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03:野営で牛丼

 オレとコロンは冒険者パーティーの希望の盾のメンバーとともに、その日の昼頃にはラベナイの街を出発し、街道に沿って馬車を走らせていた。

 目的地であるエミソヤのダンジョンに行くためには、まずはエミソヤの街に行く必要があるのだ。

 そのエミソヤの街はギーハテケナ領の北に隣接している領地、カミクラム領にあり、そこへたどり着くまでには少なくとも二つの地点を経由する必要があるのだ。

 

 最初にテゼルー村に向かい、その後ジュデロゾの街を目指す。

 ジュデロゾの街を抜けるとようやくエミソヤの街に到着するのだ。


 そして現在目指しているテゼルー村までは二日もかかるため、それまでは野営地で夜を明かすことになる。


 道中、レティーくんに教わりながら、初めて馬車の御者に挑戦してみた。



「あ、そんな感じ・・・。でももう少し肩の力を抜かないと、途中で疲れちゃうよ」


「了解!」



 レティーくんの教え方は、優しく丁寧だ。

 コロンはそんなオレたちの後ろから、オレの御者の様子を観察している。


 どうやら今回のメンバーで、御者の経験がないのはオレだけのようで、オレが御者を覚えた後は、交代で御者を引き継いでいくのだ。



 ガタンガタン!


「うお!」



 馬車はガタガタと揺れて、乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。

 それはクッションの上に座っていてもけっこう伝わるレベルだ。


 なのでオレのクッションは、スマホの操作により、少し浮遊しているのは秘密だ。







「今夜はこの野営地で野営を行う!」



 オベールさんがそう皆に告げると、馬車は野営地に入っていく。


 まだ空は明るいが、だいぶん太陽が西に傾いているようだ。

 この世界の太陽も、東から登り、西へ沈んでいくのだ。


 まだ明るいうちに野営の準備を始め、夕食後はすぐに眠りにつくようだ。



「今回は急な出発だったが、ヨッシーとコロンは食料の準備はあるのか?」



 準備する食料といえば、旅の間に遭遇する魔物か、それがなければ干し肉などになる。

 今回は魔物とは遭遇しなかったので、希望の盾のメンバーは干し肉と水で済ませるつもりだろう。



「オレは収納魔法に、色々と食料をため込んでいるので・・・」



 まあ収納魔法は口実で、実はスマホを使い通販ショップで買っているのだが、それは秘密なので言わない。

 オレとコロンはスマホから出した、例の小さな家に入り、その中で何を食べるかを相談する。



「肉だ!」


「まあそうだよね。コロンは・・・」



 今のオレは電池残量と交換にポイントも稼げるので、気楽にポイントを使える。

 今日はまだ残り電池残量にかなりの余裕があるので、3000ポイントくらいは補充できる。



 残りポイント:58284



 コロンは肉一択なので、まずは通販ショップで手ごろな肉を探してみる。


 最初に検索してヒットしたのが・・・。


 高級牛肉焼肉セット800グラム13980円・・・これはない。

 確かに美味いだろうが値段が高すぎる。

 それに解凍するなら今からだと時間もかかる。

 


「やはりこんな時はインスタントに限る・・・」


「あ! さっきの美味そうだったのに!!」



 コロンはそう言うが、スルーしてインスタントから良い物を探す。

 するとこんな物を見つけた。


 有名店牛丼の具100グラム398・・・・。

 お手頃なのはこんなところだろう。

 オレ用に一つ、コロン用に二つ購入っと・・・。



 残りポイント:57090


 

 丼物ならお米を買う。

 ブランド米 900g九州産お試し800円。

 安・・・これにしよう。



 残りポイント:56190



 ドサドサ・・!


「おお!! お米だ!!」



 そして何事もなかったように外に出ると、外ですでに焚火の用意がされていた。



「この焚火の上で鍋を温めたいんですけどいいですか?」



 すでに干し肉を食べ始めていたオベールさんにそう頼んでみる。



「ああ。別に構わんが・・・」



 許可がでたので、愛用のバーベキュー用ハンゴーに水とご飯を入れて、上から吊るして焚火の上にセットする。


 さらにその横には鍋を置き、凍った状態で袋に入った牛丼の具を三袋入れて湯煎しておく。



「変わった鍋だな? 何を作る気だ?」



 すると気になったのかオベールさんが、俺の作業をのぞき込んできた。



「今夜は牛丼にしようかと思いまして・・・」


「ん? ギュウドン? どんな料理だ?」



 まあ牛丼はこの国には無いし、牛丼では通じないだろう。



「蒸したお米という穀物に、タレで煮込んだ肉をのせるんです」


「ほう? それは美味いのか?」


「あまり量がありませんので、お分けするのは難しいですが・・・」

 


 あまりたかられても困るので、簡単な言い訳をしておく。 





「おお! お米できてる!」



 そしてついにお米が炊き上がる。


 どんぶりにお米をよそって、湯煎で解凍した具をのせれば完成だ。

 

 そこには大盛と小盛の牛丼が、美味しそうに並んでいた。



「「いただきま~す!!」」


「いくらなら売ってくれる?」



 オレたちが牛丼をかき込み始めると、オベールさんが片手に食べかけの干し肉を握りしめながら、そう尋ねてきた。

 見ると希望の盾の他のメンバーも、よだれを垂らしながらこちらを見ていた。


 これは断ると、後でろくでもないことになりそうだ。

 食べ物の恨みは怖いからね。



「はあ~。さきほども言いましたように、数に限りがありますので、お一人様オレの食べている小盛までで、お願いします。値段は銀貨二枚で、それ以上はまかりません」



 銀貨二枚とは前世価格で2000円くらいだ。

 牛丼の小盛でこの高額ならば、数人は諦めてくれるだろう。



「全員金を払うそうだ。作ってくれ」


 

 しかしオレのその考えは甘かった。

 前世では一杯400円ほどの牛丼が、一杯2000円の高額。

 しかも小盛であっても、彼らには安い買い物のようだ。


 この異世界で目の前の牛丼に、どれほどの価値がつくかは知らないが、もしかしたらオレが思っているよりもずっと高いのかもしれない。


 仕方ないので牛丼の具398円三袋を、追加で購入する。



 残りポイント:55896



「美味い!! 何だこれは!?」


「どこかの高級料理店と遜色しない味よこれ!!」


「高価な砂糖や、調味料をこんなに入れて・・・」


「この穀物は初めて食べるが、癖になる美味しさだな!」


「うむ・・・美味いな・・・」


「お代わりが食えねえのが逆につらいな~!!」



 皆には牛丼は好評のようだ。

 ベルトランなんかはあっという完食して、涙目になっている。



「ヨッシーお代わり!」



 そんな空気をよむこともなく、コロンが大盛二杯目をお代わりする。



「ちくしょ~! コロンめ!」


「ヨッシーを独占しやがって!!」



 彼らは抗議の声を上げるが、コロンはオレの家族みたいなものだし仕方がない。

 オレは二杯目の牛丼大盛を、コロンによそってあげた。


 その後ご飯だけの追加で大盛二杯食べたコロンは、ようやく胃も落ち着いたようだ。



 残りポイント:55896



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

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 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

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