17:決着とその後・・・
第三者視点~
「はあ? なんだと? パーシヴァルの息子を、閉じ込めただと?」
バートム・ド・ギーハテケナ伯爵は、冒険者の報告を聞いて、呆れた様子でそう返した。
冒険者希望の盾のリーダー、オベールは、領主であるバートム伯爵に信頼される冒険者の一人であった。
「はい。ヨッシーが土魔法で砦のような囲いを造り、襲撃してきた騎士4名をはじめ、冒険者20名を、その中に閉じ込めたのです。その騎士の中に、グレゴワール・ド・パーシヴァルの姿がありました」
バートム伯爵が執務室にいたところ、冒険者オベールが、そう報告をしに来たのだ。
「あの娘ならそれくらいはやると思っていたが、直に聞くと、驚きすぎて言葉も出んな・・・」
そう言いつつバートム伯爵は、あの小さな銀髪の少女を、思い浮かべる。
「わかった。兵を率いて、直ちにその場所へ向かおう」
少し思案した後にそう答えると、バートム伯爵は直ちに準備を整え、兵を50人ほど引き連れて、例の森にある野営地へと向かった。
ヨッシー視点~
「お~い! トムおじさ~ん!」
森の奥の方から、野営地に向かう集団の中に、トムおじさんを発見したオレは、手を振りながらそう声をかけた。
現在この場には、報告に行ったオベールさんを除き、オレとコロンと希望の盾のメンバーが全員集合していた。
そしてオレの後ろにそびえる塀の向こうには、今も襲撃してきた騎士と、粗暴な冒険者達が閉じ込めてある。
「近くで見ると壮観だな。こんな砦いつの間に建てたのだ?」
トムおじさんは、馬に跨りながら、オレの傍に来るとそう尋ねてきた。
「昨日土魔法でちょっとね」
とりあえずスマホのことは秘密なので、土魔法でごまかしておく。
「ちょっとの程度ではないぞこれは?」
トムおじさんは呆れたような表情で、その塀を見上げた。
「とりあえず中にいる者達を捕らえるから、門を開けてくれ」
どうやら騎士と粗暴な冒険者が襲撃に来た件は、トムおじさんの耳に入っているようだ。
襲撃に来た奴らを捕らえるために、これだけの兵士を連れてきたのだろう。
「開け~ゴマ!」
ゴゴゴゴ・・・
オレが門の前に行きそう唱えると、その巨大な石門が、引きずられるような音を立てながら、左右に開いていく。
「おかしな呪文だな? なぜ呪文のなかに南部特産の作物の名前があるんだ?」
「ゴマは料理の風味付けには最適ですよね!」
オレはトムおじさんのその質問に、笑顔でそう返した。
ゴマはどうやら、この世界では南部地域で採れる特産品のようだ。
「この囲いの中の者達を、全員捕らえよ!」
「「はっ!!」」
トムおじさんがそう命じると、兵士達が一斉に門の中へ押し入り、粗暴な冒険者や、騎士たちを縛り上げていった。
「確かグレゴワールといったな? まさか冒険者が野営のために建てた建物に押し入るとはな」
トムおじさんは、縛り上げられ引っ立てられてきた、グレゴワールとよばれる偉そうな騎士にそう言った。
「俺は押し入ってなどいない! 不法に占拠された野営地に入っただけだ!」
トムおじさんのその言葉に、グレゴワールが激高しながらそう返す。
今度は不法に占拠された野営地ときたか・・・。
「おいヨッシー。このグレゴワールが建物に押し入った時の様子を教えてくれ」
「わかりました」
オレはトムおじさんにそう聞かれ、矢で射られたこと、オレを捕らえようと、冒険者に命じて襲い掛かってきたことを、詳しく話して聞かせた。
「やはり無理やりにパーシヴァル領に連れ去ろうとしていたのか・・・」
「くっ! こんな真似をして、親父がただでは済まさないぞ・・・」
グレゴワールがトムおじさんを睨みつける。
「そこの冒険者クラン、レッドバジリスクのメンバーにも色々と余罪の報告がある。その他領からの襲撃者とともに、全員引っ立て、その余罪についても詳しく調査せよ!」
どうやら粗暴な冒険者たちは、黒い噂の絶えない例の冒険者クラン、レッドバジリスクのメンバーだったようだ。
騎士や粗暴な冒険者たちは、次々と兵士に引っ立てられ、街の方へと連行されていった。
「ところでこの砦だが・・・」
「あ、すいません! すぐに片付けますから!」
オレはトムおじさんがそう言いかけると、すぐさまその巨大な石の囲いを、スマホの中に収納して、ファイル化した。
「お前とんでもない収納魔法を使うな?」
それを見たトムおじさんは、呆れながらそう言った。
どうやらオレのスマホの収納力は、とんでもない物のようだ。
オレたちはそのまま一緒に街に戻り、その日はトムおじさんの屋敷に、泊まることとなった。
その後グレゴワールと三人の騎士は、パーシヴァル領に引き渡された。
騎士たちは罪を犯したものの、未遂に終わっているので、あまり重い罪に問うことは出来ず、領に送還するのが妥当な処置であるという。
レッドバジリスクについては、その多くのメンバーが、殺人や窃盗などに加担していることが明らかになり、長期間の重労働を課せられたり、処刑となったようだ。
しかしこのギーハテケナ領にいるレッドバジリスクはほんの一部で、その多くがパーシヴァル領で活動中なのだそうだ。
彼らはパーシヴァル伯爵の子飼いの暗殺者という噂もあり、油断できないクランでもある。
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