06:レティーとベルトラン
「その杖をよこしな坊主!」
「俺達が売り払ってやるからよ~!」
オレとコロンが屋台巡りをしていると、弱々しそうな魔術師らしき少年が、悪漢二人にちょうど絡まれている現場に居合わせた。
するとコロンは瞬時に動き、悪漢一人の襟首を掴んで持ち上げる。
「ひっ! ひぃぃぃ! 何だお前は!?」
「ワタシは冒険者だ! 悪事は許さん!」
コロンは魔力で悪漢を威圧すると同時に、目を赤く光らせた。
「ひっひぃぃ! ま、魔族だやべ~!」
「か、勘弁してくれ~!!」
そう言いながら悪漢は、即座に尻尾を巻いて逃げ去って行った。
コロンの魔力の威圧は、ゴブリンやウルフが逃げ出すレベルだったからね。
目が赤く光るようになって、さらに威圧が強くなっているように感じる。
「た・・・助けてくれてありがとう。」
コロンが助けたその少年は、長い金髪を束ねており、なよなよしたような男の娘を彷彿とさせる、美しい少年だった。
青い魔術師ローブを羽織り、頭にはサークレット、杖には宝石があしらわれており、それなりに裕福な感じを受けた。
「お~い! レティー!!」
すると後方からもう一人、茶髪のガタイの大きな、皮の鎧を着た、ボサボサ髪の粗暴な感じの少年が現れた。
この二人はオレ達と同じように、パーティーを組んでいるのかもしれない。
「すまない! 思いの他苦戦した! 無事かレティー!?」
「こちらの方に助けていただきました・・・」
レティーはコロンの方を示してそう答えた。
「ま、魔族か・・・なるほど・・・友人を救ってくれてありがとう!」
何がなるほどなのかわからないが、粗暴な少年はコロンに頭を下げてお礼を言った。
「弱いものを助けるのは当然のことだ。気にするな」
「いやコロン。レティーくんが落ち込んでいるから、言い方考えようね?」
ところで彼らにいったい何があったのだろうか?
苦戦したと言っていたところを見ると、粗暴な少年も誰かと戦っていた可能性がある。
「実はあるクランに睨まれていてな。あいつらは俺達に絡んで来たそのクランの冒険者だ。俺も3人相手していたんだ。その間にレティーが襲われた」
粗暴な少年が指さす先に、道端で寝ている男が3人いるが、あれが先ほど粗暴な少年が相手していた3人なのだろう。
見ると3人とも成人した男のようだ。それを倒すということは、粗暴な少年も結構な強さなのだろう。
「えっと・・・貴方は?」
オレは粗暴な少年に名前を尋ねた。
「ああわりい。まだ名乗っていなかったな? 俺はベルトラン。冒険者だ。」
「オレはヨッシーだ」
「ワタシはコロン! 同じく冒険者だ!」
見たところ二人とも12歳くらいなので、年齢的には採取組なのだが、着ている装備が採取組とは明らかに違ちがう。
ベルトランは戦士で、レティーくんは魔術師なのかな?
二人で組んで冒険者をしているのかもしれない。
オレ達と同じように、狩りで生計を立てているのだろう。
低年齢で狩りが出来るのは、一握りの才能のある冒険者だと聞いている。
彼らもまた優秀な人材なのだろう。
「とりあえずこのことを、冒険者ギルドに報告しに行きましょう」
「あ、ああ。そうだな」
自己紹介が一通り終わると、オレ達は先ほどの出来事を報告するために、冒険者ギルドに向かった。
「おいベルトラン! 奴らにはかかわるなと、言っておいたはずだぞ!?」
冒険者ギルドに着くと、どこか紳士的な雰囲気を漂わせた、冒険者のおじさんが出てきて、いきなりベルトランを叱りつけた。
絡まれていたのはレティーくんの方に見えたが、レティーくんには何も言わないところが少し気になる。
「すみませんトムおじさん・・・! 奴らがいきなり絡んできまして・・・」
「はあ~。しばらくはオベール達の傍を離れるなよ?」
「わかりました。トムおじさん」
「で? そちらのお嬢さんがたは何方だ?」
しばらくベルトランと話した後で、トムおじさんは今度はオレ達に興味を示した。
「ああ。その角の生えているのがコロンで・・・レティーを助けてくれたんです」
「ほう? もしかして猛牛のコロンか? それでそちらが鉄腕のヨッシーかな?」
どうやらこのラベナイの街でも、オレ達のことはけっこう噂になっているようだ。
「はい。初めまして、ヨッシーです」
「コロンだ!」
オレ達は改めて自己紹介する。
「私のことはトムおじさんとでもよぶといい」
そしてお互いに握手を交わす。
「君達はここへ来て間もないだろう?
見たところ子供のようだし、それでは狩りの依頼は受けづらいだろう?」
確かにいくらCランク冒険者の資格を持っていても、子供であることを理由に、狩りに行かせてもらえない可能性もある。
「それならここのギルドマスター立ち合いのもとで、模擬戦をして力を見せるといい。相手は私が用意しよう。
おお・・・。ちょうど来たみたいだな・・・。」
トムおじさんがそう言うや否や、冒険者が四人、冒険者ギルド内に駆け込んできた。
「トムさん! レティーとベルトランは無事ですか!?」
「遅いぞお前達! その件ならもう済んだ! それよりギルド長を訓練場によこしてくれ! それからお前達も来い!」
冒険者ギルドで一番偉い、ギルド長を誰かによびつけさせるなんて・・・・。
トムおじさんはそうとう名の売れた、偉い冒険者か何かなのだろうか?
残りポイント:29812
お読みくださりありがとうございます。
面白い!
また読みたい!
と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。
いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。
感想、レビューもお待ちしております。