそうな袋は、後で回収した方がいいだろう。
甘党なライザさんにはチョコクッキーを渡しておく。
「ボクにはないの?」
お菓子を配っているとレティーくんが声をかけてきた。
「安物のお菓子ですが、これなんかどうです?」
オレはレティーくんに、マシュマロ棒を渡した。
「どうやって食べるの?」
「こうやって袋を破いて、中身を食べるんです」
オレはレティーくんが持っている、マシュマロ棒の袋を破き、マシュマロを出してレティーくんの方に向けた。
「何これ甘い! それにこんな食感初めてだよ!」
「ほんとだ! こっちもめちゃくちゃ甘いよ!」
レティーくんがマシュマロにかぶり付くと、同時にライザさんもチョコクッキーを食べ始めた。
「こりゃあ随分と上等な干し肉じゃねえか? 良かったのかこんなものくれて?」
どうやらこの世界の基準ではかば焼きくんは、上等な干し肉に分類されるようだ。
どのあたりが上等なのかはよくわからないが・・・・。
「あっしにもくれ!?」
「俺にもだ!!」
「俺も・・・・」
すると残りの三人も駄菓子を強請りに来たので、適当にスナック棒とか、選んだのを渡しておく。
オレはどれにしよう? ビタミンカルシウム? 体に良さそうだからこれにしよう。
「くちゃくちゃ・・・」
へ~・・・グレープフルーツ味のゼリーなんだね。
「ヨッシー! さっきのもう一つくれ!」
コロンが先ほど渡したコーラグミを、再び強請ってくる。
「残りは鞄の中にあるから、また旅の途中にでも配るよ」
「ええ!? さっきのまだあるの!?」
「「くれ!!」」
次々と手が出てきて、オレに駄菓子を強請ってくる。
駄菓子程度でもこの世界の人たちには、刺激が強すぎただろうか?
「ほら全員出発だ! 準備しろ!」
するとオベールさんの号令で、全員が駄菓子を諦め、しぶしぶ旅の準備を始める。
ちょっとヘイトを買ってしまったが、これでコロンへの風当たりも、少しは良くなるだろう。
そして次の野営地でも一晩明かし、出発して三日後の夕方に、その日の宿泊先であるテゼルー村が見えて来た。
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