表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/180

14:オークの変異種


 パカ パカ・・・グルルル


「助かったぞ! これはヨッシーの魔法か!?」



 歩く馬のヒズメの音がして、騎士団長のバルテルミ卿がやって来た。

バルテルミ卿はドーム内を見回しているようなので、どうやらドームについて聞いているようだ。



「えっと・・・」



 貴族にあまり力のことを知られたくないので、オレは少し返事に躊躇する。



「バルテルミ卿。このドームのおかげで冒険者にも騎士にも、大きな被害は出ていません」


「ああ。だが数人は竜巻に飲まれたようだぞ? 後程救護が必要だな・・・」



 ギルド長がオレの魔法の話題から、生存者の話題に切り替えてくれたようだ。



 パカラッ! パカラッ!


「バルテルミ団長! オークの変異種です!!」



 そして次に、けたたましくヒズメの音を響かせながらやって来た騎士が、オークの変異種の存在を知らせる。



「何!? 変異種の特徴は!?」


「かなり素早く動くオークです! すでに騎士や冒険者に何人も被害が出ています!」



 オークの変異種? あの竜巻の中、どこかに潜んでいたとでもいうのだろうか?



「おっさん! 行くぞ!!」


「あ! 待てコロン!」



 ギルド長の制止する声を無視して、コロンはその変異種のオークの場所へ、駆けて行ってしまった。



「ははは! 元気のいい娘だな! 我らも続くぞ!」



 それを聞いた騎士達が、バルテルミ卿と共にドームから一斉に出て行く。



「全く気の早い奴らだ! ヨッシーも俺の後についてこい! その変異種とやらを確認しに行くぞ! 他の冒険者は待機だ!」


「あ、はい!」



 オレは浮遊するスケボーに乗って、走ってドームから出て行くギルド長に、悠々とついていく。






「見ろあそこだ!」



 しばらく走ると、ギルド長が何かを指さして叫ぶ。


 その場所を見てみると、何か竜巻に巻き上げられるように、冒険者や騎士、それから何かの破片が周囲に飛び散るのが見えた。


 そこで暴れていたのは、体が小さくやせ形で、頭が妙に丸く、お腹が出ている、王冠のような角の生えた、オークだった。


 一見してみるとゴブリンにも見えなくないが、その顔立ちは確かにオークのそれだ。



「ヨッシー! 念のために鉄のゴーレムに入っておけ!」


「あ~、はいはい・・・」



 ギルド長に指示されたオレは、慌てて鉄のゴーレムを起動する。

 鉄のゴーレムを起動すると、オレの両腕に巨大な2メートルの腕が出現する。

 次にオレが浮遊すると、太い両足、樽のような胴体、最後に頭に巨大な鉄の陣笠が出現するのだ。


 戦闘の様子を見ると、丁度コロンが変異種のオークと対峙し、槍で突くところのようだ。そしてギルド長もその攻撃に参加していく。

 バルテルミ卿も隙をついて馬上から攻撃しているようだ。そしてその周りを屈強な冒険者や騎士が囲んでいる。



「もしかして・・・効いてない?」



 攻撃は何発かは当たっているように見えるが、そのどれもが効いているようには見えなかった。



 ガキーン! パキュー!



 まるで金属でも打つような音が響き、変異種のオークは、鼻を鳴らしてあざ笑っているようにも見える。



「駄目だ! 金属みたいに硬いぞ! それに素早い!」



 そのあまりの硬さに、ギルド長が焦ったような声を上げる。



「この! 我らが突撃を受けよ!」



 ちょうどその時、騎士二人が馬上で槍を構え、変異種のオークに突撃していく。


 ギルド長とコロン、周辺の冒険者や騎士は、その攻撃に巻き込まれまいといったん引く。



 ズシャ! ドバ!


「「ぎゃああ!」」



 飛び上がった変異種のオークは、瞬く間にその二人の騎士を斬り伏せる。


 

「このままでは被害が増えるだけだ! 未熟なものは不用意に近づくな!」



 その様子にバルテルミ卿が、声を上げて注意を呼び掛ける。



「いかん! ヨッシー!」



 ギルド長が叫ぶ。え? オレ?


 気づくと変異種のオークはオレの目の前に来ていた。



「この~!!」



 オレは変異種のオークを捕まえようと、腕を振り回すが、一向にその手が触れることはない。



 ガキーン! バキーン!


「おっと!」



 そして強烈な牙のような棍棒の二発を受けて、少しよろける。

 鉄のゴーレムに傷は付かなかったようだが、この鉄のデカ物が少しでもよろけるところを見ると、変異種のオークはかなりの怪力なのだろう。


 変異種のオークはオレを睨みつけると、そのまま再びコロンとギルド長がいる辺りに飛んでいく。


 そして見るとコロンもギルド長も、バルテルミ卿も息を切らせて戦っている。

 体力的には変異種のオークが圧倒的に上なのだろう。


 このままではじり貧だ、何か打開策がなければ、いつか疲れて全員倒されてしまうだろう。



 ピコリン!



 ん? こんな時にスマホからのメール音が響く。

 このスマホにメールが来ることなど、今までなかったのに、今更何のメールだろうか?


 オレはつい条件反射的に、片手でスマホを取り、ゴーレムボディーの中に隠して覗き見る。すると以下のようなメールが届いていた。



『期間限定貸付アイテム ライトセイバー 今だけ2500円 どんな敵も貫いて、危機を脱出だ!』



 メールをポチると、通販の玩具販売のページに飛び、ライトセイバーの絵と、魔法陣が描き込まれ、購入後に魔方陣をポチれば、ポチった人はライトセイバーの所有者に、一時的にだが、なれるむねが書かれていた。

 随分と都合の良いタイミングだが、これがただのスマホではないことを、オレは思い返す。



「これが本当にあのライトセイバーなら、あの変異種のオークも倒せるかもしれない・・・」



 そしてオレは考える。オレがたとえこのライトセイバーを手にしたところで、あの素早い変異種のオークに当てられるかということを・・・。



「コロン! 作戦がある! 一度こちらに来てくれ!」


「はあはあ・・・何だヨッシー?」



 オレが呼びかけるとコロンは、息を切らせたままでこちらを見る。



「行け! コロン!」



 オレに背を向けて変異種のオークに対峙するギルド長が、コロンにそう指示を飛ばす。

 バルテルミ卿やその周囲の騎士は頭に疑問符を浮かべているようだが。



「おい! ガキ! なぜその魔族を下がらせる!?」



 そう叫んだのは、例の感じの悪い騎士だった。

 さっきから見ているとたいして戦いに参加してもいないくせに、偉そうによく言うものだ。


 コロンは一度その騎士を睨むと、その言葉を無視してオレの場所まで飛んできた。



「はあはあ・・・何だヨッシー!? あまり長くは話せないぞ!?」



 コロンは鉄のゴーレムの肩に腰かけながら、オレに話しかけて来る。



「ここをポチれ」


「はあ? おま! これ・・・」



 オレがスマホをコロンに突き出すと、コロンはそのスマホの画面のライトセイバーの絵から、何かを悟ったようだ。



 残りポイント:30675



「うお! 今魔力が吸われたぞ!?」



 コロンがそのスマホ画面の魔方陣をポチると、何かスマホから魔力が吸われる感じがしたようだ。



「!!」



 だが次の瞬間その右手には、しっかりとライトセイバーの柄が、握られていた。


 

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。

 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

 感想、レビューもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ