表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/180

14:迫りくる他領の騎士


「大変だ! 例の騎士がこちらへ来るぞ!」



 翌朝になると、けたたましく叫びながら、冒険者らしき男が、そう野営地に伝えてきた。

 

 現在オレとコロンは、オベールさん率いる希望の盾のメンバーとともに、オレを探しに来たという他領の騎士から身を隠すために、森の中の野営地にいたのだ。



「ちっ! 奴らなんでこの場所がわかった?」



 オベールさんが野営地に、オレが設置した塀から出て、冒険者に対応する。

 どうやらその冒険者は、希望の盾のパーティーメンバーの1人のようだ。



「例のいけすかねえ冒険者どもが、騎士を先導していやがる!

 奴らの中には獣人もいて、どうやらヨッシーのにおいを覚えちまっているようだ!」


「そいつはやっかいだな・・・。で、その人数は?」


「20とちょっとだ!」


「この街にいるクランの四分の一もいねえようだな? いきなりのことで、対応にもたついているのかもしれねえ・・・」



 会話の内容からすると、どうやらオレのにおいを嗅ぎつけた、他領の騎士に味方する冒険者達が、20人ほどでその騎士を先導してきているみたいだ。



「ここが見つかっちゃたんですね、オベールさん」



 オレは朝食を中断して、開け放たれた門から顔を出す。



「おう。ヨッシーか。さっそく逃げる支度をしねえとな?」


「その必要はないんじゃないですか?」



 オベールさんはここから逃げる算段を立てているようだが、オレには別の考えがあった。





「皆集まれ! この野営地が奴らに見つかった! 冒険者も20人ばっかし味方につけているようだ!」



 オベールさんは塀の中に戻ると、皆に集合をかける。

 丁度皆朝食も終わり、くつろいでいるところだった。

 オレも早く手元にある硬いパンを、食べつくさないといけない。


 むぐむぐ・・・硬い・・・



「それじゃあすぐに逃げる支度を・・・!?」


「ちょっとまて・・・」



 ライザさんがその声に反応してすぐに動こうとするが、オベールさんが、その行動を手で静止する。



「皆聞け! ヨッシーに考えがあるそうだ!」



 オベールさんがそう言うと、いまだにパンをむぐむぐやっているオレに、皆の目が注目する。



「むぐむぐ・・・。奴らをこの塀の中に誘い込んで、閉じ込めようと思います」



 オレの設置したこの塀は高さが10メートルはあり、なおかつ厚さが1メートルと堅牢だ。

 この中に奴らを閉じ込めてしまえば、どんなに人数が多かろうが、手も足も出ないだろう。



「ほう? どうやって奴らを中に引き込むつもりだ?」



 オベールさんが、その作戦の詳細を尋ねてくる。



「むぐむぐ・・・。オレとコロンが奴らの相手をしますよ。その間に貴方たちは、裏の隠し扉から逃げてください。ひらけ~裏のゴマ!」


 ズズズ・・・



 オレがそう唱えると、裏の隠し扉が、音を立てて開いた。



「ほう? こんなところにも扉を隠していたのか?」



 オベールさんは感心したように、その扉を見回している。



「でも他領の騎士をここへ閉じ込めたりして平気かしら?」



 ライザさんの懸念しているのは、他領の騎士を閉じ込めて、犯罪行為あたらないかということだろう。



「こちらに正当防衛を主張する大義名分があれば、閉じ込めても問題はないはずだ」



 ほうほう・・・なるほど・・・。



「じゃあオレが野営地に建てたこの建物を、騎士たちが攻撃したらどうなります?」



 オレは巨大な石の塀を指し示しながらそう言った。



「ん~・・・? これなら寝床を急に攻撃されたと、主張することも出来るかもしれんな? だが貴族は狡賢いからな。後で事実を捻じ曲げたりもしてくるぞ?」



 いくら正当防衛が成立しても、あとで無礼討ちだったとか言われれば、どうねるかわからないね。さらに先に攻撃したのが、こちらなどと言われては目も当てられない。



「ま・・・大丈夫じゃないですか?」


「それはなぜだ?」


「閉じ込めた証拠は、残りませんから。むぐむぐ・・・」


 

 オレがそう言うと、オベールさんはなぜか遠い目で、明後日の方向を見ていた。





「騎士がやってくるぞ!!」



 けたたましく声を上げながら、二人の冒険者がオレの建てた塀の中へ駈け込んで来た。

 オベールさんによると、駈け込んできた二人の冒険者は希望の盾のメンバーで、今まで他領の騎士の様子を見張っていてくれたようだ。


 オレもあの二人なら、数日前の模擬戦で目にしている。

 確か斥候のカンタンさんと、魔法戦士のイスマエルさんだ。



「閉じよ~ごま!」


 ゴゴゴゴ・・・



 二人の冒険者が中に入ると、オレは呪文を唱えて正面の門の扉を閉じる。


 ちなみにすでに野営地に設置したドーム状の建物や、トイレは回収済みである。

 現在塀の内側は、広々として閑散としている。


 

「ん~・・・どれどれ?」



 オレは木の板に乗ると、それをエレベーターのように浮上させて、十メートルの高さから、塀の外の様子を窺う。



「ヨッシー! 外の様子はどうだ!?」



 下の方からオベールさんが、オレの見た様子を尋ねてくる。



「お? もしかしてあれかな?」



 オレが遠くを眺めていると、走る大勢の冒険者の後ろに、馬に跨る騎士が数人いるのが見えた。



 残りポイント:23434



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。

 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

 感想、レビューもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ