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05:ラベナイの街

 あれから数日後、オレ達はついにラベナイの街に到着した。


 丁度昼頃だったせいか、列はあまり出来ておらず、街へはすんなり入ることが出来た。


 街の関所を通過して中に入ると、その街はどこかクアリーの街よりも、活気があるように感じた。

 街が大きいのもあるかもしれないが、どこか人々が明るい感じを受けるのだ。


 関所近くには市場も見える。クアリーの市場よりも品ぞろえは格段に多く感じる。交易が盛んだといわれるだけはある。



「ラベナイはクアリーに比べたら租税も低く、治安もいいからね」



 ブラハムさんの話によると、街に活気があるのは、租税が低く、治安が良いからのようだ。

 このギーハテケナ領の領主は、かなり評判もいいらしい。

 領主はこの街に住んでおり、たまに出歩くこともあるようだ。



「君達はこれから住居とかはどうするんだい? 良ければうちの屋敷の部屋を貸すけど?」



 ブラハムさんはどうやらこの街にも屋敷を持っているようだ。さすがは大商人だ。



「部屋を借りるかどうかは、家賃しだいですけどね?」



 ブラハムさんの屋敷に住み着くのもいいが、オレ達にはすでに家もあるし、土地だけ借りてそこに住み着くのもありかもしれない。



「家賃は君の料理しだいかな?」



 どうやらブラハムさんは、オレの料理が目当てのようだ。少し餌付けしすぎたかもしれない。

 お菓子はあの初日だけだったけど、あれからオークの生姜焼きやら、ステーキやらを作ったからね。そのどれもが好評だった。



「君の料理はうちの子だけじゃなく、使用人達の胃袋も鷲掴みにしちゃっているからね。料理人として雇いたいくらいだよ」


「オレは冒険者ですから、料理人はちょっと・・・・」


 

 オレは冒険者の方が楽しいし、まだしばらくは狩りをしながら、コロンと生活していこうと考えている。だから料理人としては雇われる気はない。



「それは残念だ。それでは行く当てでもあるのかい?」


「行く当てはありませんが、土地など貸していただけると嬉しいです」


「なるほど・・・そうだったね。君は魔法で家を建てられるんだったね」



 オレはスマホのメタセコで造った家を、実体化することが出来るのだ。

 以前はポイントを消費する必要があったが、今ではスマホの電池残量で建てられる。

 日数をかけて少しずつ造れば、少し豪華な屋敷だって建築できるだろう。



「それでは土地の話はこれからするとして、今日はうちに泊まって行くといい。心配しなくてもお金なんて取らないから」


「そうですか・・・それでは・・・コロンどうする?」


「ああ。わるいな。ブラハムの旦那」



 コロンが同意したところで、オレ達はブラハムさんのお世話になることになった。



「それじゃあ泊まりついでで悪いんだが、これから領主様のお屋敷に到着の挨拶に行くんだが、君達にも護衛として一緒に来てほしいんだ」



 ん? ちょっと待てよ。

 オレとコロンは、その領主とやらに無理やり仕官させられそうになって、この街に来たんだ。

 ここでその領主とやらに会うのは、本末転倒ではないだろうか?

 オレはそのことを、ブラハムさんに尋ねてみた。



「そのことなら私が保証するよ。

 今から会う領主は、君達を無理やりどうこうするような人物ではないと。ちょっと変わっているが、気さくでいい男だよ」


「いいぞ!」



 コロンは即断で了承したようだ。


 まあブラハムさんも信用する人物だ。評判もいいと聞いているし、そこまで警戒することはないかもしれない。

 一度会ってみるとしますか。





 関所からしばらく中央通りをまっすぐに行くと、大きな屋敷が見えてきた。

 あれが領主のお屋敷だろう。



「申し訳ないが、領主様は今お出かけ中なんだ・・・。日を改めてくれると助かる」



 ところが領主のお屋敷に到着早々、領主は不在で、日を改めるように言われてしまった。

 もしかしたら噂通り、街にでも出かけているのかもしれない。



「しょうがないな。では取引先への挨拶周りからしていくか・・・。

 ヨッシー君とコロン君はどうする? 取引先への挨拶周りはけっこう時間がかかるから、あまりついてくるのはお勧めできないけど?」



「コロン。どうする?」


「冒険者ギルド!」



 コロンが指さす先を見ると、冒険者ギルドの建物が見えた。クアリーよりは大きく綺麗な建物だ。

 看板には冒険者ギルドと書き記してあるので、あれが冒険者ギルドであることは間違いない。



「それではオレ達は一度冒険者ギルドに顔を出してきます」


「それじゃあ後であの建物で落ち合おう」


「アベール商会?」


「あそこはうちの傘下なんだ」



 ブラハムさんが指さす方を見ると、そこには商会らしき建物が見えた。

 その看板にアベール商会と書かれていたのだ。



「それじゃあまた後で」



 オレとコロンは馬車から飛び降りると、ブラハムさんと軽く挨拶を交わす。



「ずっり~! 俺も冒険者ギルドに行きて~!」


「貴方はこっちにいなきゃ駄目よ!」



 バリーも馬車の外に出ようとするが、ローレッタさんに襟首を掴まれ、止められていた。

 不貞腐れるバリーをよそに、ローレッタさんともそのまま軽く笑顔で挨拶を交わした。



 馬車が走り去ると、オレ達は次に冒険者ギルドを目指す。





 ラベナイの街の冒険者ギルドは、昼間にもかかわらず混雑している。

 事情はよくわからないが、何か依頼の関係の混雑なのかもしれない。

 オレ達は受付の順番を待つために列に並んだ。



「あら? 見ない顔ね? 薬草採取組?」



 受付の順番が来ると、ギルド嬢にそう言われた。



「いえ。オレ達これでもCランクですので」


「え!? 嘘!? その年齢で!?」



 オレとコロンがギルド証を見せると、ギルド嬢に驚かれた。



「ブラハム商会の護衛の報酬を受け取りに来ました」


「あ、ああ。それじゃあ貴女達が例のヨッシーちゃんとコロンちゃんね?」



 例の? ギルド同士で噂でも流れているのかな?



「追加報酬についてはまた後で通達がありますが、とりあえずこれが今回の報酬になります」



 そう言うとギルド嬢は、けっこうずっしりとした感じの巾着袋を渡してきた。

 今回の依頼報酬は思った以上に上乗せされているようだ。



「あと最近素行の悪い冒険者クランが出入りしているので、お二人も絡まれないように気を付けてください」



 そしてギルド嬢は別れぎわに、何かフラグを立てて来た。


 クランとは冒険者同士の寄り集まりで、大きな冒険者のチームのようなものだ。

 素行の悪い冒険者クランとは、アウターのようなものだろうか?



「コロン、お昼はこっちで食べていく?」


「今日は屋台にする!」



 そう言うとコロンは、外を親指で指し示した。


 先ほど馬車の中で、ちらほらと見かけた串焼きなどの屋台が、気になっているのだろう。

 洞窟に住んでいた時にはお昼を食べる習慣はなかったが、最近街で屋台などを目にするようになって、オレ達にも昼食を食べる習慣がついてきた。






「その杖をよこしな坊主!」


「俺達が売り払ってやるからよ~!」



 オレとコロンが屋台巡りをしていると、先ほどのフラグのせいか、弱々しそうな魔術師らしき少年が、悪漢二人にちょうど絡まれている現場に居合わせた。



 残りポイント:29812



 お読みくださりありがとうございます。


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