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02:慌ただしい出発

 あれから二ヶ月が経った。

 オレとコロンは、あれからも決まった住処を持たず、ブラハムさんの屋敷と、トムおじさんの屋敷にお世話になったり、時には宿に泊まったりしていた。


 変わったことと言えばスマホのスキルマーケットから仕事が来ていて、20000ポイントも増えたことだろうか。



 残りポイント:43434



 またいつの間にか、スマホの電池残量をポイントに変える機能が加わっていたことに気づいたのだ。


 この機能はスマホの電池残量を1パーセントにつぎ、200ポイント増やすというものだ。


 だがスマホの電池残量はオレの生命線でもあるので、ポイントに変えるのは、寝る前にスマホの電池残量に余裕がある時だけにしている。


 まああれからも通販ショップで色々と買い物もしたので、ポイントもそれなりに減っているのだが。



 残りポイント:55284



 「よく来たなヨッシーにコロン。」



 オレとコロンはその日、トムおじさんの呼び出しを受けていた。


 案内された執務室に入ると、冒険者パーティーの希望の盾のメンバーの、リーダーのオベールさんと、レティーくんが来ていた。


 

「丁度依頼に関する話をしていたところだ。

 今回お前達にも、希望の盾と一緒にこの依頼に参加してもらおうと思ってな」



 リーダーのオベールさんはともかく、なぜレティーくんまでここにいるかは気になるが、オレ達もさっそくその依頼の内容を聞くことにする。



「依頼内容は、エミソヤのダンジョンにいる魔物の、スレイプニールのテイムだ。

 少し遠出になるが、ヨッシーとコロンには問題はないか?」



 スレイプニールと言えば、八本足で巨大な馬の魔物であったと、オレの記憶にはある。そんな馬がいるなら、一度見てみたい気もする。

 だがその依頼には問題もある。



「遠出にはオレもコロンも問題ありません。でも依頼内容はわかりましたけど、そのスレイプニールとかいう魔馬は、どうやってテイムするんですか?」



 オレはトムおじさんの依頼内容の、テイムという部分がひっかかったのだ。

 テイムとは言葉そのままの、魔物の従魔化ということだろう。


 だがテイムするにしても、そんな魔法は今までに聞いたこともないし、テイムの方法もわからない。



「それならそこのレティーが、テイムのスキルを持っているから、そのスキルでスレイプニールをテイムしてもらおうと思っているんだ」



 トムおじさんはレティーくんを指し示しながらそう言った。


 なんとレティーくんは、テイムのスキルを持っているようだ。

 ならレティーくんは、テイマーなのだろうか?

 それにしては周囲に魔物や動物を侍らしていないようだが・・・?



「ボクはテイムに自信がなくてね。今までテイムをしたことがないんだ。だけど伝承になぞらえば、ボクのスキルがあれば、魔物一体くらいならテイムできると思っているんだ」



 もしテイムの限界が、魔物一体ならば、テイムを使うにもいままでためらいがあったのはわかる。

 だがそれで本当にテイムなど出来るのだろうか?

 そのテイム自体が本当に伝説上のスキルでしかった場合、この依頼は失敗に終わるだろう。



「あのなあヨッシー。実はこの依頼は、お前のためのものでもあるんだ」



 オレの表情から思考を読んだのか、トムおじさんはそんなことを言ってきた。


 この依頼がオレのための依頼だって?



「実はこの街には三日後に、第一王子が視察に来ることになっているんだ。だが第一王子とこの領地では面識がなく、特に肩入れしているわけでもない。そんな領地に第一王子が来るなど、よっぽどのことだ。だが第一王子は、二ヶ月前にお前を連れて行こうとしていた例の騎士の貴族家には、色々とかかわりがあるんだ。怪しいと思わないかヨッシー?」



 つまりトムおじさんの言いたいのは、オレを無理やり連れて行こうとしていた領地の領主と、第一王子とがかかわりを持っていて、オレの存在を知っている可能性があるということか?


 そしてその王子も、オレを自分に仕えさせるために、この街にやってくると?

 まあその王子の評判が悪いのはオレも知っているし、かかわりたくないのは確かだ。


 この依頼の失敗の有無にかかわらず、理由をつくって高跳び出来るのは正直助かる。



「えっと・・・。その依頼に失敗した場合の違約金などはどうなっていますか?」



 冒険者は依頼に失敗した場合、違約金が発生する場合があるのだ。

 オレはその内容について、とりあえず尋ねてみた。



「冒険者ギルドに依頼した内容は、あくまでエミソヤのダンジョンの探索のみとしている。気になるなら適当な出土品でも持ってくるがいい」


 

 トムおじさんは面倒くさそうにそう説明してくれた。

 


「えっと・・・。それってトムおじさんになんのメリットもないんじゃあ?」



 冒険者をどこかに派遣するなら、遠征費用などが発生するのだ。

 その費用は大概依頼者が支払うことになっているために、もし価値のない出土品しか出なかった場合、トムおじさんは損をすることになるのだ。



「いや。メリットならある。詳しくは話せんが、この国にかかわることで、私が助かることはある。とにかくこの依頼さえ引き受けてくれれば、私は助かるがな」



 なるほど。これは国の機密にかかわることなのだろう。

 まあオレとその機密が、どうかかわってくるかは、全然理解できないが。



「では出発は明日か・・・明後日で?」


「いや。今すぐに発ってくれ」


「え?」



 今すぐに発てって、それは何が何でも急ではないだろうか?


 まあオレの持ち物なんて、背負っているリュックの中身と、服が数着くらいだ。

 すぐに出ろと言われても、出れないことはない。


 通販ショップの存在もあるので、スマホさえあれば特に準備するものも、ないかもしれない。

 


「あの王子はなかなかに狡猾と聞く。

 もしかしたら三日後と思わせておいて、明日にでも、へたしたら今夜にでもやってくる可能性は十分にあるのだ」



 なるほど。今夜に突然やって来られて、知らないうちに見つかったらどうなるかわからない。

 とりあえず街の外に出ておくに越したことはないのだろう。


 そんなわけで、オレとコロンは急いで準備を整え、待ち合わせ場所である冒険者ギルドへと向かった。

 そしてその日のうちに、冒険者パーティーの希望の盾とともに街を後にしたのだ。



 残りポイント:55284



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― 新着の感想 ―
[一言] あぁレティーくんってそういう。 チンピラにもビビっちゃう王女様が王位についた所で、貴族の言いなりにしかならんだろうし、どっちがマシか悩み所よね。
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