03:魔物との遭遇
「この先に何かいます!」
それはオレが、アルミブランケットの上に横たわり、スマホでGPSアプリを覗き込んでいる時だった。
このスマホのGPSアプリには、どうやら魔物の位置が、赤い点で表示されるようなのだ。オレがGPSアプリで見たのは、この道の先にある赤い二つの点だった。
「この先には何も見えないけどね? 何かいるのかい?」
御者の少年の横に腰かけるブラハムさんに、そのことを伝えるが、信憑性に欠けるのか、あまり信じてくれてはいないようだ。
「たぶんオークだ!」
馬車の屋根の上に座り込んでいたコロンは、その魔物がこの距離からでも見えるようだ。魔族の視力はかなり高いのかもしれない。
「お前達、何か見えるか?」
「いえ。何も・・・」
ブラハムさんが馬車の横で、馬にまたがり警護する、使用人に確認をとるが、彼らには何も見えないようだ。
だがそうしているうちに、馬車はとうとう魔物のいる場所にたどり着いてしまった。
「オークだ!! 2体いるぞ!! 周りを囲め!!」
元冒険者なのか、一部の使用人がきびきびと指示を出して、2体のオークを囲んでいく。
「凄いね。本当に魔物がいたよ。二人の感知能力は大したものだ」
ブラハムさんがそんなオレとコロンの感知能力に驚愕する。
「な、何だ!?」
ズシャ! ドバ!
「ブギィィィィ~!!」
するとそうこうしているうちに、コロンが使用人の間をすり抜けるように駆け抜け、あっという間に2体のオークを槍で突き、倒してしまった。
そしてコロンは、赤く光る目でこちらに振り向いた。
これはコロンの新しい身体強化で、オークの変異種を倒した後から、使えるようになったらしい。
この身体強化は、使用している間に身体能力が飛躍的に向上し、目が赤く光るようなのだ。
レベルアップしてスキルを得たとか、そういった感じだろうか?
オレはいくら魔物を倒しても、レベルが上がる気配はなかったのだが・・・
「ハハハハ! 噂以上だね! コロン君は!」
その様子を見ていたブラハムさんが、コロンを称賛する。
「さすがはコロンだ!」
「その角は伊達じゃないな!?」
皆口々にコロンを褒め称えるが、角は関係ないような気がする。
「ブラハムさん。この2体の死体はどうしますか?」
オレはその2つの死体について、ブラハムさんに尋ねた。
「確か規定では、倒した獲物の権利は、倒した冒険者にあったはずだけど・・・」
ブラハムさんはそう言いつつ、コロンの方を見た。
「だってよコロン。どうするこれ?」
「解体して美味そうな部位だけ取っておこう」
しかし解体には時間がかかるし、こんな道の真ん中で解体するのは、通行人の迷惑になる。それになによりオレ達は彼らの護衛なのだ。許可もなしに寄り道など出来ない。
「解体くらいはいいが、少しご馳走してくれると嬉しいね」
さすがは商人だ。解体を許す代わりに分け前を要求してきた。
ガチャン!
「あっちのひらけた場所で解体をしよう!」
オレはアイアンアームを右手だけ起動すると、オーク1体を摘まみ上げる。そして道のわきの、ひらけた場所を指さした。
「おお! 鉄腕ヨッシー!」
すると使用人の一人がそれを見て、オレの二つ名らしき言葉を叫んだ。
そんなどこかの人型ロボットみたいな二つ名はやめてくれ。
「凄いなその腕! いったいどうなっているんだ!?」
ブラハムさんはアイアンアームに近づくと、興奮気味に撫でたり触ったりしてくる。
「あの・・・けっこうな怪力が出て危ないので、あまりそういった行為は・・・」
アイアンアームは現在、200キロはありそうなオークを摘まみ上げて稼働中だ。
ここから少し動かしただけでも、ブラハムさんを跳ね飛ばしそうで怖い。
「そ、そうだね。済まない。珍しい物を見ると、つい興奮してしまうんだ」
ブラハムさんは残念そうに、アイアンアームから距離をおいた。
オレはさらにガタクリ一号を出すと、その荷台に2体のオークを積んで、アイアンアームを消して、運転席に乗り込む。
「その乗り物は何だい!? それは魔法で浮遊させているのかい!?」
そして再びブラハムさんは、興奮気味に質問してくる。
「気になるのでしたら助手席に座ってみますか?」
オレはそんなブラハムさんに、助手席を勧めた。
「え!? いいのかい! それじゃあお言葉に甘えて、ちょっと乗せてもらおうかな!?」
「お父様狡いわ! わたくしも乗りたかったのに!」
「俺も乗りたい!!」
ブラハムさんが助手席に乗り込もうとすると、ローレッタさんとバリーも、試乗を要求してきた。
「えっと・・・荷台は現在オークでいっぱいですので、乗り込めるのは助手席のみとなります」
現在荷台はオーク2体が乗っていて、足の踏み場のない状態だ。乗り込めるのは助手席だけだろう。
「そ、それじゃあこうしよう。
そのオークを向こうで降ろした後で、3人でその乗り物に乗せてもらおう。解体は代わりにうちの使用人にやらせるから、それでいいよねヨッシー君?」
「え・・ええまあ・・・」
オレはコロンが使用人に混ざってオークの解体をしている間に、何故かガタクリ一号を使ったアトラクションをすることになってしまった。
「これはどれくらい走れるんだい? これに乗って街までは行けないのかな?」
「凄いですわよこの乗り物! いっさいの揺れも感じないわ!」
「なあ! もっと速度は出ねえのか!?」
「えっと・・・お三方。質問は一人ずつにしていただきたいのですが・・・」
ガタクリ一号に興奮する3人の対応に、少し疲れたオレだったが、無事に解体も終了して、再び馬車は動き出した。
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