13:オークの集落
「オーク達はこちらの動きに気づき、すでに戦闘態勢を整えているぞ! 皆心してかかれ!」
現在オレ達冒険者は、オークの集落を見下ろせる絶好のポイントに来ている。
そしてギルド長が叫ぶ通り、オークはこちらの動向に気づき、集落の前に出て、オレ達冒険者を待ち受けていたのだ。
「まずは弓と魔法にて遠距離からオークを一斉攻撃だ!」
まずはスカウトなどの弓使いと魔術師が、遠距離からオークの群れを狙う。
場所的に飛び道具の勝負であれば、高い位置にいるオレ達が有利だろう。
だがオーク達は厚い木の大楯を前に構え、飛び道具に動じることなく前進する構えだ。
気になるのはオークメイジの動向だ。初戦の遠距離戦に出てこないとは、いったいどういう腹積もりだろうか?
弓部隊と魔法部隊は、もちろん二手に分かれてオークの群れを分断して誘い出せるように、攻撃している。その後ろにはすでに、その後の接近戦に備えて戦士系の冒険者が待機済みだ。
「ブギ!」「ブゴ~!」
魔法は時たま木の大楯を構えて前進中のオークを焼いたり、貫いたりしているようだが、弓矢にかんしては、木の大楯に阻まれて、効果が薄いようだ。
ここで冒険者にUの字に分断して迫るオークの群れを、隠れている騎士団が、奇襲して、あわよくば中央にいる指令塔をたたくのだ。
ただ今回の作戦はこれでは終わらない。それはオレがいるからだ。
「ヨッシー! 大岩を用意!」
「了解!」
オレはギルド長の指示どおりに大岩をスマホからして、何時でも操作できるように待機させる。
「大岩を突撃させろ!」
その合図とともにオレは大岩を、木の大楯を構えながら徐々にこちらに迫るオークの群れに向けて、勢いよく転がした。
オレは現在右翼にいるので、主に二手に分かれたうちの、右側のオークの群れが大打撃を受けるはずなのだ。
ゴロゴロゴロ・・・!!
そして予想どおり、右翼から迫る多くのオークがその大岩に巻き込まれて、大楯ごと潰され、跳ね飛ばされていった。
「ギルド長! 彼奴ら逃げていきますよ!」
「ああ! ヨッシーの大岩はオークの群れに大打撃を与えたぞ!」
大岩を恐れたオークの多くが、さらに逃走を開始し、森の中へと姿を消し始めたのだ。
「ブゴォォォォ!」
これに危機感を覚えた右翼にいたオークジェネラルが、統率を整えると思われる咆哮を上げるが、恐怖が勝ったのか、さらに逃走するオークは続出していった。
「こちら側にはもうほとんどオークがいないですよ?」
「右翼の冒険者で手の空いたものは、左翼の方に加勢しろ!」
思いの他大岩の効果は高く、すでに右翼のオークの群れは瓦解寸前だ。そこで右翼の冒険者のほとんどが、左翼の冒険者の助太刀に向かう。
「騎士団も突撃だ!!」
当初と作戦は少し違うが、ここで出遅れてはと、騎士団も参戦する。
騎士団は左翼から、オークの群れに攻撃を開始したようだ。
その勢いはすさまじく、あっという間に左翼オークの群れも、瓦解寸前に追いやられた。
ゴゴゴ・・・
「ん? 急に暗く・・・」
その時だった。急に雲が出て来たかと思うと、辺りが暗くなったのだ。
パラパラ・・・!
「これは雹か・・? まてよこの現象の兆候は・・・」
そして雹が降って来たのだ。
オレはこの現象について覚えがあった。
前世で見たテレビで、急に暗くなったり雹が降って来たりした時には、ある災害を警戒するように呼びかけていたことを思いだしたのだ。
「竜巻!! 竜巻がきます!!」
「何だとヨッシー!? どういうことだ!?」
オレのその急な叫びに、困惑するギルド長。
「おっさん! 多分大魔術を使おうとしている連中がいる! 集落の真ん中辺りに強い魔力が集中している!」
それを伝えに来たのはコロンだった。
おそらくこれは先ほどから姿が見えない、オークメイジの集団による、大魔術の兆候なのだろう。それがきっと竜巻なのだろう。
ドドーン!!
オレは電池残量を30%消費して、巨大な石製のドームを造り上げた。
「この場所から退避できる人は退避して! 間に合わない人はこのドームの中へ!」
オレが竜巻の存在を予測して、冒険者や騎士に呼びかけるが、皆呆然と立ち尽くすばかりで動こうともしない。
ドカーン!! ビュゥウウウウ!!!
そして恐れていたことが現実となる。
なんと急に風が強くなり、巨大な竜巻が3つも発生したのだ。
3つの竜巻はオークの集落を破壊し、冒険者や騎士を、集落ごと飲み込む勢いだ。
「早くこの中に避難しろ!」
ギルド長が呼びかけると、多くの冒険者や騎士が、オレの造った巨大な石製のドームに殺到した。
ドームの入口は無数にあるので、混雑こそしないが、この人数が全員収納可能か心配になってくる。
ガリガリガリ!
「ひぃぃ!!」
「うおっ!? なんだこの音は!?」
竜巻が石製のドームに襲い掛かり、石製のドームが激しく削れる音が響く。その音がさらに冒険者や騎士達の恐怖を駆り立てる。
「おっさん! あそこ! 集落の真ん中辺りの建物が、不自然に竜巻を避けてる!」
コロンがドームの入口から、外を覗き込みながら指さす。
コロンが言うとおり、竜巻はオークや集落の藁の建物など、無差別に巻き上げてはいるが、なぜか集落の中央の藁の建物だけが、不自然にその影響を受けていなかったのだ。
「ヨッシー! あの集落の中央の建物に大岩をぶつけろ! それでこの大魔法は収まるはずだ!」
「わかりました! やってみます!」
ドドドーン! ゴロゴロゴロ・・・!!
オレはドームの入口に近づくと、ドームの外に大岩を出して、ギルド長の指示する中央の藁の建物へと、大岩を突撃させる。
バコーン!
大岩が藁の建物に命中すると、数人の小柄なオークが、建物ごと跳ね飛ばされて出てきた。
小柄なオークは全員大岩に跳ね飛ばされ、倒れて動かなくなっている。
すると急に雲が霧散して空が晴れ始める。
どうやら敵のオークの魔法が解除されたようだ。
おそらくあの小柄なオーク達が、オークメイジなのだろう。
オークメイジが倒されたために、大魔法が解除されたのだ。
「よし! でかしたぞヨッシー!」
バシン!
「いて!」
ギルド長は感極まってオレの背中を叩く。痛いから止めて欲しいね。
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