02:商人の護衛依頼
「実はこれから新しく始める商売の関係でね、ギーハテケナ領の、ラベナイの街に行くことになったんだよ」
ブラハムさんの話では、ギーハテケナ領は王都に近い領地で、交易なども盛んなのだそうだ。食料品や調味料も沢山集まるようなので、今から行くのが楽しみになってくる。
現在オレとコロンは、商人のブラハムさんの護衛任務の挨拶と、話の詳細を聞くために、ブラハムさんのお屋敷に来ている。
その客席には調度品などが並べられており、豪華な造りになっている。
オレとコロンは部屋の長テーブルの席に案内され、後からやって来たブラハムさんと、娘のローレッタさん、なぜかバリーも席に着いている。
「君達の活躍は色々とフェルナンに聞いているよ」
ちなみにフェルナンとは冒険者ギルド長の名前だ。
「コロン君はその歳でベテラン冒険者にも引けを取らない槍の腕なんだって?
オークキングの変異種に止めを刺したのも君らしいじゃないか?」
コロンはよく冒険者に混ざって戦闘訓練をしているが、確かに強い部類には入ると思う。
なぜなら大人の冒険者でもコロンの槍に勝てるのは、ギルド長くらいだからだ。
「あれはヨッシーの魔法の力だからな。ワタシの力だけじゃない」
ここで正直にオレが手助けしたことをリークするコロン。
まあライトセイバーのことを話していないだけましかな?
「ほう? そうなのかい? ヨッシーは優秀な魔術師と聞いているし、護衛の時はよろしく頼むよ?」
「あ、はい。勿論です」
「今回の旅には娘のローレッタと息子のバリーも同行することになっているんだ。向こうではしばらく生活することになりそうだからね」
どうやらローレッタさんとバリーが同席していた理由は、旅に同行することになっているからのようだ。
「旅の護衛は他にも・・?」
向こうで生活するとなると、多くの使用人も連れて行くことだろう。
ならば護衛対象は商隊規模になるはずだ。オレとコロンだけではとても守り切れそうにない。
「護衛の人数なら心配いらないよ。うちの使用人には元冒険者も多くいてね。武器も持たせてあるんだ」
「それオレ達いらなくないですか?」
それだけ戦える人間がいるというのなら、本当にオレ達が必要かどうか、心配になってくる。
「別に護衛だけが理由で君達を雇ったわけではないよ? 私はね・・・君達とのつながりを作りたかったのさ」
「つながりですか?」
商人は人と人とのつながりを大事にすると聞いたことがあるが、今回のはそんなニュアンスではないような気がする。
コーラとかオレの魔法とか、色々と勘付いているんだろうな・・・。
「それに君達に借りを作っておくのもいいと思ってね?」
ブラハムさんは、冗談めかしてそう言った。
「借りですか・・・高くつきそうで怖いですね・・・」
ブラハムさんは、その借りを高く見るか、低く見るかでオレを測っているような気がするが、オレはこういったやり取りは苦手なので、そっと目をそらして生返事しておく。
「ふふふっ!」
するとなぜかローレッタさんに笑われた。
「まあそう硬くならなくても、取って食ったりはしないよ。この旅で、君達の実力を見てみたいとは、思うけどね」
「期待に沿えるかどうかわかりませんが、頑張ります」
そしてこの後もしばらく会話は続き、最後に出発の日時を知らされて、ブラハムさんのお屋敷を後にした。
あれから3日後。ついにオレとコロンが、このクアリーの街を発つ時がやってきた。
各所に挨拶はして回っているし、そこまでの交友関係はないので、見送りはギルド長くらいだ。
現在は早朝なので、街の外へ出る冒険者や、行商人などで、街の出入り口の門の前は、長い列でごった返している。
「よう! コロン、ヨッシー! 向こうでの活躍も期待しているぜ!?」
「おっさんも元気でな!」
「お世話になりました」
街の関所の前で、ギルド長との別れの挨拶を済ませる。
「ヨッシー君、コロン君。そろそろ馬車に乗り込んでくれ」
オレとコロンはブラハムさんの指示で、馬車の中へ乗り込んでいく。
「ふわ~・・。よう・・ヨッシー、コロン。夜はよく眠れたか?」
「ごきげんよう。ヨッシー、コロン」
馬車に入ると、そこには眠たそうに欠伸をしているバリーと、ローレッタさんがいた。
馬車は荷馬車のようで、まるで人が乗り込むものには見えない。
現に空いた場所には荷物が積んであった。
床は木製の板になっているようで、二人はその辺にある木箱に、たたんだ布のような物を敷いて座っている。
金持ちなのになんでこんな粗末な馬車に乗っているのかと疑問に思うが、この世界の標準的な馬車についてはよく知らないので、詮索はしないでおく。
オレにはあの木箱は少し位置が高いようなので、床に座ろうと思い床を見回す。
だがオレは馬車の振動なども気になったので、アルミブランケットを敷いてクッション代わりにして、その上に座った。
位置的には丁度、ローレッタさんとバリーが並んで座っている向かいになる。
コロンはそのオレの横に、立ったままで壁にもたれかかって腕を組んでいる。
「あら? その銀の敷物は何かしら?」
目ざといローレッタさんが、アルミブランケットに気づいて質問してくる。
「遺跡で見つけたオレの寝床ですよ」
「あらあらまあまあ! それはアーティファクトなのかしら!?」
とりあえずアルミブランケットについて質問されたら、遺跡で見つけたと答えることにしている。アルミブランケットのような物は、この辺りにはないからね。
「いえ。その辺に投げてあったので、たいした物ではないですよ?」
あまり騒がれるのも嫌なので、このアルミブランケットを作った工場の人達には悪いが、ここは雑魚アイテムで通しておく。
「本当にそうかしら・・・?」
ローレッタさんは、そんなオレをジト目で見る。
そして丁度その時、馬車はゆっくりと走り始めるのだった。
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