13:森の野営地
第三人称視点~
そのころパーシヴァル領からやって来た四人の騎士は、街の中を駆けずり回り、ヨッシーの所在を探していた。
「ちくしょう! 見つからねえ!」
「いったい何処に隠れておるのでしょうか?」
しかしいくら探せど、その足取りは一向につかめずにいたのだ。
「旦那。少し良いですかい?」
すると彼らの前に数人の怪しげな風貌の冒険者が姿を現した。
「なんだ貴様ら!? この方を何方と心得る!」
瞬時に騎士の一人が、副団長グレゴワールをかばいつつ前に出ていく。
「俺達はクラン、レッドバジリスクの一員ですよ」
「ほう? 貴様らはあの・・・・」
冒険者がクラン名を名乗ると、途端にグレゴワールが笑みを浮かべる。
「ヨッシーの居場所でしたら、よく存じておりますよ・・・」
「ならばすぐに案内せよ」
「かしこまりましてございます・・・・」
冒険者は一度かしずいた後に、仲間の冒険者たちに向き直ると、色々と指示を出し始める。
「グレゴワール様・・・こ奴らは?」
「詳しくは話せぬが、パーシヴァル家のために、裏でいろいろと動いてくれている連中だ」
グレゴワールは下卑た笑みを浮かべつつ、尋ねてきた部下にそう答えた。
ヨッシー視点~
「すいませんね。解体まで手伝ってもらっちゃって・・・・」
現在オレ達は、冒険者四人に案内されて野営地にやって来た。
そしてついでということで、先ほど狩ったフォベロドンの解体を手伝ってもらっているのだ。
「問題ない。この獲物は君らが獲ったのだろ?
ここでしばらく食料とさせていただく以上、解体くらいはさせてもらわねばこちらこそ申し訳が立たない」
三頭のフォベロドンは、ここで野営をしながらこもっている間の、食料にすることに決めているのだ。
フォベロドンが三頭もいれば、相当な量の肉が取れるので、かなり長い間この野営地にこもれるだろう。
「でももしもということがありますよね?」
その野営地は平野になっており、森の木々に囲まれている感じだ。
草はよく刈りこんであり、野営地にはうってつけなのだろう。
だがこれでは騎士に見つかった時に、簡単に接近をゆるしてしまうだろう。
ドドド~ン!
「なに!?」「むう!?」
ライザさんとオベールさんがその音に反応するが、これは別に敵の襲撃を受けたわけではない。
オレがスマホを使い、野営地のオレたちがいる場所に、周囲を囲う十メートルほどの高さの塀を設置したのだ。
その塀は石で造ってあり、結構丈夫な感じだ。
溝一つないので、登りにくいことこの上ないだろう。
「おい。この門はどうやって開ける。とても人の力では動かせないほど巨大だぞ?」
塀の一部には入り口となる門が取り付けられており、高さ五メートルで、二メートルほどの厚さの、両サイド引き戸式となっているのだ。
オベールさんが引けど押せど、その扉はびくともしないのだ。
「ひらけ~ごま!」
ズズズ~・・・
オレが定番の呪文を唱えると、扉はあっという間に開いた。
「すごいな。その呪文一つで開くのか?」
「ところでなんでゴマなの? ゴマは南の方で取れるちょっと高価な植物よ」
知らんがな。
「とじよ~ごま!」
ズズズ~・・・
オレがそう唱えると、今度は扉は閉じてしまった。
「何というか安直な呪文ね?」
まあオレもそれは否定しない。
ちなみに裏戸も付けてあるが、今はその説明は必要あるまい。
ドン! ドン! ドン!
オレは続けて、雨除けと就寝用に、ドーム状の小さな石の家を、塀の中に三件設置した。女性もいるので、これで着替えにも苦労しないだろう。
「ヨッシー! こっちにトイレ用の建物もお願い!」
塀の隅の方を指さして、ライザさんが叫ぶ。
まあ女性は用を足しているところを見られるのは嫌だよね。
ていうかライザさん順応力高すぎ。
他の三人は、ただ唖然とした表情で、見ているだけなのに・・・
ドン!
オレは最後にトイレ用の建物を設置して、最近新たに見つけた機能、指定した場所を収納し、ファイル化する機能を使い、地面に四角い穴を空けた。
この機能は八つの座標を指定して、赤い直方体を作り、その赤い直方体の範囲をスマホに収納するという機能だ。
まあ今まで死蔵していた機能だが、使う機会があって良かったよ。
ジュ~・・・・
「わざわざ野営地で肉を薄く切るのか?」
現在日もすっかり落ちてきて、徐々に空も赤くなってきている。
スマホ時間では18時と、夕食には早い時間だが、この世界では夜は早めに寝るのが習わしだ。
そんなわけで、夕食にとさっそくフォベロドンの肉を薄切りにして、バーベキューとしゃれこんでいる。
知識の豊富なライザさんに教わり、食べられる草やキノコも採って、一緒に焼いて食べるのだ。
そこで活躍するのが焼肉のタレだ。
再び250円のものを購入して、中身を小坪に移しておいた。
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「美味え! なんだこれ!?」
「本当だ! すごく美味しいよ! それに薄くて柔らかいから食べやすい!」
レティーくんとベルトランは、さっそく肉をタレに付けて食べ始めたようだ。
「まるで貴族の食べ方ね?」
「ヨッシー。お前どこかの貴族か何かか?」
「むにむに。う~ん・・・その辺りは記憶がないので何とも言えないんですがね」
いまだにオレの幼女であった時の記憶はよみがえっていない。
なんと聞かれようが、過去のことは答えようがないのだ。
フォベロドンの肉にはくさみがあり、やはりビッグボアよりは味が落ちるようだ。
それでもこの焼肉のタレで、かなりくさみは誤魔化せている。
「うわ! このシュワシュワすごいよ! 甘くて魔力が溢れる感じ!」
そう言っているのはコーラを飲んでいるレティーくんだ。
「何この飲み物!? マナポーションか何か?」
「いえ。ただの甘い飲み物です」
ライザさんにもコーラは好評のようだ。
今回はお酒も出そうとしたのだが、野営地では何があるがわからないと、断られてしまったので、仕方なくコーラを出したのだ。
コーラは24本で2000円のものをまとめ買いした。
残りポイント:23434
そんなわけでオレたちは、その日は野営地で一夜を明かしたのだった。
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