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01:パーシヴァル伯爵の陰謀

 第三人称視点~



「このバカ息子が!! 小娘一人連れて来れんとはどういうことだ!?」



 ブライトウェル・ド・パーシヴァル伯爵は、目の前でかしずく青年に激高する。


 ここはパーシヴァル領の領都バルディにあるパーシヴァル伯爵の屋敷の執務室である。

 パーシヴァル伯爵は太って腹の出た、ちょび髭を生やした、派手な貴族服を着た男だ。


 目の前ではその三男のグレゴワールがかしずき、その後ろにはグレゴワールにいつもついて回っている騎士が三人、同じくかしずいている。


 パーシヴァル伯爵は、バートム伯爵から身受けし、帰還してきたグレゴワールを叱りつけ、激高していたのだ。



「しかし父上・・・! あの娘は予想以上に狡猾で、強大な魔術師です!」



 グレゴワールがそんな父親、パーシヴァル伯爵に申し開きをする。



「黙れ! この私が、あの生意気なバートムに頭を下げ、迷惑料と称して、違約金まで支払わされたのだぞ!」



 パーシヴァル伯爵は息子グレゴワールの身柄と引き換えに、領地に迷惑をかけたとして、違約金を支払わされていたのだ。


 実際に頭など下げてはいないが、小言や文句を言われ、何も言い返せなかったのが、腹に据えかねているのは確かだ。


 今もその様子をあれこれと思い出し、わなわなと、怒りに打ち震えていた。



「あのバートムは人心を掴むのが上手い。すでに例の娘も、上手く傀儡にでも仕立て上げているのだろう・・・」



 パーシヴァル伯爵は、憎々し気にそう呟いた。

 それはバートム伯爵の人徳のなせる業なのだが、この欲にまみれたパーシヴァル伯爵が、そう思いいたることはないだろう。



「くそ! なんとかあの生意気なバートムに仕返ししてやらんと気が済まん!」


 ガシャン!!



 パーシヴァル伯爵は激高し、椅子を蹴り飛ばしながらそう叫んだ。



「ならば再び第一王子に助勢を求められてはいかがでしょうか?」



 すると後ろにひかえていた執事が、そう耳打ちする。



「ふむ・・・。あの方にまた借りを作ってしまうのもな・・・」



 第一王子は現在最も次期国王の座に近い人物だが、貪欲で、悪い噂の絶えない人物でもあった。

 パーシヴァル伯爵はその第一王子派で、色々と陰謀にも手を貸していた。



「では例の娘のことを、王子に伝えてはどうでしょうか?」


「馬鹿者! それではあの娘が、王子に取られて・・・いや待てよ・・・。あのバートムから、あの娘を王子が取り上げれば、バートムはさぞ悔しがるだろうな?」



 そしてパーシヴァル伯爵は下卑た笑みを浮かべつつ、色々とバートム伯爵を陥れるための暗躍を企てるのであった。





「ほう? 強大で幼い魔術師とな・・・」



 ここは王都にある、王宮の第一王子アルベリヒ・ルエパラの私室である。

 そこに報告にやってきたのは、例のパーシヴァル伯爵の遣いの者の報告を受けた、王子の取り巻きの一人であった。



「はい。現在ギーハテケナ領の、ラベナイの街におるそうです」



 アルベリヒ王子の取り巻きは、そう王子に報告する。



「あそこには確か、レーティシア王女も匿われているという噂だな?」



 レーティシア王女も次期国王候補の一人であったが、何者かの暗殺から逃れるために、何処かに落ちのび、生き延びているという話だ。

 


「一度視察に訪れてみるのもいいかもしれぬな?」



 アルベリヒ王子は、下卑た笑みを浮かべつつそう呟いた。

 

 かくしてヨッシーを取り巻く陰謀が、再び巻き起ころうとしていた。





「何? 第一王子アルベリヒ・ルエパラ様が、このギーハテケナ領の視察だと?」



 王宮から送られてきた手紙を読み終えたバートム伯爵は、そう言って疑問符を浮かべる。

 その手紙は今朝方、バートム伯爵の屋敷に届けられたものだ。

 その手紙には仰々しく、王家の紋章の封蝋が押され、その手紙が王家からの物であることを主張していた。



「どういうつもりであろうか? 我がギーハテケナ領は、王族同士の争いにはかかわらず、中立を貫くと言ってあるはずなのだがな・・・」



 現在国王は病で床に臥せっており、王族同士の跡目争いの真っ最中であった。

 その中でも最も有力なのが、第一王子アルベリヒ・ルエパラだ。


 中立であるギーハテケナ領に、アルベリヒ王子が訪れる理由がまずないのだ。


 そのアルベリヒ王子には黒い噂が絶えず、性格にも問題があるといわれているために、国民には人望のあるレーティシア王女を推す声が多い。


 だが彼女も現在暗殺から逃れるために、王宮から姿をくらませており、その行方はつかめてはいないようだ。



「ヨッシーのことが耳に入ったかあるいは・・・王女の行方が王子の耳に入ったかのどちらかか? いずれにせよヨッシーと王女が、アルベリヒ王子の目に触れぬようにせねばならないな・・・」



 そんなことを考えつつ、執務室の窓から、幼い娘の部屋をのぞき込む。

 その部屋には笑顔で娘と戯れる、ヨッシーの姿があった。


 

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