表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/180

03:魔法


「ひゃああう!!」



 翌朝オレは、変な声で悲鳴を上げて飛び起きた。

 原因は起きてすぐ横を見ると、首のない鳥の死骸が置いてあったからだ。



「何変な声出しているんだ? お前は?」



 するとすぐそばにいたコロンが、首を傾けながら尋ねて来た。



「だだだってそれ!!」



 オレはその哀れな姿となった鳥を、指さして言った。



「何処のお嬢様だお前は? 鳥の死骸を見たくらいで!」



 そう言うとコロンは、豪快にその鳥の羽をむしり、さばき始めた。



「こいつは今朝ワタシが森で仕留めた鳥なのさ!

 今日は調子が良くてよぉ! 水の矢で一発だったさ!」



 は? 水の矢? いったい何のことだ?



「み、水の矢って?」


「見ろよここ」



 コロンが指さす鳥の死骸を見ると、確かに矢で出来たような傷があった。



「ここにワタシの魔法の水の矢が命中したのさ!! すごいだろ!? 一発だぜ!? 一発!?」



 なるほど・・・何処かに飛び道具でも隠し持っているのかな? と思って彼女の持ち物を見るが、どう見ても腰に吊るしたナイフが一本だけだった。

 いっそそのナイフで鳥を仕留めたと言われた方が、しっくりとくる。



「お前もしかして、水の魔法は見たことはないのか?」



 その不思議そうに首を傾けるオレを見て、コロンは尋ねてくる。



「ミズノマホウ? 何ですかそれは?」



 オレはコロンから発せられた、その言葉が理解できなくて、さらに困惑を深めた。



「これだからガキはもう!

 まあ丁度のども渇いているしいいか? ごにょごにょ・・・」



 そしてコロンが指を立てて、妙な呪文を唱えると、次の瞬間、不思議な現象が起きた。

 何とコロンの指先に、水滴が集まりだして、あっという間に水球が出来上がったのだ。



「あ~む! ごくごくごく・・・」



 そして豪快に水球を飲み干すコロン。

 オレはその様子を見て驚き、しばらく呆然とした様子でそれを見ていた。



「いいいい、今のは何!?」



 そして再起動したオレは、コロンに今の不思議現象について尋ねる。



「だから~・・・魔法だろ?」



 その行為を、さも当たり前のように答えるコロン。


 魔法? 何故目の前のコスプレ少女は、そのような不思議現象が巻き起こせるのか?

 もしかしたら、何処かの部族のシャーマンみたいな存在だろうか?


 オレの知らない超常現象。まさにそれは、魔法と言ってもいい。

 オレは引きこもりだが、魔法とかそういうのには目がない。

 

 ラノベやアニメなどで、主人公が使うのに憧れて、自分でも使おうと思い、書籍や自己流で何とか使おうと試みた。

 だがいっこうに使えた試しなどない。しかしコロンは、それをさも当たり前のように使うのだ。



「師匠!! 是非オレにもその秘術をお教えください!!」



 気づけばオレは、コロンにそう懇願していた。



「何だ? 変な呼び方はよせ! ワタシはコロンだって言ったろ!?」


「たのむよコロンさん!! オレにも魔法を教えてくれ!! もう一度魔法を見せてくれ!!」



 オレはオレよりも、頭一つ分以上も大きなコロンに、すがりついて懇願する。



「んな意味もなく魔法が使えっか! 魔法は魔力を消費するんだ!! 無駄に使えねえんだよ!!」



 なんと! 魔法は魔力を消費して使うのか!? まさにオレの理想の力じゃないか!!



「それにその『コロンさん』はやめろ! 背中がむずがゆくなる!」


「え・・? あ・・じゃあ、コ、コロン・・・」



 オレのその呼び方に、満足そうに頷くコロン。



「それから・・・お前は火の魔法が使えるだろ? あまり欲張んな!」


「火の魔法?」



 オレは火の魔法を使った覚えは微塵もない。いったい目の前のこのコスプレ少女は、何を言い出すのやら?



「その焚火の火! 今は消えているが、他にどうやってその火を付けたと言うんだ?」



 コロンはすでに消えて鎮火している、薪の燃えカスを指さして、オレに尋ねてきた。



 ちゅぽっ!


「こうやってですが?」



 オレはまだ火の付きそうな燃えカスの部分に、ライターで火を付けた。



「ほら! やっぱ魔法じゃんか!」



 はい? これが魔法ですって? このノズルの長いこのライターが、杖にでも見えたのかな?

 これはライターという道具で、火を付けているだけで、けっして非科学的な魔法などではない。

 でもこれをコロンに説明しても、果たして理解されるだろうか? まあ無理だろうね・・・



「お願い!! もう一度だけ水の魔法を見せて!!」



 でもオレはもう一度だけその超常なる現象を、この目でどうしても見たかった。そしてこの目に焼き付けたかったのだ。



「だ~か~ら~! 魔力の無駄遣いはできないの!」



 む! なら無駄使いじゃなければいいのか?



「じゃあコロン・・・君の願いを何か一つ叶えようじゃないか!

 それで魔法を見せてくれ!」



 願いが叶うなら、魔法を見せても無駄はないだろう。

 コロンはしばらくオレの顔を、細い目で見ながら腕を組み思案する。



「わかった! じゃあお腹いっぱい飯を食わせろ!」



 やはりコロンの願いはそれだったか。



「できないだろ!? だあ~はははは!!」



 そしてそんなオレを見ながら、高笑いするコロン。



「わかりました。少し時間をください」


「あ~ん!?」



 オレにはあのスマホがあるのだ。

 あの不思議なスマホで、日本のキャンプご飯を作って満足させてあげますとも!




 残りポイント:56565



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。

 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

 感想、レビューもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ