03:魔法
「ひゃああう!!」
翌朝オレは、変な声で悲鳴を上げて飛び起きた。
原因は起きてすぐ横を見ると、首のない鳥の死骸が置いてあったからだ。
「何変な声出しているんだ? お前は?」
するとすぐそばにいたコロンが、首を傾けながら尋ねて来た。
「だだだってそれ!!」
オレはその哀れな姿となった鳥を、指さして言った。
「何処のお嬢様だお前は? 鳥の死骸を見たくらいで!」
そう言うとコロンは、豪快にその鳥の羽をむしり、さばき始めた。
「こいつは今朝ワタシが森で仕留めた鳥なのさ!
今日は調子が良くてよぉ! 水の矢で一発だったさ!」
は? 水の矢? いったい何のことだ?
「み、水の矢って?」
「見ろよここ」
コロンが指さす鳥の死骸を見ると、確かに矢で出来たような傷があった。
「ここにワタシの魔法の水の矢が命中したのさ!! すごいだろ!? 一発だぜ!? 一発!?」
なるほど・・・何処かに飛び道具でも隠し持っているのかな? と思って彼女の持ち物を見るが、どう見ても腰に吊るしたナイフが一本だけだった。
いっそそのナイフで鳥を仕留めたと言われた方が、しっくりとくる。
「お前もしかして、水の魔法は見たことはないのか?」
その不思議そうに首を傾けるオレを見て、コロンは尋ねてくる。
「ミズノマホウ? 何ですかそれは?」
オレはコロンから発せられた、その言葉が理解できなくて、さらに困惑を深めた。
「これだからガキはもう!
まあ丁度のども渇いているしいいか? ごにょごにょ・・・」
そしてコロンが指を立てて、妙な呪文を唱えると、次の瞬間、不思議な現象が起きた。
何とコロンの指先に、水滴が集まりだして、あっという間に水球が出来上がったのだ。
「あ~む! ごくごくごく・・・」
そして豪快に水球を飲み干すコロン。
オレはその様子を見て驚き、しばらく呆然とした様子でそれを見ていた。
「いいいい、今のは何!?」
そして再起動したオレは、コロンに今の不思議現象について尋ねる。
「だから~・・・魔法だろ?」
その行為を、さも当たり前のように答えるコロン。
魔法? 何故目の前のコスプレ少女は、そのような不思議現象が巻き起こせるのか?
もしかしたら、何処かの部族のシャーマンみたいな存在だろうか?
オレの知らない超常現象。まさにそれは、魔法と言ってもいい。
オレは引きこもりだが、魔法とかそういうのには目がない。
ラノベやアニメなどで、主人公が使うのに憧れて、自分でも使おうと思い、書籍や自己流で何とか使おうと試みた。
だがいっこうに使えた試しなどない。しかしコロンは、それをさも当たり前のように使うのだ。
「師匠!! 是非オレにもその秘術をお教えください!!」
気づけばオレは、コロンにそう懇願していた。
「何だ? 変な呼び方はよせ! ワタシはコロンだって言ったろ!?」
「たのむよコロンさん!! オレにも魔法を教えてくれ!! もう一度魔法を見せてくれ!!」
オレはオレよりも、頭一つ分以上も大きなコロンに、すがりついて懇願する。
「んな意味もなく魔法が使えっか! 魔法は魔力を消費するんだ!! 無駄に使えねえんだよ!!」
なんと! 魔法は魔力を消費して使うのか!? まさにオレの理想の力じゃないか!!
「それにその『コロンさん』はやめろ! 背中がむずがゆくなる!」
「え・・? あ・・じゃあ、コ、コロン・・・」
オレのその呼び方に、満足そうに頷くコロン。
「それから・・・お前は火の魔法が使えるだろ? あまり欲張んな!」
「火の魔法?」
オレは火の魔法を使った覚えは微塵もない。いったい目の前のこのコスプレ少女は、何を言い出すのやら?
「その焚火の火! 今は消えているが、他にどうやってその火を付けたと言うんだ?」
コロンはすでに消えて鎮火している、薪の燃えカスを指さして、オレに尋ねてきた。
ちゅぽっ!
「こうやってですが?」
オレはまだ火の付きそうな燃えカスの部分に、ライターで火を付けた。
「ほら! やっぱ魔法じゃんか!」
はい? これが魔法ですって? このノズルの長いこのライターが、杖にでも見えたのかな?
これはライターという道具で、火を付けているだけで、けっして非科学的な魔法などではない。
でもこれをコロンに説明しても、果たして理解されるだろうか? まあ無理だろうね・・・
「お願い!! もう一度だけ水の魔法を見せて!!」
でもオレはもう一度だけその超常なる現象を、この目でどうしても見たかった。そしてこの目に焼き付けたかったのだ。
「だ~か~ら~! 魔力の無駄遣いはできないの!」
む! なら無駄使いじゃなければいいのか?
「じゃあコロン・・・君の願いを何か一つ叶えようじゃないか!
それで魔法を見せてくれ!」
願いが叶うなら、魔法を見せても無駄はないだろう。
コロンはしばらくオレの顔を、細い目で見ながら腕を組み思案する。
「わかった! じゃあお腹いっぱい飯を食わせろ!」
やはりコロンの願いはそれだったか。
「できないだろ!? だあ~はははは!!」
そしてそんなオレを見ながら、高笑いするコロン。
「わかりました。少し時間をください」
「あ~ん!?」
オレにはあのスマホがあるのだ。
あの不思議なスマホで、日本のキャンプご飯を作って満足させてあげますとも!
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